社説 [県ワクチン接種表明] 国と連携して速やかに

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 玉城デニー知事は県内で相次ぎ発生した豚コレラ(CSF)の感染拡大を防ぐため、本島内の豚全頭を対象としたワクチン接種方針を決めた。畜産関係団体や有識者などでつくる「県CSF防疫対策関係者会議」が全会一致で接種実施方針を確認したことを受けた。24日に江藤拓農林水産相と面談し接種を要請する。

 江藤氏は農水省内の会合で「接種に向けた手続きは迅速に進めていく」と指示。国は近く県をワクチン接種推奨地域に指定する見通しで歓迎したい。

 今後は県が接種地域の範囲などを盛り込んだ「ワクチン接種プログラム」を国に申請後、知事の告示により接種が始まる。ワクチンの効果は接種後2週間程度かかるため迅速な手続きが必要だ。国と県が連携して進めてほしい。

 接種には1頭当たり160円の農家負担が発生するが、県内には小規模農家が多く重荷となることも考えられる。持続的な全頭接種には農家の支援も欠かせない。

 プログラム策定には、飼養衛生管理基準の順守も盛り込まれる。基準は食品残さを飼料として与える場合は加熱処理をほどこさなければならないとするが、国の「拡大CSF疫学調査チーム」の報告で今回の感染は、本土からウイルスを含む豚肉や豚肉製品が食品残さの中に入り、十分加熱しないまま豚に与えたことが原因となった可能性がある。

 基準の不徹底が発生につながった可能性があり、県は養豚農家に対し今後、指導体制を強化することを明らかにした。これまでの「指導」から、改善しない場合は「勧告」「命令」を発し、場合によっては30万円以下の罰金を科す方針を決めた。

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 一方、県の会議では食品残さを使う県内養豚場の多くが加熱処理していないことも報告されている。農家が、加熱処理しない、あるいはできない理由は何か。県内農家の高齢化や運営基盤の脆弱(ぜいじゃく)さが背景にないだろうか。構造的な要因を検証して実効性のある指導を望む。

 感染が広がった経緯でも、農家の衛生管理の不備が露呈した。国の調査チームは農場間を行き来する車両の消毒が不十分だったり、野鳥を介して感染が広がったりした可能性があると報告している。

 県が昨年10月から今年1月にかけて実施した野生イノシシの調査では4件中全て陰性だったが、調査チームは、件数が少なく県内の野生イノシシへの感染の有無はまだ判明できないとしている。

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 県外では野生イノシシが感染源の発生もあり、今後も予断を許さない状況だ。農場へ入る人や車両の消毒、防鳥ネットを張るなど、農場ではワクチン接種と並行して日ごろの衛生管理の徹底が必要だ。

 沖縄にとって豚肉は生活文化に欠かせない食材の一つだが、今回の感染ではこれまでに9043頭もの豚が殺処分されるに至った。大切な命をこれ以上無駄にしないためにも、農家の基準徹底はもちろん、県にも農家の持続的な衛生管理への支援が求められる。