対馬 サンゾーロー祭 亀の甲羅で1年占う

サンゾーロー祭で、亀の甲羅に炭火を押し当てる所作をする土脇さん=対馬市、雷神社

 対馬市厳原町豆酘(つつ)の雷(いかづち)神社で27日、亀の甲羅を熱して対馬の1年間を占う亀卜(きぼく)神事「サンゾーロー祭」があった。今年の豆酘地区は安泰という意味の「安」、対馬全体については「水産業 不漁」「経済 並」「農業 上々」「天災 有」という結果が示された。

 市教委によると、亀卜とは亀の甲羅を焼いて生じたひびで吉凶を占うもの。飛鳥時代には、天下国家の吉凶を占う朝廷の「卜部(うらべ)」に対馬出身者が奉職していた。亀卜は対馬各地に伝わっていたが、現存するのは旧暦1月3日にある豆酘地区だけとなっている。
 同地区の「卜者(ぼくしゃ)」は、古くから地元の岩佐家が世襲。69代目は岩佐教治さん(68)だが、病気療養中のため、2010年からおいの会社員、土脇隆博さん(38)=福岡市=が務める。現在はひび入れまではせず、甲羅片に桜の木の炭火を当てる所作だけで執り行っている。
 神事には、地元住民ら約10人が参列した。土脇さんは「トホカミエミタメ」と3度唱え、甲羅片に炭火を当てて瞑想(めいそう)。半紙に書いた占い結果を読み上げた。住民は、土脇さんの祝言「白金(しろかね)や金(こがね)と見え渡りて候(そうろう)」に合わせて「おお、参候(さんぞうろ)」と唱和した。
 土脇さんは皇位継承に伴う昨年の宮中祭祀(さいし)に亀卜があったことについて「対馬の所作と同じだと感じた。歴史ある神事として、地域の方と一緒に継承していきたい」と話した。

© 株式会社長崎新聞社