スーパーGT:ナイトセッションでコースは見える!? 第5戦に向けてはまだ課題も

 1月23日から、マレーシアのセパンサーキットでスタートしたミシュラン主催のスーパーGTウインターテスト。例年この時季に行われる恒例のテストだが、2020年は7月17〜18日に予定されている第5戦に向け、夜間走行を行うナイトセッションが行われた。コース上の明るさはほとんどラップタイムに影響はないようだったが、ナイトレース実現に向けては、まだ細かな改善点もあるようだ。

 クアラルンプール国際空港からも近いマレーシアのセパン・インターナショナル・サーキットでは、まだシリーズが全日本GT選手権だった2000年に初めての海外戦としてスペシャルラウンドが行われ、2002年からは公式戦に。2003年はSARS(重症急性呼吸器症候群)の流行のため富士で代替開催されたものの、2013年まで毎年シリーズ戦が開催されてきた。

 その後しばらくシリーズ戦の開催はなく、オフの貴重なテストの舞台としてスーパーGTマシンが走行してきたセパンだが、2020年はひさびさにシリーズ戦として復帰することになった。しかも今季の開催は、スーパーGT公式戦として初となるナイトレースでの開催だ。

 これまでも12月のウインターテストを使ってナイトセッションの機会は設けられてきたが、そこで得られた意見をもとに照明に改良も加えられ、2019年にはWTCR世界ツーリングカーカップの最終戦を開催するなど、サーキット側も実際にナイトレース開催の実績を積んできている。

 そんな2020年第5戦セパンの実戦に向けて、23日にスタートしたウインターテストでは11台のGT500マシンが走行を重ねた。コースサイドから全周の照明を見たが、コース上はほぼ全域に渡ってライティングされており、走行には支障はほとんどなさそうだった。ただし、セクター2以降は基本的にアウト側からすべて照明が当たっており、撮影やイン側からの映像では車両が分かりづらいシーンも出てきそうだ。なお、今回は開発車両3車を使って、カーナンバーのライティングもテストされている。

照明が当たっていない部分では、影が多い写真となる。一方で自光式のカーナンバーは良く分かる。

■ドライバーからの意見は上々。ただ今後への改善点も

 コースについてはドライバーからの意見も上々で、ほとんど支障がないという意見が聞かれた。ただ、コースサイドで照らされていない部分があり、「縁石のわずかな部分が暗くて、限界が分かりづらい」という声や、「コース外の方が明るい部分があり、そっちに行ってしまいそうになる」、「すぐ慣れるけど昼間と比べるとスピードの感覚が変わる」などの意見もあった。

 ちなみに、ドライバーのコメントを聞いていると興味深いのは、それぞれのキャリアによってコメントが分かれることだ。ル・マン24時間を経験していたり、GT3車両でスパ24時間やニュルブルクリンク24時間を戦った経験があるドライバーは「すごく明るい」という意見が多かったが、あまり夜間走行の経験がないドライバーからは「暗いところがある」という声が多かったのが面白いところ。

 一方で難しいのは、1日目のナイトセッションでのウエットからドライに変化するような状況だ。「照明が水煙に反射して、霧の中を走っているような感覚」という意見があったほか、「路面が乾いていく様子がすごく分かりづらくて、実際のタイムを見ないとスリックに替えるタイミングが分からない」という声も。このあたりは、実際のレースでもし雨が降った場合はポイントのひとつになるだろう。

 また、テストでは実際のレースを想定して、アクシデントが起きていない状況でもイエローフラッグを提示し、視認性を確認するトライも行われたが、F1等ではおなじみのデジタルフラッグがセパンには装備されておらず、「フラッグが見えなかった」「ブレーキングポイントの距離看板が見えなかった」等の声も聞かれた。このあたりは、ボードを照らすなど今後GTAとサーキットで改良していくポイントだという。

 さらにピットでも、今後チーム側に対応する部分が出てきそうだ。ピットレーンはライティングされてはいるものの、ピットインするマシンのヘッドライトが非常にまぶしく、サインボードを出すにしても自チームの車両が一見分からないという声が聞かれた。このあたりは今後、耐久レースで使用される識別灯を用いるか蛍光素材のシールの装着、ピットレーンでのヘッドライトオフなどチームやドライバー側で対応することも増えてきそう。

 今回のテストはGT500のみのテストだったが、第5戦では今度はGT300車両もともに走ることになるため、また違った問題も起きるかもしれない。とはいえ、実戦に向けてサーキット、プロモーターのハロ・スポーツエンターテインメント、そしてGTAが今回のテストを通じてさまざまな努力を続けていることが伝わってきた。セパンはレイアウトもエキサイティングなコースだけに、初めてのナイトレースではふだん見られない光景と接戦が楽しめるのは間違いないだろう。

照明が当たっている場所では、キレイに車体を写真に収めることができる。水煙の見え方は課題か。

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