便利な食品宅配サービス体験ルポ(下)=配達員に変装した強盗に注意

自転車で町を回る配達員

 スマホのアプリを利用した、温かい料理が手頃な価格で自宅に届く食品宅配サービス。ここでは前回に引き続き、記者が実際に商品を注文した際の出来事と、ほか注意点などを紹介する。

 週末の夜にファストフード店の商品を注文した時には、配達員が店で商品を受け取る前に、アプリ内の地図上で動かなくなり、しばらく待たされた挙句、配達員に配送をキャンセルされてしまった。注文してから1時間近くたってのことだった。

 配送中の配達員とは通話かメッセージで連絡がとれるが、それは配達員が店で商品を受け取った後だけだ。

 多くの場合は問題なくサービスを利用できるが、先述のようなトラブルも時折発生する。アプリからトラブルに関する問合わせはできるが、すぐに代わりの商品が届くわけではない。当然のことながら、利用時には電話やメールでのやりとりにポルトガル語が必要となり、新来日本人には解決が難しいかもしれない。

 このように基本的には便利な食品宅配サービスだが、トラブルの対処が必要になることもある。

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フライドポテトは配達までに、できたての食感が失われることが多い

 別の意味の注意点としては、フォーリャ紙の昨年3月31日付け記事で、同年4月2日付けの本紙2面で翻訳記事を掲載したように、食品宅配サービスの配達員を装った強盗も出没している。

 記事によれば、強盗はUber Eatsなど食品宅配サービスの配達員の制服やリュックサックを身に着けており、本当の配達員かどうかは分かっていないとのこと。

 コジロー出版のブラジル情報誌『月刊ピンドラーマ』昨年9月号でも、美代賢志(みよ・けんじ)さんによる「ブラジル社会レポート」で、配達員を装った強盗について警戒を呼び掛けている。サービスの利用者がインターホンのアラームを聞き「商品が到着した」と思いドアを開けると、強盗が家に押し入り、その場にいる人らの金品を奪っていくのだという。

 制服などは模造品が販売されており、強盗は配達員の到着に不自然でないタイミングで来るという。注文先の店や配達員が、届け先の情報を強盗に伝えているか、配送の情報が外部に漏れている可能性が、同氏の投稿文中でも指摘されている。

 食品宅配サービス会社は、「会社と配達員は雇用関係にない」から強盗事件には無関係だと主張するなど、会社側から解決策が提示される望みも薄い。

 またエスタード紙昨年9月15日付け記事で、同月17日付け本紙2面翻訳記事では、配達員の賃金の低さも問題として挙がっている。

 サンパウロ市内には配達員が約3万人もいるとされている。1度の配送の報酬はわずか5レアル程度で、1日に約12時間、平均10回の配送を行っても、平均月給は1千レに満たない。加えて配送に自家用車を利用している場合、修繕費は自己負担となる。効率的に配送を行うために、注文の多い時間は町なかの道端で待機する必要があるなど苦労も多い。

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 利用者と配達員の間でのトラブルや、配達員の労働環境など、制度整備が間に合っていない面もある食品宅配サービス。しかし、利用者にとって利便性が高いことに変わりはない。車を使わず、出歩きたくないが、おいしいものは食べたい人には、間違いなく便利なサービスだ。

 ブラジル流に「気をつけて上手に利用する」のが現実的な付き合い方かもしれない。(終わり、岡本大和記者)

 

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 食品宅配サービスを悪用した強盗事件について、記者が行っている対策がある。配送時にはスマホに配達員の顔写真と名前が表示されるので、自宅の門を開ける前に配達員の名前と顔を確認するというもの。『月刊ピンドラーマ』の美代賢志さんの記事では、「家の中まで商品を運んでくれようとしても、入れない」という警戒心を持つように呼びかけている。食事の支度は楽したいが、当然のこと、強盗被害にも遭いたくない。ブラジルの日常生活において、外との接触に関しては全てに注意が必要なようだ。

 

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