最小でもスーパーモデルの重みを受け継ぐ、アウディA1スポーツバックが見せた「真価」

アウディの末弟として旧型モデル時代から人気のコンパクトカー。今回はちょっぴりと大人の表情と元気いっぱいの走りを携えて、小さいクルマ好きのために登場したアウディA1スポーツバック。全身にたっぷりと詰まったアウディらしさとはいったいどんな味わいでしょうか?


ボディカラーがいっぱい選べる幸せ

小さくてすばしっこい車が大好きな私にとって「あ、なんかこのクルマ、しっくりくるわぁ」と感じた1台、それはアウディのA1スポーツバックでした。

昨年の11月にデビューした2代目モデルは、旧型の可愛らしさを残しながら、どこか男っぽさという、大人な雰囲気を漂わせていました。小さいから可愛らしく、という雰囲気作りではなく“小さくてもキリッと、ちょっぴりワイルドに”といった感じで、今大人気の関取、炎鵬といいますか、一癖ありそうな感じがいい感じだったのです。

さっそく箱根で開催されていた試乗会に出掛けると、ずらっと鮮やかなボディカラーなどカラフルなA1スポーツバックが並んでいました。実は今回、ボディの色をティオマングリーン、パイソンイエローメタリックなどイメージをはじめとする全10色の設定としています。

写真には10色全部は揃っていませんが色の選択肢が多いのは嬉しいポイント

これだけカラーバリエーションを用意すること自体、輸入車としては珍しいことです。小さいクルマにとって、ボディカラーというのはとても大切で、選択枝が多ければ多いほどそのクルマの“楽しさや存在感”を表現しやすくなります。一方で大きなクルマになればなるほど色選びの楽しさがどんどん失われていくのです。この色選びの楽しさも小さなクルマが好きな理由のひとつです。

そこで私が選んだカラーはちょっぴり渋さの入ったブルーでした。選んだと言いましたが、他のカラーはすでに選択されていて、一番欲しかったイエローにルーフが黒という仕様は、早く来ていたグループが先に選んでしまっていました。

といいつつも私に回ってきたカラーもなかなか大人っぽくていいのです。いや、むしろ今回の少しばかりキリッと締まったA1スポーツバックにこそ、この色が合うという感じでしょうか。見ているうちにどんどん“いいな、この色”という気持ちになってくるから不思議です。

歴史とクオリティが凝縮

旧型のアウディA1は少し丸っこいデザインで可愛らしさが立っていました。もちろんそれはそれでいいのですが、今回の2代目はデザインにエッジが効いていて、さらに表情に大人っぽさがあり引き締まっているのです。その要因のひとつが大きなシングルフレームグリルの上、ボンネットのラインの下に見える3分割されたスリットの存在が分かるでしょうか。

これなんですね、大人っぽさやワイルドさが感じられるのは、この3分割スリットの効果もあると思います。これは1984年に登場した「スポーツクワトロ」という、スーパースポーツモデルへのオマージュとなるデザインだそうです。といわれても最近の方はピンとこないかもしれません。とりあえずスポーツクワトロの写真も用意しましたが、ちゃんとフロントグリルの上に3分割されたインテークがあるのが分かると思います。

「スポーツクワトロ」

このスポーツクワトロ、当時としてはまだ珍しかったフルタイム4WDシステムを採用して、その絶大なるトラクションとマニュアル操作でロック可能な2つのディファレンシャルを武器に世界ラリー選手権(WRC)に挑戦し、1986年に撤退するまで、WRCイベントで23度の勝利と、4つのワールドチャンピオンタイトル獲得という偉業を達成しているのです。

当時とすれば誰もが憧れるスーパーモデルだったわけですが、その血筋を「小さな僕ですが、その意思はちゃんと引き継いでいます!」とでも言いたげな表情なわけです。

現行モデルでこうしたデザイン意図を採用しているのはアウディのスーパーカー、R8だけです。もちろん、そうしたヘリテージに関心がなくても、デザインとしても悪くないと思いますが、A1スポーツバックはFFモデルのみです。それでは走りに物足りなさがある?なんてことは心配無用だと言うことは、ワインディングに走り出してすぐに分かります。

知らず知らずのうちに笑顔に

実際に走らせてみたら、これがけっこう行けるのです。与えられたエンジンは高速道路などで負担が少ないときに2気筒がお休みする気筒休止機構を備えた1.5リットルのターボエンジンで、最高出力は150馬力です。最大トルクも250N・mで、そこにデュアルクラッチ式の7速Sトロニックが組み合わされます。

元気の良く回る1.5リットルエンジン

まぁ、現代のクルマのスペックとしてごくごく普通の数字だと思いながら走り出したら、ちょっぴり面食らいました。いや、別にバカッ速いとか強烈とかという表現はできないのですが、とてもクルマのキャラクターと合って、キビキビと活発にコーナーを抜けていけるのです。

どんな速度域からでもしっかりとトルクが出てくれるので苛つくこともなく、自分の思う感じで加速してくれます。さらにブレーキのフィーリングも悪くなく、踏み込め踏み込むほど制動力がグングンと増していく、いい感じなのです。

コンパクトでも居住性はしっかり確保されていて窮屈さはほとんど感じません

突然ガツンと効いたりすることもないので、コントロールが自然でスポーティな走りにはいい感じです。これはボディの大きさや1,220kgの軽量ボディがあるから可能なのだと思います。箱根のワインディングを走りながら、どんどん笑顔になっていくのです。

そして少しクールダウンしようとゆっくりペースを落としました。実はゆっくり走ったときの上質な感じも、いかにもアウディらしいのです。小さくてもちゃんとプレミアムブランドの一員だよ、といいたいのでしょうが、その想いはちゃんと伝わってきています。

小さなクルマ好きにはけっこう刺さるスポーツモデル。さっそくプライスを確認すると、この時乗ったモデルは443万円。ファーストエディションというほぼフル装備の状態でしたが、う~ん、気に入ったとは言えちょっと高いかなぁ。いいのは分かるんだが、もう少しおじさんの懐具合を察して欲しいなぁ、と、感じながら、現在のラインナップにある35 TFSI advancedを確認すると365万円。その上のSラインで391万円となっていました。

うん、これならギリギリ何とかなるかぁ。

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