新型肺炎、日本国内にどう影響 症状は? 感染力は? 予防策は? 医師に聞く

忽那賢志・国立国際医療研究センター医師

 中国での新型コロナウイルスによる肺炎発症が急拡大している。24日から始まった春節(旧正月)の大型連休では、延べ30億人が移動するとされ、多くの訪日客も見込まれる。国内2例目の感染も確認された。輸入感染症などが専門の国立国際医療研究センターの忽那賢志医師に、新型コロナウイルスの特徴や、今後の日本への影響などを聞いた。

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Q 中国では、新型コロナウイルスによる肺炎症例の報告が増えている。

A 検査の簡易化もあり、多く確認されるようになったのだろう。収束の気配はない。現時点では、誰がどのように感染したかがある程度把握できている。拡散防止に向けた対策も取りやすい。ただどのようなルートで感染したか分からない症例が今後いくつも出てきた場合、感染がさらに拡大する恐れがあり懸念している。

Q 24日には、日本国内でも湖北省武漢市からの旅行者が感染し肺炎を発症したことが確認された。国内2例目だ。旧正月に伴う人の移動により、日本国内での流行が心配だ。

A いずれも武漢に滞在歴がある人だ。国内で感染が広がっている状況にはない。慌てる必要はない。

中国湖北省武漢市の海鮮市場=1月17日(共同)

Q 今回のウイルスは重症急性呼吸器症候群(SARS)に特徴が似ているとされる。

A そうだ。ただSARSなどに比べると、重症化しにくいだろう。死亡者の多くは、高齢者や持病がある人だ。これまでの情報では、小児が重症化したという例は聞かない。

Q 感染力はどうか。

A 一人の感染者から1・4~2・5人に感染すると言われている。SARSとあまり変わらないのではないか。

中国・武漢市で発生した肺炎の原因とされる新型のコロナウイルスの電子顕微鏡写真(中国疾病予防コントロールセンター、GISAID提供)

Q 感染した場合、どのような症状が出るのか。

A 症状としては発熱やせき、呼吸困難だ。コロナウイルスは、せきやくしゃみなどのしぶきで感染するとされている。1~2メートルの距離で人から人に感染すると考えられている。

Q 日本国内の空港ではサーモグラフィーで監視するなど水際対策が取られている。十分か。

A 海外では空港の検疫で把握できた例もあり、ある程度有効だろう。ただ2例目のように日本に到着後に発症するケースも起こり得る。100%防げる訳ではない。医療機関も態勢を整えておくべきだ。

関西空港のサーモグラフィー画面に映し出される到着客=1月22日

Q 予防策はあるか。

A 国内で感染が広がっているわけではなく、普段通りの対策で十分だ。せきやくしゃみの症状があるならマスクを着用して人に広がらないようにする。また水道水でいいのでこまめに手洗いをするぐらいだ。

Q 自身や周囲で感染が疑われる場合、どう対処したら良いか。

A 現時点で感染の可能性は高くない。もし心配なら、地域の病院を受診するとよい。

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