米軍住宅返還後の跡地に市立大付属病院集約 横浜市が構想案を検討

米軍根岸住宅地区

 日米両政府が2004年に返還合意した米軍根岸住宅地区(横浜市中、南、磯子区)の跡地利用を巡り、横浜市が同市立大付属病院を再編整備する方向で検討していることが25日、関係者への取材で分かった。老朽化や狭隘化が課題となっている市立大付属病院(金沢区)と市立大付属市民総合医療センター(南区)を集約する案が浮上。市はすでに地元地権者らに説明しており、跡地利用の考え方などを踏まえて慎重に判断するとみられる。

 市は2病院の再整備について、市中期4カ年計画(18~21年度)に明記。市立大は18年度に「付属2病院将来構想検討委員会」を組織し19年9月、市会常任委員会に構想の方向性を報告した。

 2病院に関し、施設の老朽化などに加え、▽一部病室の床面積が医療法施行規則で定める基準(患者1人につき6.4平方メートル)を下回る▽2病院の診療圏や設備投資の重複─といった課題を列挙。人材育成や先進研究など大学病院としての機能を一つに集約するとともに、現在2病院で計1400ある病床を、千程度にするのが妥当とした。

 再整備にあたっては、1病院体制にする案と、それぞれの役割や機能を明確にした上でメーン、サブの2病院体制を維持する案の2パターンを軸に検討していくとしていた。

 関係者によると、再整備については市内部でも検討。統合する方向は正式決定していないものの、診療を続けながら現地で建て替えるのは困難との見方が広がっている。市が用地を探す中で、同地区が候補に挙がっているという。

 同地区を巡っては、日米合同委員会が18年11月、同地区の返還を前提に共同使用に向けた協議を始める方針を打ち出した。19年11月に建物の撤去や土壌汚染調査など原状回復作業を始めることで合意。作業完了時期に関し、防衛省は22年秋との見通しを示している。

 同地区は約43ヘクタールあり、国有地(約27.3ヘクタール)と民有地(約15.6ヘクタール)が混在。地権者数は約180人に上る。市は跡地利用基本計画の策定に向けた作業を行っており、19年9月には「基本的考え方」を公表。将来の街のイメージとして、良好な居住環境の形成や文教地区としての土地利用、公共・公益施設の誘致検討、隣接する根岸森林公園との一体利用による公園の魅力向上などを掲げている。

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