Lucy計画で探査予定の小惑星に小さな衛星が存在することが判明

NASAのLucy(ルーシー)計画で探査予定の小惑星「エウリバテス」の周りを、直径1km未満の小さな衛星が回っていることが発見されました。Lucy計画では「トロヤ群」と呼ばれる、木星と同じような軌道で太陽の周りを回っている小惑星群と、火星と木星の間にある「小惑星帯」にある小惑星1つを探査する予定です(下図)。

エウリバテス自身はハッブル宇宙望遠鏡が小さな衛星を探す中で2018年に初めて観測されました。しかしその後しばらくは衛星が存在することは発見されず、2019年11月の観測でLucy計画のチームがその可能性に初めて気づきました

これを受け、チームはすぐにハッブル宇宙望遠鏡による追加観測をリクエストし、12月に2回、1月に1回の追加観測のチャンスを得ます。目的の衛星は軌道もわからず、近くにあるエウリバテスのほうが明るいため観測が困難です。追加観測を行っても見つけられる保証はありませんでした。しかしその結果、12月の2回の観測ではやはり何も見つけられませんでしたが、ついに1月、チームは3回目の観測で衛星が存在することを突き止めたのです。

Lucy計画のチームは現在、次に衛星を観測できるタイミングをハッブル宇宙望遠鏡のチームと検討しています。観測の向きが太陽の方向と重なる間はハッブル宇宙望遠鏡を向けることができないため、次に観測できるのは6月以降です。今回の衛星の存在によりLucy(人工衛星)の設計や軌道に影響することはありませんが、エウリバテスの探査を安全に行うため、チームは慎重に計画を進めています。

衛星の存在は科学的にも貴重な発見に結び付くかもしれません。この衛星は何らかの衝突によって作られたものと考えられますが、小惑星とその衛星を探査することにより、小さな天体が数多く広がっているときに衝突がどのように起こるのかという問題の理解に役立つためです。また、トロヤ群の小惑星の中で衛星をもつことがわかっているものはほんの一握りであるという意味からも貴重な発見でした。

Lucyは2021年10月に打ち上げ予定で、これほど多くの天体を探査する初めての衛星になるだろうと言われています。

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Image Credit: NASA
Source: NASA
文/北越康敬

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