「誤伐」もう通用しない 悪質業者排除へ前進

被害者に届いた損害賠償額などが記された書類

 日向市の伐採業者が他人の山林のスギを伐採、盗んだ罪で有罪判決を受けた27日の公判。「間違って切った」とする被告の主張を、裁判官は「不自然、不合理で信用できない」と指弾した。県内で相次ぐスギの違法伐採では、業者が「誤伐だった」と示談で片付ける手口が横行しており、被害者らは「今回の裁判所の判断で言い逃れが通用しなくなる」と歓迎する。
 県への「誤伐・盗伐」の被害相談は2016年度19件、17年度42件、18年度36件、19年度は11月末で22件と後を絶たない。
 山林は地籍調査が進まず、平地より境界があいまいな場所も多い。県内の被害者でつくる「盗伐被害者の会」によると、業者はその状況を利用し、無断伐採が発覚すると、所有者に「誤伐」と主張し示談を持ち掛けるケースが目立つ。
 裁判で有罪判決を受けた黒木達也被告は公判で、過去20年に約10件の無断伐採があったと明かし、「(損害賠償として)相場の倍の金額を地権者に支払った」と主張した。
 一方、県内の林業関係者は「違法伐採は見つからなければ丸もうけ。見つかっても示談という形で相場の金額を払えば、営業せずにスギが手に入る」と指摘。その上で「山のことを知らない高齢者などには、相場以下の金額を提示する場合もある」と強調する。
 今回の被害者の2人も事件発覚後、黒木被告から損害賠償金支払いの打診を受けた。しかし、このうちの1人は「誤伐と言い逃れできない環境をつくりたい」と受け入れず、被害届を提出。被害者の親族は「今回の判決は、違法伐採の抑止力になる」と歓迎。林業関係者も「悪質な業者を排除する機会になった」と話す。
 黒木被告が社長を務める「黒木林産」は、県造林素材生産事業協同組合連合会(県素連)認定の「合法木材供給事業者」でもあり、16年度には国から1400万円の助成を受け、重機を購入。刑が確定した場合、県素連は認定取り消しを、県は補助金返還を求めることを検討する方針という。

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