“全国最強”大阪でも深刻な野球離れ 高校部員数は全国ワースト3位の減少率

大阪府豊中市服部緑地公園で「第3回親子野球イベント」が行われた【写真:広尾晃】

高校硬式野球部員数は、2010年の9029人から19年は6754人に減少

 大阪府の高校は、2010年からの10年間で、夏の甲子園は4回、春も3回優勝している。大阪桐蔭や履正社などの強豪校を擁し「全国最強」の呼び声も高い。今年の選抜には大阪桐蔭と履正社の2校が選ばれた。しかし高校野球硬式部員の推移を見れば、実は深刻な「野球離れ」が進行している。

 日本高野連の発表によれば、大阪府の高校硬式野球部の部員数は、2010年には9029人だったが2019年は6754人。2275人も減った。減少率25.2%は、47都道府県の中でも福島県の26.9%、鹿児島県の25.7%についで3番目に悪い(全国平均は14.6%)。

 この背景には、小中学校の野球競技人口の激減がある。中体連の大阪府の軟式野球男子部員数は2010年の1万4479人が、2019年には8989人と38%の減少。スポーツ少年団の大阪府の軟式野球男子部員数は2010年の4704人が、2019年には2666人と実に43%も減少している。裾野が急速に減少していることが、大阪府の高校野球競技人口の減少につながっている。

 大阪府下では、目立った普及活動はあまり行われてこなかった。少年硬式野球団体が、選手を勧誘するために小学生に野球教室を行うことはあった。また野球塾や野球スクールはあるが、未就学児や小学校低学年に気軽に「野球の楽しさ」を教えるようなイベントは少なかった。

 1月25日、大阪府豊中市服部緑地公園で「第3回親子野球イベント」が行われた。これは近隣の未就学児や小学校低学年を対象とした入門イベントだ。

 参加したのは22組49人の親子。ストレッチなどの準備体操の後、年齢別に3つのグループに分かれてまずは親子対抗の軟らかいウレタンボールによるドッヂボールを行った。「球を投げる」「球をよける」という動きだが、「球をよける」練習が上達につながるという。

 続いて3組は、3つの体験に挑戦した。

○「捕る、投げる」
 ウレタンボールを大人が投げて子供が「よける」「帽子で叩き落す」「グラブで叩き落す」「グラブで捕球する」と段階を追ってボールの扱い方を覚えていく。初めてグラブを手にはめる子が多く、使い方がわからない子もいる。大人が親切に教えている。

○「打つ」
 ティーに置かれたボールを打ったり、大人が投げたボールを打ったり、「打つ」という動きを習得する。グリップの握り方やバットの振り方を教えながら、ボールを前に飛ばせるようにする。

○「試合」
 いわゆる「並びっこベースボール」。攻撃側はティーに置かれたボールを打って塁へ走る。守備側がボールを確保し、全員がその場所に集まって座るまでに、走者が塁から帰還できれば1点が入る。

 この3つを3グループが順番に体験していった。

北摂ベースボールアカデミーの植松剛史理事長【写真:広尾晃】

裾野拡大へ、親子による野球イベントが徐々に活発化

 この野球イベントは、子供だけでなく付き添いの大人たちも一緒に参加する。「試合」では、大人も思い切りバットを振り、一生懸命にボールを追いかける。親子ともどもで「野球の楽しさ」を体感してもらうのだ。

「今日は、ここで練習しておられる豊中ボーイズさんのご厚意で1時間半、グラウンドを使わせていただきました。豊中ボーイズさんも、野球離れに危機感を持っておられるんです」

 このイベントの主催者であるNPO法人「北摂ベースボールアカデミーの植松剛史理事長は話す。

 植松氏は筑波大体育専門学群、同大学院研究科でスポーツ経営学を学ぶ。その後千葉県、大阪府での小学校教諭を経て2019年にNPO法人を立ち上げた。

「この北摂地域でも子供たちが野球遊びができる場所はほとんどない状態です。少しでも野球に触れあう機会を作ろうと毎週木曜日に野球教室を開いてきましたが、昨年5月と9月に『親子野球イベント』を実施しました。2回合わせて25組の参加でしたが、今回は1回だけで22組が参加。少しずつ参加数が増えています」

 このイベントに協力した豊中ボーイズも、一時は選手数が激減して存続の危機に立たされた。そうした危機感から、こうした地道なイベントに協力するようになった。豊中ボーイズには今年5人の小学生が入ったという。

 イベントを体験した親子は冬にもかかわらず上気した顔で「楽しかった」を連発した。野球の入門イベントは、やれば必ず高い満足度を得ることができる。手ごたえはあるのだ。大阪の野球界も、こうした裾野拡大イベントに積極的に取り組んでほしい。(広尾晃 / Koh Hiroo)

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