iPS軟骨の膝移植、厚労省が承認 京大、今年中にも移植術

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【図解】iPS細胞で作った軟骨組織を移植する臨床研究のイメージ

 厚生労働省の再生医療等評価部会は24日、iPS細胞(人工多能性幹細胞)から作った軟骨組織を、膝関節の軟骨損傷患者へ移植する京都大の臨床研究を承認した。京都市左京区の京大医学部付属病院で会見した代表研究者の妻木範行教授は「いよいよ始まるという思い。既存の治療法よりも効果の高い手法になると考えている」と話した。今年中にも患者に移植術を行うという。

 対象となる「膝関節軟骨損傷」は、進行すると日常生活に支障が出る。国内の患者は年間1万人以上とみられる。
 現状では、患者自身の健常な軟骨組織を採取し培養して移植するといった治療法があるが、手術回数が多かったり移植する組織の品質に課題があったりするという。iPS細胞を使うことでより高品質な軟骨組織を移植し、治療効果を上げる狙いがある。
 今回の臨床研究では移植は片膝のみに行い、軟骨の損傷面積が1~5平方センチの範囲内で年齢が20~70歳などの基準に合致した患者4人を対象とする。移植後、1年間の経過観察をして軟骨の再生や修復を評価する。備蓄された他人のiPS細胞を使うが、軟骨組織は免疫反応を起こしにくいため、遺伝子型を合わせたり免疫抑制剤を投与したりしないという。
 iPS細胞を使った再生医療の臨床研究や治験は、理化学研究所が目の病気「加齢黄斑変性」、京大が「パーキンソン病」や血液の難病「再生不良性貧血」で実施。大阪大などでも行われている。

■過度の期待を抑え研究見守る必要も

 【解説】今回の研究対象となる膝関節の軟骨損傷には、患者自身の軟骨組織を培養して移植する手法を含めて、既にさまざまな治療法が存在している。その中でiPS細胞(人工多能性幹細胞)を使った再生医療にどのような意義があるのか、慎重に見極めたい。
 iPS細胞を使った手法の意義について京都大のチームは「正常な軟骨組織に近い組織が得られている。既存の方法よりも長続きして、変性しにくいものになると期待している」と説明する。この方法が確立すれば、ほかの治療法と補完し合うことで選択の幅を広げられるという。
 また今回の対象は外傷などで膝関節の軟骨を損傷した患者だが、将来的には加齢などに伴って広範囲に軟骨損傷が起こる「変形性膝関節症」も治療対象にしたいという。自覚症状のない場合を含めて国内に約2千万人の患者がいるとされる同関節症も人工関節置換術などの治療法が存在し、それぞれの手法の特性を理解することが重要となる。
 軟骨の損傷という誰もが患者となる可能性のある病変だからこそ、iPS細胞への過度な期待を抑えながら臨床研究の行方を見守る必要がある。