武田久美子デビュー、セクシー路線だけじゃなくアイドル時代に要注目! 1983年 1月25日 武田久美子のデビューシングル「噂になってもいい」がリリースされた日

たのきん映画「ハイティーン・ブギ」でヒロインに大抜擢!

1982年の夏、トップアイドルとして突っ走っていた近藤真彦主演の映画『ハイティーン・ブギ』が封切られた。“たのきんスーパーヒットシリーズ” の第4弾で、マッチの主演作としては3作目にあたる。

この年は後に “花の82年組” と呼ばれるほどに秀でた新人アイドルが相次いでデビューしており、松本伊代や小泉今日子、早見優にも石川秀美にも心惹かれていたわけだが、『ハイティーン・ブギ』のヒロインを務めた、まだ歌手デビュー前の可憐な少女にハートを撃ち抜かれてしまった。それが武田久美子だったのである。

当時のたのきんトリオの人気は大変なものだった。『ザ・ベストテン』では田原俊彦と松田聖子の接近をトシちゃんのファンが許さず、セットのソファでも隣に座らせなかったほど。その辺りを配慮してなのか、それまでのたのきん映画3本では明確なヒロインはいなかったのだが、牧野和子の漫画を原作とした『ハイティーン・ブギ』では必然的に近藤真彦演じる主人公・翔の相手役、桃子の存在が重要となった。

マッチファンから反感必至、芯の強さで乗り越える!

そこに新人の武田久美子が抜擢されたことで、これはもうマッチファンの反感を買うのは必至と思われたから、ここは我々男性ファンが守らなければという騎士道精神が擽られたのも事実なのだ。

劇中では近藤とのキスシーンもあり、実際に一部の熱狂的なファンから嫌がらせを受けることもあったらしい。しかしそこは後に判る芯の強さで乗り越える。

なにしろ小学生の頃からCM出演などモデル活動を始め、堀越学園中等部時代の81年には『第2回東大生が選ぶアイドル・コンテスト'81』に自ら応募して優勝を遂げていた。コンテスト直後には石井聰亙が監督した短編映画『シャッフル』にヒロインとして映画初出演を果たしてもいる。念願のタレント活動への想いは半端ではなかった。

ラブコメドラマ「さよなら三角」主題歌はデビューシングル「噂になってもいい」

『ハイティーン・ブギ』で注目を集めた武田に訪れた次の大きな仕事がテレビドラマの主演作『さよなら三角』である。少年サンデーに連載されていた原秀則の漫画が原作。フジテレビ月曜19時からの放映枠は原田知世主演の『セーラー服と機関銃』『ねらわれた学園』に続く番組で、さらに遡ると金曜19時枠で放映されていた『翔んだカップル』『翔んだライバル』『翔んだパープリン』の三連作の流れを汲むラブコメドラマであったとおぼしい。

宮田恭男演じる上條拓と武田演じる星野明日香の初々しい恋模様が描かれ、後に “月9” を中心としたトレンディドラマを主に活躍を見せる河毛俊作氏の演出が冴えていた。残念なからソフト化もされておらず今ではあまり語られることはないが、いいドラマだった。

そしてそのドラマの主題歌で武田久美子はいよいよ歌手デビューも果たす。来生えつこ作詞、加藤和彦作曲、清水信之編曲による「噂になってもいい」は、ドラマがスタートして2週間後の83年2月25日にワーナー・パイオニア(現・ワーナーミュージックジャパン)からリリースされた。

セクシー路線だけじゃなく、アイドル時代の楽曲にも注目!

ドラマも毎回録画してすっかりファンになっていた自分は、秋葉原の石丸電気で催されたデビュー記念イベントへも足を運んだことを憶えている。ドラマでは印象的なツインテールが可愛かったが、その時はたしかレコードジャケットの写真と同じポニーテールではなかっただろうか。記憶違いだったらごめんなさい。とにかく華奢で可愛らしくて、披露された歌声は聴いているこちらが心配になるほどか細く、男子たちの応援の声にかき消されてしまうかと思ったほど。何しろまだ14歳だったのだから。

シングルのカップリングは、かつて久世ドラマ『ムー』で岸本加世子が歌った「北風よ」のカヴァーで、これがまた良かった。荒木一郎が書き下ろした傑作のひとつ。3月に出されたファーストアルバム『クミコミニケーション』にも井上陽水や来生たかおによる佳曲がいっぱいだった。

その後セクシーな大人の女性に変貌を遂げた武田久美子だが、可憐な少女の頃に残したアイドル時代の楽曲たちは、ドラマ『さよなら三角』と共にもっと評価されてもいい。

カタリベ: 鈴木啓之

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