【MLB】レイズ筒香が伝えたい横浜への感謝の気持ち 「僕にとっては特別な場所です」

今季からレイズでプレーする筒香嘉智【写真:津高良和】

28歳スラッガーが単独インタで語ったレイズ選択の理由【後編】

 横浜DeNAベイスターズからポスティングシステムを利用してタンパベイ・レイズへの移籍が決まった筒香嘉智外野手。“ハマの主砲”を卒業し、アメリカへと飛び立つ28歳スラッガーが「Full-Count」の単独インタビューに応じ、渡米前の現在の心境、新天地への思い、そして第2の故郷・横浜への思いを語った。

 2回シリーズでお届けする後編では、レイズを選んだ理由、横浜への感謝などについて迫る。

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 2019年11月18日、MLB機構は全30球団に対してDeNAから筒香がポスティングされたと通知した。この日からブルージェイズ、ホワイトソックス、レイズなど複数球団が獲得に興味を示し、代理人を務めるワッサーマン・メディア・グループのジョエル・ウルフ氏に接触。12月上旬に渡米した筒香も球団との交渉に同席し、最終的に選んだのはフロリダ州タンパ近郊のセントピーターズバーグに拠点を置くレイズだった。

 メジャー30球団への正式通知から、ちょうど1か月後。12月18日に行われた入団会見では「キャッシュ監督、GMに一番最初に声をかけていただき、『勝つために君の力が必要だ』とおっしゃっていただいた」と、球団の熱意に打たれたことを明かした。特に、監督からの情熱は「レイズに来ないと、キャッシュ監督が夢に出てきそうだった」と笑わせたほど。改めて、レイズ入団の話になると「ベストの選択ができたと思っています」と胸を張った。

 とはいえ、簡単なプロセスではなかった。15歳の時、故郷の和歌山県橋本市を離れ、憧れの松坂大輔(西武)と同じ横浜高校に通う選択をしたものの、プロ野球選手になってから自分の意志で所属球団を決めるのは初めてだった。ましてや、交渉相手は日本人ではない。「分からない部分もたくさんあったので、一番はメジャーに精通している代理人のジョエルの意見を参考にしようと思いました」と振り返るが、今だから言える本音も漏れた。

「メジャー移籍を宣言してから球団が決まるまで、思ったより早かったです。でも、疲れました(笑)。普段、頭の中は野球について考える回路になっているので、いつもと違う回路を使うと疲れますね、本当に。大変でした……(笑)」

 初めての経験で、気が張っている筒香にとって「すごく話しやすい雰囲気を作って下さったり、いろいろ話をする中で気遣いをしていただいたりした」レイズは「すごくいい感触があった」という。言葉では表現しきれない「フィーリング」のようなものも「やっぱり感じるものはある。それはレイズの皆さんは良かったですね」と笑顔を見せる。

インタビューで横浜への感謝の思いを明かすレイズ・筒香嘉智【写真:津高良和】

レイズでもつける背番号25 「いろいろな番号で迷いました」

 レイズが本拠球場とするトロピカーナフィールドは海(タンパベイ)から程近い場所に立ち、周辺では浜風がそよぐ。チームは若手選手を中心とした編成で、昨年の野手平均年齢は27.3歳、投手は27.8歳。昨年メジャー出場した野手26人のうち、30歳を越えていたのは4人だけだった。また、守備シフトをいち早く取り入れたり、オープナーを導入したり、球団は伝統的に新しい取り組みにも積極的な開かれた姿勢を持つなど、DeNAとの共通点も多い。

「チームカラーが似ているって、皆さんによく言われるんですけど、僕はまだレイズのことが良く分かっていないので。ただ、ベイスターズみたいなチームだといいなって思いますね」

 ユニホームの色も同じブルー系。「小学校の時も青だったし、中学の時の堺ビッグボーイズも青だし。なんかあるんですかね?」と笑うが、新しいレイズのユニホームを来た自身の姿について問われると、照れくさそうに続けた。

「どうなんですかね? まだ全身着ていないので分からないですけど、似合ってるんですかね? 皆さん、気を遣って『似合ってる』って言ってくれるんですけど、自分ではちょっと分からないです(笑)」

 入団会見で着た真新しいユニホームには、慣れ親しんだ背番号「25」がついていた。昨年はフィールドコーディネーターを務めたポール・フーバー・コーチの番号だったが、日本から海を渡ってやってくるスラッガーのために譲ってくれたという。

「ベイスターズでの25番には、僕もすごく思い入れがあります。ただ、レイズではコーチが25番をつけていましたし、新しいチームに入るので新しい番号でスタートするのもいいかな、と思って、いろいろな番号で迷っていたんです。そうしたら、コーチが25番を譲って下さって。僕は周りの方に恵まれていると思います」

 周囲の人に恵まれているのは、筒香にそういう人々を惹きつける魅力があるからだろう。本来ならチームの主将であり主砲という唯一無二の存在に去られては困るDeNAも、メジャーでプレーしたいという筒香の夢に理解を示し、レイズ入団が決まった後には「ツツゴウとは何者か」を英語で紹介するスペシャル動画を作成し、後押ししてくれた。

「ベイスターズには10年お世話になって、ポスティングも快く承諾して下さり、映像まで作っていただき、感謝しかありません。横浜のファンの方々から届く言葉も、1つも『何で行っちゃうの?』とか『出ていくな』とかいう声はなく、『出ていってほしくないけど頑張ってください』という温かく前向きなものばかり。本当にありがたいですね。僕にとって、横浜は特別な場所ですから」

筒香が見せた意外な一面 「フロリダはワニが出るらしいので……」

「やるかやられるか」の覚悟で臨むメジャー1年目。家族は日本に残し、高校の同級生でもある練習パートナーと一緒に思い切り野球三昧の日々を送るつもりだ。メジャーの場合、オープン戦が始まるまでキャンプは午前中で終了することが多い。選手はオンとオフの切り替えが上手く、午後は趣味や家族と過ごす時間に費やしているが、「そんなに多趣味なわけでもないので」という筒香は、もっぱら自宅で体を休める時間として使うことになりそうだ。

「疲労度がどのくらいになるか、ですよね。気も遣うと思うので、基本は家でゆっくりじゃないですかね。あと、フロリダはワニが出るらしいので……。ちょっと怖いですね、ワニ」

 怖い物なしの猛者が持つ意外な一面も垣間見えたが、万が一、ワニに遭遇することも含めて、この先に待つ新たな体験が楽しみで仕方ないという。

「はい、楽しみです! 何が起こるのかな?って楽しみで仕方がない。野球に限らず、僕の人生においてすごくいい時間になるんじゃないかと思います」

 求められて向かう先で目指すものは、もちろん「優勝」だ。そして、古巣となるDeNAの優勝も心から願っている。

「今年から一緒にプレーはできませんが、ベイスターズのことは一番に応援したいと思いますし、僕がいる時にできなかった優勝する姿を見たいと思います。僕もレイズで優勝を目指すので、お互いに健闘を祈りあいたいですね」

“ハマの主砲”から“タンパの主砲”へ。筒香が新たな一歩を踏み出す。(佐藤直子 / Naoko Sato)

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