ダイエットには赤い皿と酢漬け 欧米で注目、効果解明はこれから【世界から】

赤い皿に乗った、カジキマグロのソテー。美味しい料理を食べてやせられるとしたら、うれしい(C)Zoveer.nl

 年が明けたのもつかの間、はや1月が終わろうとしている。12月から続く年末年始には忘年会やクリスマス、お正月、新年会とごちそうを食べる機会が多くなる。そんな楽しい時期を過ごした後に、やってくる「恐怖」がある。

 体重増加だ。読者の中にも体重計に乗るのが怖いという人がいるに違いない。欧州の人々にとっても肥満は切実な問題となっている。(オランダ在住ジャーナリスト・稲葉かおる)

 ▽ポルトガルでブーム

 海外で暮らす日本人の医療や福祉などを支援する「ジャムズネット・ドイツ」の調べでは、欧州の人々は日本人のおよそ2倍のカロリーを摂取している。 そんな欧州で体重増加を防ぐための決め手として、注目を集めているのがポルトガル発の「赤い食器」だ。

 赤い食器とダイエットが結びつくなんて、にわかには信じられないに違いない。しかし、ポルトガルでは効果的だとして数年前からブームとなっている。メインディッシュを乗せるための大皿からコーヒーカップに至るまで赤色で統一する人が増えた影響で、国内の赤い食器が品薄になったこともあったという。

 活力や情熱、興奮…。赤色と聞いて多くの人が抱くのはそんなアグレッシブな印象に違いない。加えて、意外な効果もあることが最近の研究で明らかになってきた。食欲を抑える力だ。

 ポルトガルを代表する国立リスボン大学などで作る研究チームは次のような実験を行い、効果を確認した。平均より体重が重い男女100人を対象に青い皿と赤い皿に乗せたお菓子やチョコレートなどをどれぐらい食べるかの比較を繰り返し行ったところ、半数以上が赤い皿に乗せられた食べ物を残したのである。

 確固たる理由はまだ解明されていない。それでも、赤色には食欲抑制効果を期待できることが分かった。もちろん、疑問や批判も多い。赤い皿に料理を乗せただけで痩せられるなら、苦労はしないよ…と思うのも当然だろう。

ズアコール(皿の左側)とオランダ名物の燻製ソーセージ(C)Buiteneten

 ▽ダッチ式ダイエット

 しっかり食べても、体重を減らせる。そんな都合の良いダイエット法は筆者の住むオランダにもある。伝統料理の「ズアコール」を使ったものだ。

 ズアコールとは、キャベツの酢漬けのこと。幅2ミリほどに細切りしたキャベツをナツメグなどの香辛料を入れた酢の中に1~3カ月ほどつけ込んでできる保存食だ。ヨーロッパ各地で作られていて、ドイツでは「ザワークラウト」、フランスでは「シュークルート」と呼ばれる。日本ではこれらの呼び名の方が知られているのではないか。そのまま食べてもいいが、一般的にはソースで煮込んだ牛肉やソーセージなどの肉料理の付け合わせにする。

 酢には、脂肪分や糖分が体内に吸収されるのを未然に防ぐ効果があるとされる。となると、ズアコールをしっかり食べれば太る原因となる脂肪や糖を吸収しなくなるので楽に痩せられるのではないか―。こんな思いつきがこの痩身(そうしん)法を生んだ。日本でも食前などに水で薄めた酢を飲むことで代謝を良くして体重が減ったとする人がいる。これも同じ効果なのだろう。

 ズアコールを食べる「ダッチ(オランダ)式ダイエット法」は、ダイエット大国アメリカでも流行しつつある。火付け役と目されているのが、映画「X―MEN」シリーズで知られるオランダ出身の女優ファムケ・ヤンセン。ヤンセンに触発されて痩せることに成功したとアピールする若手女優も出てきている。

 ▽地道な努力も忘れずに

 酢については体重減に役立つ可能性を示唆する論文が発表されている。とはいえ、科学的な裏付けは十分になされたとは言えない。赤い食器の効果についても解明はこれからだ。

 「楽に痩せられる」というフレーズは何とも魅力的だ。一日も早く誰もが信用できるダイエット法として確立してもらいたい、と願ってやまない。それまでは、食べ過ぎを控えるとともに運動を心がけるという地道な努力をして体重減に務めるとしますか。

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