木星より大きな太陽系外惑星が、わずか数千年で形成される可能性

4000個以上が発見されている太陽系外惑星のなかには木星よりも重い巨大な系外惑星も存在しており、その一部は太陽よりもずっと小さな赤色矮星を周回しています。どうすれば小さな恒星の周囲に巨大な系外惑星が形成されるのか、その理由をシミュレートした研究成果が発表されました。

■大量のガスや塵から数千年のタイムスケールで巨大な惑星が誕生し得る

恒星の至近距離を公転するため表面温度が高温に熱せられている「ホット・ジュピター」をはじめ、近年は太陽系の惑星には見られない特徴を備えた系外惑星も数多く見つかっています。そのなかには昨年9月に発見が報じられた「GJ 3512 b」のように、主星に対する重さの比率が大きな系外惑星も含まれています。

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今回、Anthony Mercer氏(セントラル・ランカシャー大学、イギリス)らの研究チームは、赤色矮星のような小さな恒星の周囲に巨大な惑星が形成される謎を解くべく、スーパーコンピューター「DiRAC」を用いたシミュレーションを行いました。その結果、木星の数倍以上に達するような巨大な惑星が、わずか数千年という天文学的には短い期間で形成される可能性が示されました。

太陽に対して10%~50%程度の重さしかない赤色矮星の周囲でこれほど短期間のうちに巨大な惑星が形成され得るという今回の結論について、研究を率いたMercer氏は「非常に刺激的だ」とコメントしています。

■巨大な惑星が急速に形成されるのは質量比の高い原始惑星系円盤

現在の惑星形成理論では、誕生したばかりの恒星を取り囲むガスと塵の集まりである「原始惑星系円盤」において、塵の集積やガスの捕獲が進むことで惑星が形成されると考えられています。

研究チームがまとめた論文では、誕生した恒星の質量に対して円盤の質量が30%~60%程度の条件において不安定な円盤の一部が断片化し、恒星から50天文単位ほどの位置で巨大な惑星へと急速に成長する様子がシミュレーションで確認されたとしています。なお、太陽系における原始惑星系円盤(原始太陽系円盤とも)の質量は太陽の1%程度と見積もられており、恒星に対して巨大な惑星が誕生するには、相応の質量比率を持った原始惑星系円盤が必要であることがわかります。

また、今回の研究では、急速に成長した巨大惑星の中心部分が最大で摂氏1万度ほどの高温に達すると予想しており、誕生直後で温度が下がる前の段階であれば比較的簡単に観測できる可能性も示されています。研究チームは、将来の観測において若い赤色矮星の原始惑星系円盤が観測されることで、今回のシミュレーション結果が検証されることに期待を寄せています。

Image Credit: UCLan
Source: セントラル・ランカシャー大学
文/松村武宏

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