いきなり!ステーキと「ウルグアイ牛戦争」勃発、“先駆者”ブロンコビリーに勝算は?

2019年に19年ぶりに日本への輸入が解禁された、ウルグアイ産牛肉。この“ステーキ界の新星”を今年1月20日から一部店舗で取り扱い始めたのが、ステーキチェーンの「いきなり!ステーキ」です。

国内のステーキチェーンとしては、昨年5月に「ブロンコビリー」が同国産牛肉のステーキの販売を開始。発売から3ヵ月足らずで欠品(同年9月から販売再開)したほどの人気を誇りました。

いきなり!ステーキの新規参入で勃発した、ステーキ業界の「ウルグアイ牛戦争」。先行するブロンコビリーは、どう立ち向かう構えなのでしょうか。


社長自ら現地を視察

1月20日から、いきなり!ステーキが取り扱いを始めたのは「ウルグアイ産リブロースステーキ」と「ウルグアイ産サーロインステーキ」の2種類。前者が200グラム1,200円、300グラム1,600円(税別、以下同)。後者が200グラム1,300円、300グラム1,700円となっています。

リブロースを販売しているのは、北海道(3)、青森(2)、秋田(2)、宮城(2)、東京(1)の合計10店舗(カッコ内は各都県の取り扱い店舗数)。サーロインのほうは、北海道(6)、青森(2)、宮城(2)、東京(1)の11店舗で取り扱っています。

ウルグアイを視察する、ペッパーフードサービスの一瀬社長(右から3人目)

いきなり!ステーキを運営するペッパーフードサービスの一瀬邦夫社長が自らウルグアイに足を運び、販売する牛肉の品質を確かめたといいます。ウルグアイ牛に対する、同社の力の入れ具合がわかります。

「われわれは話題作りではない」

こうしたライバルの動きについて、ブロンコビリーの竹市克弘社長は1月22日の決算説明会で「いきなり!ステーキが1コンテナ分の買い付けをしていることを把握している」と言及。そのうえで、次のように牽制してみせました。

「われわれは話題作りではなく、良いものを長く提供することを前提に持ってきました。他社がどこまで思い入れを持って、どのくらいの品質で提供されるかはわかりませんが、一般的な飲食店の調理器具であればUS産牛肉のほうがおいしい」

竹市社長の論拠は、炭火で厚切りの肉を焼くことで、初めてウルグアイ牛のポテンシャルを引き出せるという自信。他国産の牛肉に比べて、赤身肉のうま味が強いのがウルグアイ牛の特徴。これを厚切りにして備長炭で中までじっくり火を通し、オガ炭で表面をカリッと仕上げることで、ウルグアイ牛の赤身のおいしさが引き出せるといいます。

「地球の反対側から50日かけて輸送したものの品質をどこまで確保できるか。そのリスクが取れないので、これまで他チェーンは本格導入できていませんでした。この点をどうとらえるがポイント」と、竹市社長は強調します。

ウルグアイ牛がもたらした想定外の効果

ブロンコビリーでは、昨年2月、ウルグアイ牛の導入に先駆けて、地域限定の割安ステーキメニューを導入。その後、5月に満を持してウルグアイ牛の販売を開始したことで、ステーキの販売構成比が従前の20%台前半から30%近傍まで上昇。前年同月割れが続いていた客単価も、上昇基調に転じました。

同社で提供しているウルグアイ牛メニューは「炭焼き超厚切り熟成サーロインステーキ」。価格は、150グラム1,480円、200グラム1,780円などとなっています。

ウルグアイ牛を使ったメニューは、既存の同価格帯の商品に比べて20%を超える売れ行きを記録。「チェーン店でありながら、良い原材料を集めることで、ステーキハウスとしての認知度が高まった」と、竹市社長は総括します。

しかし、予想を上回る人気に加えて、産地から輸送に50日を要するというリードタイムの長さのため、8月には在庫切れに。代替品として、急遽、ニュージーランド産牛肉のステーキを導入することになりました。

翌月には、5月の発売後に発注した牛肉が国内に届いたため、ウルグアイ牛の販売を再開。同時に、竹市社長が現地の生産者を5ヵ所以上回り、信頼関係を醸成。今後の需要予測などを説明することで産地の信頼を勝ち取り、消費量を確保しました。

ブッフェ風サラダバー導入を検討

ただ、赤身肉は昨年末から価格が高騰しています。足元ではTPP(環太平洋パートナーシップ協定)発効に伴う関税の低下が市場で話題になっていますが、アジア諸国での需要増などを背景に、中長期的には相場は値上がり傾向にあります。

ブロンコビリーでは3月分までの原材料は調達済みですが、4月以降は価格高騰の影響が本格化する見通し。この状況が続けば、せっかく人気を博しているウルグアイ牛も、採算が悪化しかねません。

こうした中で、2020年の重点課題に掲げるのが、サラダバーの野菜の品質の良さを前面に出した、新しい提案だといいます。

ブロンコビリーの強みの1つであるサラダバー

他のステーキチェーンが立て続けにサラダバーを取り入れたことで、2004年にいち早く導入したブロンコビリーのサラダバーも、利用客からは他社と同じ目線で比べられる事態になっています。

しかし、同社のサラダバーは、野菜ソムリエが監修したメニューを、各店舗で調理して、新鮮なまま提供していることが強み。この強みを差別化材料とするべく、「サラダバーよりもブッフェのようなクオリティまで高める」(竹市社長)ことも視野に入れているそうです。

「本当においしい野菜が食べられて、ブロンコビリーに行けば健康になれる、という流れを作りたい」(同)。そのための改装を年内の早い段階で着手し、早ければ今年中に全店舗に展開したい構えです。

ウルグアイ牛に、サラダバー。これまで強みとしてきた要素が、次々と他社に追随されているブロンコビリー。自慢の調理力で差別化を図る構えですが、その強みをいかにわかりやすく消費者に訴求できるかが、勝負の分かれ目になりそうです。

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