米統治下の沖縄で「ウシ」が「サンマ」を訴えた!? ドキュメンタリー「サンマ デモクラシー」

テレビ朝日ほかにて2月8日より順次放送される第34回民教協スペシャル「サンマ デモクラシー」(午前10:30)の完成披露試写会が行われ、同番組を制作した沖縄テレビの山里孫存ディレクターらが出席した。

「サンマ デモクラシー」は1963年、まだアメリカの統治下にあった沖縄が舞台となっており、日本人の秋の味覚として楽しみにしていたサンマに「関税がかかるのはおかしい!」と魚卸業のおかみ・玉城ウシが琉球政府を相手に裁判を起こしたことから物語が始まる。これが次第に統治者アメリカとの「自治権」をかけた闘いへと発展していく。この「サンマ裁判」という不思議で滑稽な争いを入り口に、沖縄で実際に起きた「民主主義」を巡る人々の闘いを追いかけ、現代の日本の姿をあぶり出していく。番組をナビゲートするのはうちなーはなし家・志ぃさ~、ナレーションは川平慈英が担当する。

山里ディレクターは「5年ほど前に知り合いの『父親が亡くなりました。おやじは、復帰運動の起爆剤と呼ばれたサンマ裁判を裁いた裁判官でした』というSNSの書き込みを見て、サンマ裁判を全然知らなかったので連絡をしたのがきっかけです」と制作の経緯について説明。続けて、「最初はアメリカに立ち向かった判決を出した裁判官たちを主人公に描いてみたいなと思って調べ始めたのですが、調べていくにつれてサンマ裁判を起こしたのが玉城ウシというおばあだったことが分かりました。『ウシ』が『サンマ』を訴えたという面白さが最初に強くきたので、そういった取材から入りました」と語った。

また、ナビゲートにはなし家を起用したことについては、「落語テイストという形で全体を貫いています。復帰前の沖縄というのが、ある意味落語のような、今から考えると不思議な、アメリカが統治する沖縄の時代だったというのをとにかく面白く描きたいなというのが番組の根幹にあります」と説明。「今回こういう作品にして、沖縄の人、そして日本中の人にこういう時代があったんだと伝えられることは良かったと思います」と手応えを語った。

民間放送教育協会(民教協)は、放送を通じて教育の機会均等と振興に寄与することを目的として昭和42年に文部科学省の認可を受けて設立され、1年に一度、ドキュメンタリーのスペシャル番組を制作しており、番組は既存のネット系列を越えた加盟33局にて放送される。今回は映画監督の崔洋一氏、映画監督・作家の森達也氏、写真家・作家の森博美氏の3人が審査を担当した。

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