新型肺炎、MERS以来の「指定感染症」へ 過去4例 どんな対策が可能になる?

新型肺炎の感染拡大が懸念される中、マスク姿で東京・銀座を訪れた中国からの団体旅行客=26日午後

 世界的に拡大する新型コロナウイルスによる肺炎が28日、感染症法上の「指定感染症」に指定される見込みとなった。2014年の中東呼吸器症候群(MERS)以来となる指定は感染拡大の防止を狙いとしたものだが、いったいどのような対策が可能となるのだろうか。 (共同通信=松森好巨)

 安倍晋三首相は27日の衆院予算委員会で指定の方針を表明。その理由を「入院措置や公費による適切な医療などを可能とするため」などと説明した。

 指定の根拠となる感染症法は1999年4月1日に施行。制定から100年以上がたち実情に合わなくなった伝染病予防法と、性病予防法、エイズ予防法とを統廃合したもので、患者の人権尊重と、迅速・的確な危機管理との両立を目指したことが特徴とされている。

 感染症法では、危険性に応じて五つに分類し、それぞれ対策を定めている。指定感染症はその五つのどれにも分類されていないが、それの拡大によって生命や健康に重大な影響を与える恐れがあり、迅速な対応が必要と認められた感染症が指定される。

 指定によってエボラ出血熱などの「1類感染症」や重症急性呼吸器症候群(SARS)などの「2類感染症」などと同レベルの措置が法改正を経ずに可能となる。具体的には、都道府県知事は患者や感染した疑いの強い人に入院を勧告でき、拒否すれば強制入院させることができる。感染を広げる恐れの高い仕事に就いている患者への就業制限、汚染された場所の消毒なども可能になる。

 また、流行地域への交通遮断や建物への立ち入り制限なども行えるとなっている。措置の内容をどの範囲まで広げるかは、指定された感染症ごとに判断する。指定期間は最長1年間で、必要に応じて1年に限り延長することができる。

SARSの患者発生を想定して行われた訓練=2003年5月、新千歳空港

 指定感染症と認定され事例は過去に4例ある。最初に指定されたのは03年の重症急性呼吸器症候群(SARS)だ。国立感染症研究所によると、02年に中国南部で患者が報告されたのを皮切りに、中国などアジアを中心に感染が急拡大。世界保健機関(WHO)が翌年7月に制圧宣言を出すまでの間、8千人以上が感染、750人以上が死亡した。国内でも52件の疑い例と16件の可能性例が報告されたが、全員SARSではないと判断された。

 SARS以降に指定されたのはH5N1型鳥インフルエンザ(06年)、H7N9型鳥インフルエンザ(13年)、中東呼吸器症候群(MERS)=14年=と続く。いずれも感染患者は報告されておらず、指定から2年間のうちに2類感染症に変更されている(SARSは03年中に1類感染症へ変更された後、07年に2類に)。

 今回指定される見込みの新型肺炎は27日時点で、中国での死者が80人を超えた。発症者は2744人に増え、そのうち重症者は461人にのぼる。国内では同日夕の時点で4人の感染が確認されている。厚生労働省は国内では人から人への持続的な感染は認められていないとし「季節性インフルエンザと同様に咳エチケットや手洗いなどの感染症対策に努めてほしい」と呼び掛けている。

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