ガイアが見つけた「見えない連星」の分析、アマチュアによる観測も貢献

2013年に打ち上げられたESA(欧州宇宙機関)の宇宙望遠鏡「ガイア」は、天の川銀河が別の銀河と合体した歴史を明らかにするなど、すでに重要な成果を上げています。今回、2016年にガイアの観測データから発見された「見えない連星」の詳しい分析結果が発表されました。

■複雑な重力マイクロレンズ現象の観測結果から連星の存在が判明

2016年8月、はくちょう座の方向に突然明るさを増した天体が出現したことをガイア宇宙望遠鏡が検出しました。急に明るくなる天体といえば超新星や新星といった爆発的な現象が思い浮かびますが、「Gaia16aye」と名付けられたこの天体は、不思議なことにわずか1日と経たずに突然暗くなってしまいました。

Lukasz Wyrzykowski氏(ワルシャワ大学、ポーランド)らの研究チームは、Gaia16ayeが「重力マイクロレンズ」による現象であることに気が付きました。重力マイクロレンズとは、恒星や系外惑星などの重力によって、より遠くにある天体の光が集められて明るく見える現象のこと。重力によって光の進む向きが曲げられるという意味では、銀河や銀河団の重力によって遠くの銀河がゆがんで見える「重力レンズ」現象と同じです。

ところが、Gaia16ayeの明るさは何度も増光と減光を繰り返す複雑なパターンを示しており、重力マイクロレンズ現象だとしてもめずらしいものでした。そこで研究チームは、Gaia16ayeが2つ以上の天体による現象ではないかと予想し、宇宙望遠鏡や専門家による観測だけでなく、アマチュア天文家によるものも含めた膨大な観測データをもとに詳しい分析を実施。その結果、Gaia16ayeが連星による重力マイクロレンズ現象だったことが裏付けられたのです。

■分析によって「見えない連星」の詳しい素性が明らかに

Wyrzykowski氏らの研究によって、重力マイクロレンズ現象をもたらした連星は太陽の約0.57倍および約0.36倍の重さを持つ2つの恒星から成り、互いの周りをおよそ2.88年かけて一周していることが明らかになりました。地球から連星までの距離はおよそ780光年先で、連星によって光が集められた星はさらにその向こう、およそ4万8000光年先にあると推定されています。なお、ここまで性質が明らかになってはいるものの、連星そのものの光は一度も直接観測されていません。これらの性質は、すべて重力マイクロレンズ現象の分析によって得られた情報となります。

また、研究を率いたWyrzykowski氏が「(Gaia16ayeを観測した)すべての人々の献身的な活動がなければこの成果は得られなかった」と語っているように、発表のなかではアマチュアによる観測やボランティア活動への感謝が綴られています。今回の研究成果は、高度な技術に支えられた宇宙望遠鏡や地上の観測設備だけでなく、宇宙に関心を抱く一般市民の活動もまた天文学の発展に貢献していることを示す一例と言えます。

Image Credit: M. Rębisz
Source: ESA
文/松村武宏

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