「女性が活躍している会社」は株価パフォーマンスも良好なのか

2016年に「女性活躍推進法」が施行されてから、男女共同参画社会の実現への流れが加速的に進んでいます。女性活躍推進法や男女共同参画社会を、耳にしたことがある方も少なくないでしょう。

女性の活躍度合いが低いと、性別の差などもあり「適切な人材の活用ができない」とか「正当に能力が評価されない」といった悪い印象を与えかねません。逆に「女性の活躍が見えてくる企業」であれば世間の評価も良くなり、場合によっては女性のお客さんから「応援したい」と思われ、その企業で商品を買ったり、製品を使ったりすることもあるでしょう。

であれば、株式市場でもこうした企業の株価は期待できるはずです。そこで、企業における女性の活躍度合いと、その企業の株価との関係について調べてみました。


新法施行で男女共同参画が加速

内閣府の中に男女共同参画局という部門があります。そのウェブサイトで、男女共同参画社会の定義が明確に示されています。「男女が社会生活の上で対等で、あらゆる分野で活動できる機会があり、均等に利益を享受することができる。そして共に責任を担う」とされています。

男女共同参画社会は「男女共同参画社会基本法」に基づいているものですが、さらにその実現を加速させる法律として、女性活躍推進法が定められました。仕事で女性が活躍できるように企業が推進することを義務づけた法律です。

実際の運用においては、企業は女性の活躍状況を外部に公表し、その改善を計画に従って進めなければならないとしています。昨年6月に改正されて、公表するデータを増やしたほか、従業員が少ない企業にまで法律の対象範囲を広げました。

企業が届けたデータは厚生労働省のウェブサイト「女性の活躍推進企業データベース」で誰でも閲覧できるようになっています。この法律に罰則はないのですが、届け出されていないとデータベースに載らないので、女性が活躍できない企業と世間から思われる可能性があります。

「女性の活躍」を何で計測するのか

とはいえ、「女性の活躍が見えてくる」というのは、どのようなデータを使うと良いのでしょうか。たとえば、女性労働者(従業員)の割合などが思いつくかもしれません。単純に働く女性が多ければ、その企業で活躍していると考えられるからです。

ここでもう一度、冒頭で挙げた「男女共同参画社会」の定義を振り返ってみます。「女性があらゆる分野で活動できる機会」という観点では、女性従業員の割合が高いことは重要でしょう。女性が活躍できる機会が多いからこそ、従業員も多くなっているからです。

一方で、「共に責任を担う」ということも重要な定義になっていることを考える必要があります。つまり、責任あるポジションでの女性の活躍ということも重要になります。であれば、「女性管理職の割合」に注目する必要があります。

活躍できるとはいっても、スタッフとしてしか考えず、活躍して成果を上げても管理職などの責任ある立場につけない会社もあるかもしれません。こうした会社は男女共同参画社会の理念に反しています。

そう考えると、「女性管理職の割合」と「女性労働者(従業員)の割合」の差を取ってみて、女性管理職の割合が高い企業が重要となります。そこで実際に調べてみました。

どうすれば妥当な評価が下せる?

東証1部上場企業を対象に毎年1回、9月末時点で取得できる情報を使って、企業が発行するCSR報告書などを通じて「女性中間管理職比率」と「女性従業員比率」のデータを取得します。

ここで言う「中間管理職」とは、一般的な会社における課長クラスです。現場実務のプロダクトのチーフなどの立場であり、実務を行うチームリーダーとなります。

今回は、この「女性中間管理職比率」から「女性従業員比率」を引いた差を求めました。ところが、実際にこの数値を見てみると、「女性中間管理職比率」が「女性従業員比率」より高い(プラスである)会社はほとんど見られませんでした。

そこで、「女性中間管理職比率」から「女性従業員比率」を引いた差がある程度マイナスでも他の会社と比べてマイナスが小さければ、「女性が責任ある立場で活躍できる会社」と考えることにしました。

「女性が活躍する企業」の株価推移

分析は会社を3つに分類しました。▲10%よりもマイナスの値が小さい会社を「活躍できる」として、そこから▲20%までは「普通」。3つ目の分類は▲20%よりもさらにマイナスの値が大きいと、女性従業員が多い割に管理職につけない会社として「活躍が小さい」としています。

そして、その後1年間の株式の平均収益率を見ました。表で示した収益率は、2015年以降でさらに平均しています。

分析結果は予想通り、「活躍できる」が最もパフォーマンスが良く、次いで「普通」。3つの中で最低が「活躍が小さい」となりました。やはり、「女性が責任ある立場で活躍できる会社」のパフォーマンスが良好でした。

皆さんも「女性の活躍推進企業データベース」を使って、会社の評価をしてみるのはいかがでしょう。実務ベースで活躍する「女性中間管理職比率」の代わりに「女性管理職比率」を使っても、似たような計算が可能です。

「女性管理職比率」-「労働者に占める女性労働者の割合」がプラスだったり、マイナスでも1ケタであれば、女性活躍の観点から注目したい会社になりそうです。

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