IMSA:ランボルギーニチームで助け合う。GRT、ライバルからスペアシャシー支援を受けデイトナへ

 IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権の開幕戦として行われるデイトナ24時間レースで、2018年から2年続けてGTD(GTデイトナ)クラスのウイナーとなっているGRTグラッサー・レーシング・チームは、1月23日に開幕する2020年シーズン開幕戦に向けて、同クラスを戦うポール・ミラー・レーシングからランボルギーニ・ウラカンGT3 Evoのスペアシャシーの支援を受けた。

 GRTはオーストリアに本拠を置くランボルギーニの強豪カスタマーチーム。これまではヨーロッパで開催されているGTワールドチャレンジ・ヨーロッパ(旧ブランパンGTシリーズ)などを中心に活動してきたが、2020年シーズンはデイトナ24時間をシリーズの1戦に組み込むIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権へのフル参戦をアナウンスしている。

 そんなGRTが走らせる11号車ランボルギーニ・ウラカンGT3(リチャード・ハイスタンド/シュタイン・ショーホースト/アルバート・コスタ/フランク・ペレラ組)は今月初旬にデイトナで行われたオフシャルテスト“ロア・ビフォア・ロレックス24”の最終日に、ショーホーストがインフィールド区間でクラッシュを喫した。
 
 このアクシデントで11号車ランボルギーニはリヤのフレームを損傷。シャシー交換を余儀なくされたため、チームはイタリアのランボルギーニファクトリーから新しいシャシーを調達することとなった。
 
 自分たちの11号車に加えてGEARレーシング・パワード・バイ・GRTグラッサーが駆動させる19号車、GRTマグナスの44号車と、実質的に3台体制を敷く同チームのボス、ゴッドフリート・グラッサーはSportscar365に「クラッシュから再度クルマを作り上げるのため、この2週間はかなり忙しかった」と語った。

■クラッシュが「テスト期間中でよかった」

 その際、ポール・ミラー・レーシングが予備のシャシーを提供してくれたことが「本当にうれしかった」と彼は続ける。
 
「ポール・ミラーがヨーロッパから新しいタブが届く前に予備シャシーをくれたんだ。ランボルギーニ・ファミリーの人たちが我々を助けてくれた光景は本当に素晴らしいものだった」

「もし彼らの助けがなければ、レースまでに再びクルマを組むことは不可能だっただろう」

「ポール・ミラーはとても親切だったよ。我々はロアの後、(彼らの拠点である)アトランタまでトレーラーで直接シャシーを取りに行き、フロリダに戻ってきてすぐに作業を始めたんだ」

 グラッサー氏によるとロア以来、彼のチームは11号車ランボルギーニのシャシー交換に取り組んでおりその間「1日も」休みがなかったと語った。また、テストで損傷したクルマは新車だったが、チームは今後それをどうするかをまだ決めていないという。

「様子をみてみよう。ひとまずヨーロッパに持ち帰らなければならない」とグラッサーは述べた。

「新しいクルマはまだワークショップにいる。スペアパーツを含みその1台はポール・ミラー・レーシングに返す予定だ。だが、クラッシュしたマシンについて、我々はまだどうするのかを決めていない」

「(考えのひとつとしては)ここで、走れるように修復することがいいと思う。私たちはこの週末に3台のランボルギーニを走らせる。そこに予備車があっても悪くはないからね」

「セブリングやワトキンスグレンのようなレースで、すぐに新しいクルマが必要になるかもれない。そうしたとき今後すべてのトラックで良い解決策のひとつになるだろう」

「(大変ではあったが)これがレースウイーク中でなく、ロアのなかで起きたことでよかった。23日の練習走行でこの種のことが起きたとしたらレースを始められなかったよ」

GRTにスペアシャシーを提供したポール・ミラー・レーシングの48号車ランボルギーニ・ウラカンGT3 Evo

■「GRTは素晴らしいチーム。だからこそ手を差し伸べた」

 ポール・ミラー・レーシングのチームマネージャーを務めるミシェル・シモンズはSportscar365の取材に対し、ロアの期間中に予備シャシーをGRTに提供するという迅速な決断を下したと語った。

「彼らのクルマがひどい状態であることは分かった。それは誰も尋ねる必要なないくらいだった」とシモンズ。

「グラッサーはこの世界において素晴らしいチームだ思っている。だからこそ私たちは彼らを助けたんだ」

「このレースは困難な状況下で参加する必要はない。彼らはその時点で新しいシャシーでクルマを作り直さなければならなかったので、その時点で不利な立場にいた」

「我々は皆、同じブランドを共有しており、心配すべきことは同じだ。だからこそお互いに気を使い合わなければならないと考えているんだ」

 シモンズは予備シャシーをグラッサーに貸与した後も、ポール・ミラー・レーシングの48号車のクルーはスペアパーツに制限を受けないと説明した。

 彼は「今回の件は週末のレースに影響を与えることはない」と述べた。

「我々のチームにはまだ必要な場合に出せる予備のクルマがあり、新車もオーダーしてあるんだ」

「新しいクルマはセブリングでレースを戦う予定だ。まだそのクルマはここにはないが、いずれまったく新しいクルマが来ることが分かっていたから簡単に予備シャーシを手放すことができたんだ」

女性ドライバーをラインアップに揃えたGEARレーシング・パワード・バイ・グラッサーの19号車ランボルギーニ・ウラカンGT3 Evo
912号車ポルシェ911 RSRと、GRTマグナスの44号車ランボルギーニ・ウラカンGT3 Evo

© 株式会社三栄