どうせなら熟睡したいから! 極寒でも安心の“厳冬期雪山用シュラフ”4モデル “キン”と張りつめた冷たい空気に、真っ白な眩しい雪と青い空。夏山から様変わりした冬の山に一度訪れると、雪の季節が待ち遠しくなってきますよね! ひとたび雪山の虜になると、次はテント泊に挑戦してみたくなるのでは? とはいえ、厳冬期のテント泊は寒さとの闘い。快適に過ごすためにもシュラフ選びは重要です。そこで今回は、極寒の中でも温かく熟睡できるシュラフをピックアップしました!

厳冬期の八ヶ岳・赤岳鉱泉で快適に眠れるシュラフは?

自分のお城で山を満喫できるテント泊。「厳冬期のテント泊も挑戦したいけど、夏用・3シーズン用のシュラフしかない」という人も多いのではないでしょうか。

寒い中でも快適な眠りにつくために、厳冬期用のシュラフを準備しておきたいところ。とはいえ、どんなシュラフを選んだらいいのか悩んでしまいますよね。

そこで今回は、冬に訪れる人も多い赤岳鉱泉(通年営業)でのテント泊を想定し、厳冬期用のシュラフ選びに着目。

赤岳鉱泉は標高2,215mに位置し、1月から3月の最低気温は-10℃から-17℃(参考:ヤマレコ)。この時期に使うシュラフ選びで気をつけることは、どんな点でしょうか?

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①「快適温度」と「下限温度」に注目

シュラフを選ぶ際に目安となるのが、EU諸国で定められたシュラフの温度に関する表示規格『EN(ヨーロピアン・ノーム)13537』。快適に使用できる気温帯を下記3つの領域で表示しています。
■快適温度(コンフォート)一般的な成人女性が、寒さで丸くなることなく快適に眠れる温度域

■下限温度(リミット)一般的な成人男性が、シュラフの中で丸くなりながらも快適に眠れる温度域

■極限温度(エクストリーム)寒さに対する耐性と代謝の低い成人女性が、シュラフの中で膝を抱えるほど丸くなった体勢のまま6時間耐えられる温度域

女性は「快適温度」、男性は「下限温度」を参考に。ただし、温度表示はあくまで目安であり、体感温度には個人差がありますので、寒がりの人は余裕を持った温度帯を選ぶのがベターです。

また、すべてのメーカーが「EN13537」に基づいた温度表示を採用しているわけではなく、独自テストでの温度表示をしているメーカーもあります。

その際は、「最低使用温度」「参考使用温度」などと表記されている温度を参考に、使用したい環境に合わせて選びましょう。

②厳冬期はダウンが最適!

ダウンのシュラフが厳冬期に最適な理由を知る前に、ダウンと化繊のメリットとデメリットを見てみましょう。
■ダウンメリット:耐久性があり軽くてコンパクトな収納サイズになる。
デメリット:水濡れに弱い。化繊よりも価格が高め。

■化繊メリット:化繊は濡れても温かく乾きやすい。ダウンよりも価格が抑えられる。
デメリット:ダウンよりも重く、収納サイズも大きめ。

ダウンと化繊のそれぞれ特徴がありますが、厳冬期の雪山テント泊は、アイゼンやスノーシュー、保温着など3シーズンより荷物量が重く、収納スペースもかさ張りやすくなります。

ラッセルで体力を奪われることも多い雪山登山で、その重さとかさ張りを少しでも克服するためには、軽くてコンパクトなダウンのシュラフがおすすめ。

また、ダウンのかさ高性を表すFP(フィルパワー)は、同じFPでもダウン量により下限温度が変わるため、ダウンシュラフを選ぶ際は、保温対策が施されている機能を比較して吟味することも大切です。

③ウェアや装備のレイヤリングも外せない

シュラフ以外の寝具も、保温力を向上させるために重要な装備です。シュラフ”内”のウェアのレイヤリングと、シュラフ”外”の装備に分けて、保温性を高めるためのポイントを紹介します。
■ウェアのレイヤリングシュラフの中は暖かくても、テント内は外気温より少し暖かい程度。シュラフのドローコードを締めても、寝ているうちに緩んで冷気が入り込み、肩回りが寒くなることもあります。ダウンジャケットやフリース、ダウンパンツやテントブーツを着用して、シュラフ内の防寒対策をしましょう。

シュラフシーツをプラスしたり、ダウンブランケットを肩回りや足元に入れるのも1つの案です。

靴下の重ね履きをする時には、締め付けの強い靴下には要注意。保温性を高めるどころか圧迫による冷えを招く可能性があるため、締め付けすぎない靴下で重ね履きをしましょう。

■装備テント内の結露でシュラフが濡れたりスリーピングパッドの保温性が低いと、ウェアのレイヤリングでシュラフ内の保温性を確保しても体が冷えてしまいます。

シュラフ外の装備では、シュラフの防水対策のためにシュラフカバーを、スリーピングパッドは保温性の高い厳冬期用を使用するのが賢明です。

▼シュラフカバーやスリーピングパッドはこちら

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ここからは厳冬期の赤岳鉱泉で使用できるシュラフを、人気4メーカーより1モデルずつ紹介します。

前述の通り、メーカーによって温度の表記方法は異なりますが、各メーカーの「下限温度」または「最低使用温度」を参考に選出しました。

【モンベル】快適な寝心地の「アルパインダウンハガー800 #0」

”国内3,000m級の冬山でも使用できる”アルパインダウンハガー800#0は、下限温度は-18℃で快適温度は-10℃。

高品質の800FPのEXダウンを、伸縮性の高いスパイラルストレッチ

システムと撥水加工を施した10デニールの生地で包んでいます。自宅保管用のストリージバッグが付属しています。

ここがポイント! EXダウンの威力

アルパインダウンハガー800#0のEXダウンは密度の高い大きなダウンボールで、軽くて暖かいのが特徴です。

また、ダウンハガー800#0を軽量化したのがアルパインダウンハガー800#0で、ダウンハガー#0よりジッパーが若干短め。冷気が侵入するきっかけを軽減し、さらに軽量性と保温性にも貢献しそうですね!

【モンベル】アルパインダウンハガー800 #0
【下限温度】-18℃
【重量】1,185g(スタッフバッグを含む)
【収納サイズ】φ19×38cm
【カラー】サンライズレッド(SURD)
【ダウン】EXダウン
【価格】44,000+税

モンベル アルパインダウンハガー800 #0

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【イスカ】ベストセラーモデル「エア 810EX」

次にご紹介するのがイスカのエア 810EXで下限温度は-25℃、厳冬期の国内山岳で使えるモデルです。

またエアシリーズそのものは耐摩耗性と耐熱性に優れた生地のナイロン99を使用し、エア 810SLは800FPのグースダウンを810g封入しています。

ここがポイント! 高品質グースダウンの魅力

  • エア 810EX,ダウンプラスデナリ 900
  • 価格,58,000+税,39,000+税
  • 下限温度,-25℃,-25℃
  • 生地,表・裏/ナイロン100% アウターシェルはナイロン99超撥水加工,表・裏/ポリエステル100%
  • 平均重量,1,290g,1,600g
  • 羽毛量,ホワイトグースダウン810g(90/10 800FP),ホワイトダックダウン900g(90/10 720FP)
  • 収納サイズ,φ21×37cm,φ22×38cm

現在イスカのシュラフで厳冬期用は5つで、下限温度が-25℃のシュラフは3つ。さらにその中で、価格が高めのエア 810EXと安価なダウンプラスデナリ 900を、価格の差でどう違うのか比較しました。

ダウンプラスデナリ 900は720FPのダウンで価格を抑えていますが、収納サイズがほぼ同じでも平均重量は約300gの差が!

優れた保温力と銀シャリおにぎり3個分も軽さは、ダックダウンよりダウンボールの大きいグースダウンだからこそですね。

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【タケモ】丹念に作り込まれた「スリーピングバッグ 9」

2015年7月に設立された”タケモ”は、”本物と呼べる良いものをより安く”をコンセプトに、国内登山寝具メーカーに30年勤めた設立者の経験を注ぎ込んだシュラフメーカーです。

“スリーピングバッグ 9”は下限温度-25℃で、750FPのダウンが900g。モンベルと同じく、ストリージバッグが付属しています。

ここがポイント! メーカーの対応もシュラフの暖かさも高評

タケモのシュラフは「とにかく足元が暖かい!お店の対応も最高」と、評価が高い口コミがほとんどです。保温力はもちろんのこと個人事業のタケモの温かさは、価格以上の名シュラフ!

【ナンガ】永久保証で水濡れリスク軽減!「UDD バッグ 810DX」

最後に紹介するのは、下限温度-13℃のナンガのUDD バッグ 810DXです。

ダックダウンそのものに超撥水加工を施して、厳冬期使用でも水濡れなどによる保温力低下の心配がありません。軽くてコンパクト、パッキングにも差が出ます!

ここがポイント! ダウンのデメリットが解決するUDD

狭いテント内にシュラフが触れても、生地とダウンの撥水加工で二重の安心! 朝までシュラフの水濡れに心配せず、ぐっすり眠れそうです。

またシュラフが汚れた時の洗濯や乾燥がしやすくなるなどメンテナンスもしやすくなり、末永く愛用できますね。

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厳冬期の雪山用シュラフはじっくり選ぼう

冬季・厳冬期用のシュラフは、生地に水濡れ防止対策、首元やジッパー部分からの冷気侵入を防止するためのショルダーウォーマーやドラフトチューブなど、登山者が暖かく快適に睡眠をとるための様々な工夫がされています。

個人の体力や経験、山域の天気などによりシュラフの体感温度は変化するため、色々なシュラフを手に取って確認してみましょう!

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