ドコモが取り組むIoT/AIの最新技術やソリューション DOCOMO OpenHouseレポート2

NTTドコモが今春からサービスを開始する5GやAI、IoTなどの最新技術を活用した様々なサービスやソリューションの展示や講演を一堂に体験できる「DOCOMO Open House 2020」が東京ビッグサイト青海展示棟で開催された。

展示ブースは、5G Vision、5G Future & Technology、5G Lifestyle、5G Business、デジタルマーケティング、事業創出、デバイス/UI・UX、IoT、AI、グローバルの10カテゴリーに分類され約300ものサービスやソリューションが展示された。

本レポートではAI、IoT、事業創出のカテゴリから興味の引いたブースをピックアップして紹介する。

ドコモAIエージェントAPI~あらゆるモノとの自然対話ができる世界の実現にむけて

見守りロボットやセルフオーダーシステム、会議室案内やFAQチャットボットなど実装されている事例が展示されていた。

ドコモAIエージェントAPIは、スマートフォンアプリだけでなく、家電や車、ロボットなど、様々な身の回りにあるモノとの対話を実現することができるサービスだ。

ドコモがガラケー時代からコンシューマ向けに提供していた「しゃべってコンシェル」や、スマートフォン向けに提供している「my daiz(マイデイズ)」の核となるエンジンがベースとなっている。また、このサービスには音声認識や音声合成の技術も搭載されているのでヒトとの対話によるソリューションが簡単に開発できるとのことだ。

料金も数万円~の重量課金となっており小さくはじめて見るといったことも可能になっている。

また昨年末には新たに「パートナープログラム」の提供を開始しており、パートナー企業とのビジネス拡大・創出にも力を入れていると担当者は説明する。

複数カメラによる同一人物トラッキングAI

写真上部のモニターは対象の人物がどの地点を移動したかが表示され、下部の大型のモニタには各カメラに映る人物をユニークで認識している。

この技術は、AIを活用したソリューション開発を得意とするRidge-i社とドコモが共同開発を進めているものだ。対象のカメラに映りこんだ人物を自動的に認識して、複数カメラを経由しても同一人物として認識できるため、離れた場所や広いエリアでも人の導線の把握をすることができる。

実際会場内の複数個所にカメラが設置されており、展示のモニターで同一人物として認識されていることが確認できる。

また人物の特定には、顔認識だけでなく、体や骨格など複数要素を組み合わせて行うため、眼鏡やマスクの装着や上着の脱着があった場合でも人物を特定できるのが特徴だ。

動画像解析によるインフラ劣化推定

モニターには列車が走った際のひずみの様子と正常/異常の変異のグラフが表示されていた。

ドコモと京都大学では、動画撮影で橋のたわみと車両の重量をもとに橋梁の劣化を推定するAIを共同開発を行っている。

2019年末から2020年9月末まで富山市の八尾大橋で実証実験を進めており、商用化に向けて実現性の検証やアルゴリズムのブラッシュアップを行なっている。

近年では、足場を組んで人による目視や打音による従来の点検方法から、ドローンを活用してひび割れやさびを検出する点検が導入されつつある。

しかし、この技術が確立されると、ひび割れなど重大な損傷になってしまう前に橋梁の劣化を推定をすることができるため、さらに早期補修が可能になるとのことだ。

2022年ごろまでに実用化を目指しているという。

深層学習を用いたニュース記事の要約システム

原文と要約する際に重要となるワードを「ヒント」欄に入力して「要約」を押下すると要約結果が表示される。

この技術は、ドコモと日本テレビ放送網で共同開発が進められているニュース記事を指定の文字量で要約をしてくれるものだ。

実際、日本テレビでは人手によるニュースの要約作業が行われてきており、その原文と要約された文章が、本システムで要約を実現させるためのコーパスとして学習されている。

要約に入れるべき重要なキーワードを設定して要約の精度を高める工夫や、原文と要約の比較がしやすいよう関連文章のハイライト表示などが行えるようになっており、作業者が負担なく要約作業を行える機能などが搭載されている。

水耕栽培ソリューション「SuICO」

左下のケースに入っているのが「植物生理モデル」が搭載されたIoTゲートウェイのモック

植物にとって最適な環境にコントロールできる「植物生理モデル」をIoT-GWをパッケージ化して、水耕栽培の環境構築からコンサルティング、運用保守までをドコモ法人営業部とアプレ社、NOUMANN社等はコラボレーションパートナーとして水耕栽培ソリューションを展開している。

プラントに設置された温度、湿度、CO2、溶液などのセンサーはLPWA子機を経由してIoT-GWに収集される。

IoT- GWにはあらかじめ「植物生理モデル」が搭載されており、外部環境の変化に応じて窓の開閉や空調、CO2濃度などの設備が制御され農作物の生育に最適な環境に近づくように自動的に制御されるようになっているので、熟練したノウハウがなくても作業者の負担やランニングコストの軽減につながることができるというものだ。

また、これらの情報はクラウドに情報が集積されPCやスマホ等で可視化ができるため、生産者が効率的に状況判断をも行えるようになっているというものだ。

クリエイティブ作業を10秒で遂行するAI「cre8tiveAI」

低解像度の画像が簡単に高解像度化される様子が展示されている。

「cre8tiveAI」はラディウス・ファイブ社が提供する、ディープラーニングを利用したAIツールのプラットフォームだ。例えば、このプラットフォームの「photo Refiner」という機能を利用すると、低解像度の画像をたった10秒で縦・横4倍の16倍の高解像度の画像に変換をすることができる。

古い映画や漫画を昨今の高解像度なテレビやモニターで見れるようにするために、静止画1枚1枚に対して特殊な機材と手作業で高解像度化するデジタルリマスターという作業あり、これには膨大な労力と時間が発生していた。しかし、この技術を使うと圧倒的なスピードで作業を進めることができる。

また静止画だけではなく動画を高解像度化する機能も現在開発中でありより作業負担が減らすことができるようになるとのことだ。

さらには今後、画像から不要な部分を取り除いてその部分を自動的に補完する機能や、背景の削除、画像の色の補完、画像のレイヤー分けなど、adobeのPhotoshopなどのツールでしかできなかったような画像の加工ができる機能も、このプラットフォームの中で簡単に利用ができるよう現在開発をしているとのことだ。

自由視点映像を低価格で配信できる「Swipe Video」

モニターのブラウザ上で再生された動画の視点が簡単に切り替えられる。

AMATELUS社の「Swipe video」は、4G環境配下であっても「自由視点映像」「マルチアングル映像」をPCやスマホのブラウザで配信や再生が可能なソリューションだ。

これまでは映像処理負荷や配信負荷の高さから、ブラウザ上での「自由視点映像」「マルチアングル映像」の配信や再生は難しいとされてきたが、このソリューションを利用すると大容量映像データとなる自由視点映像を4G環境でも配信することができる。

イベントなどのエンターテイメント領域だけでなく、ECサイトでの商品映像の配信や技術教育やトレーニングにおける手本の配信などのユースケースでも活用を狙っている。

従業員の私生活も豊かに~AIコミュニケーションアシスト「Aill」

「Aill」はANAグループをはじめ、特定の登録している企業の独身従業員のみが利用できる独身コミュニティーサービスだ。

社外の相性の合う異性を紹介を自動的にマッチングをして紹介をしてくれるのだが、もちろん素性がわかっているので安心してコミュニケーションをすることができるとのこと。

このサービスの最大の特徴は、AIがチャットの会話をアシストしてくれるところだ。

例えば、コミュニケーションの初期の段階の時に会話の流れで映画を誘おうとすると「まだ誘うのは早い」ということをアドバイスをしてくれたり、相手に良い反応を与えるメッセージを作成し送信がしやすくなるようタイミングや話題などをアドバイスし、相手との会話が盛り上がるようサポートしてくれる。

今のところBtoBtoC(E)モデルのみで展開をしていく予定とのことだ。

Sportip アシスタントAI

展示のモニターでは運動している人物の骨格を認識して数値化している様子が表示されている。

Sportip アシスタントAIは、トレーナーの指導をより高度に、効率化を行うことができるサービスだ。

トレーニングの様子を動画撮影をすると体の骨格や間接ポイントを数値化、ビジュアル化し、自動で3次元解析を行える。

そのほかにトレーニーとのチャット機能や取れニングスケジュールの管理、トレーニングメニューの生成などの機能を有しており、トレーナーは従来よりも少ない労力で高度な指導を多くのトレーニーにすることができるようになるとのことだ。

筑波大学発のベンチャーで、筑波大学のスポーツ・フィットネスのノウハウが詰め込まれているところが大きな特徴だ。

AI運行バス

バスの運転手が利用するタブレットとユーザーが利用するスマホアプリ

3年近く前に検討を始め、数々の実証実験を経て昨年春に正式リリースされた「AI運行バス」。商用運用されている九州大学のほか、導入を前提とした実証実験がさまざなな自治体とともに行われている。

今までの乗り合いバスの考え方だと、あらかじめ決められた路線、停留所、ダイアに沿って、乗客がいてもいなくてもピストンまたは巡回運行を行う。

一方、AIバスでは利用者がアプリまたはWEBサイトで乗りたいバス停と行き先を指定すると、バスがバス停まで迎えに来てくれるとともに、他の利用者の行き先を考慮しつつ最適なルートを計算する。

ドライバーは車載端末の画面の指示に従い運行するだけとなっており難しい操作も必要ない。

今までの乗り合いバスよりも乗降ポイントを増やすことができるため、より近くの停留所を利用できるようになり利用者からは喜ばれているという。

担当者によると、すべての乗り合いバスが置き換わるものではないが、効果があげられるスポットは多く存在しているので積極的に導入していきたいと説明した。

モバイル空間統計

約1時間前の人口の分布を表示。赤い部分が特に密集されている状態を示している。

モバイル空間統計は、ドコモの携帯電話ネットワークのしくみを使用して作成される人口の統計情報で、1時間ごとの人口を、24時間365日把握することができる。

日本全国の任意のエリアの、1時間ごとの人口増減を、性別や年代、居住エリア別に把握ができたり、どの期間にどこからどこにどれくらいの人数が移動したかを把握することができる。

また、国内人口だけでなく、海外からの訪日客のローミング情報を利用して訪日客の統計も同様に把握することができる。

以前は、この統計情報を最短2日前までしか把握することができなかったが、2019年末には、最短1時間前の情報を10分単位で把握できるようになり、よりタイムリーな施策に活用ができるようになった。

モバイル空間統計データを活用した「近未来人数予測」

モニターには23区西部と多摩地区東部の人口の未来予測がメッシュ状で表示されている。主要な駅には人が集まり東に行けば行くほど人口が密集している。

また、モバイル空間統計のサービスでは、時系列データから時間と空間の影響をモデル化し、その変動パターンを学習することにより、 250m ~500mメッシュ単位で、現在と数時間先の未来の人数を予測も行える「近未来人数予測」も行える。

これにより大型イベントでの警備員の配置や、事故・災害時に人数分布に応じた避難誘導や救助隊の派遣指示に利用ができる。

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