安倍氏4選問題と外交 米、ロ動向が辺野古に影響<佐藤優のウチナー評論>

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 辺野古新基地建設に関する中央政府の立場が変化する可能性は、安倍政権が終焉するときに起こる。安倍晋三自民党総裁の任期は2021年秋までである。現在の自民党規約では、総裁の4選は禁止されている。裏返して言うならば、規則を改正すれば、4選は可能になるということだ。安倍氏自身は、現時点で4選の意思はないと思う。しかし、自民党内の環境と外交要因によって、4選に舵を切らなくてはならなくなる可能性があると筆者は見ている。

 第1が自民党の党内事情だ。現在、菅義偉官房長官の権力基盤が急速に弱体化している。その結果、岸田文雄自民党政調会長(元外相)が有力な総裁候補となりつつある。その過程で、自民党内から「選挙の顔として岸田で勝てるのか」という声が出てくる。

 第2が今年11月の米大統領選挙だ。トランプ氏が大統領に再選されると「安倍氏以外の誰がトランプと交渉できるか。安倍氏が首相を続けないと日米同盟が不安定になる」という声が出てくる。

 第3は、北方領土交渉だ。15日、ロシアのプーチン大統領は、メドベージェフ首相の内閣総辞職の願い出を受け入れ、後任首相にミハイル・ミシュスチン税務庁長官を指名し、翌16日に国家院(下院)でこの人事が承認された。

 一部に、24年に新大統領が誕生した後も、プーチン氏がロシア国家を事実上、統治することになるという見方をする人がいるが、その可能性はない。ロシアでは、権力は人にではなく、ポストにつくからだ。

 プーチン氏は、大統領退任後も自分が逮捕、訴追されるような状況がないようにするため、一定の影響力を政界に残すことを考えている。しかし、それはあくまでも自己の安全を保障するためで、「院政」を敷いて事実上の永久大統領になることを考えているわけではない。

 現在、プーチン氏は67歳だが、ロシアの政界での60代後半は日本の70代後半の感じだ。若い世代に権力を譲らないと、激しく変動する国際環境の中でロシアが生き残っていくことができなくなるとプーチン氏は冷静に認識している。

 新首相が就任した翌16日にモスクワ郊外のノボ・オガリョボにある大統領公邸にプーチン氏が北村滋国家安全保障局長を招き、会談した。谷内正太郎前国家安全保障局長はもとより茂木敏充外相、河野太郎前外相もプーチン氏と会うことはできなかった。

 ロシアは、北村氏が北方領土交渉のキーパーソンであると認識しているので、このような異例の会見を設定したのだ。プーチン氏は、KGB(ソ連国家保安委員会=秘密警察)の出身だ。警察庁出身の北村氏は、インテリジェンスの専門家だ。ロシアのナルイシキンSVR(対外諜報庁)長官、パトゥルシェフ安全保障会議書記(元FSB[連邦保安庁]長官)も北村氏を専門家としての能力を高く評価している。

 北村氏は安倍首相の信任が厚いので、北村氏にメッセージを伝達すれば、それは正確に安倍首相に伝わるとプーチン大統領は考えている。このタイミングで北村氏と会ったことは、プーチン氏が日本との関係改善を自らの政治的遺産にしたいと考えているからだと思う。今後、北方領土交渉が動き出す可能性がある。そうなると安倍首相の続投の動きが強まると思う。中央政府の政局がどう動くかについて綿密な情報収集と分析をして、それを辺野古新基地建設阻止につなげることを玉城デニー知事に望む。(作家・元外務省主任分析官)