河北抄(1/28):江戸時代の終わり近く、今の茨城県古河市の…

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 江戸時代の終わり近く、今の茨城県古河市の古河藩に土井利位(としつら)という藩主がいて、何と30年近くも雪の結晶を観察したそうだ。そのスケッチを正続2巻の『雪華(せっか)図説』という本にまとめている。

 今なら誰でも知っている六角形の美しい雪の結晶に魅入られてしまったのだろう。さまざまな形の結晶を分類し、これが見事なデザインとして、着物の柄や工芸品の模様など、一般にも広まった。

 現在の気象庁のデータでは、古河市は降雪や最深積雪に斜線が引いてあり、観測記録がない。江戸時代だって雪はめったに降らなかったろう。殿様は「雪よ降れ、雪よ降れ」と念じていたのだろう。

 「寒い夜、黒地の布を外にさらして冷やし、舞い落ちる雪を受ける。ピンセットで雪片を取り、黒い漆器に移し、息がかからないように顕微鏡で見る」。そんな観察方法も『雪華図説』にはある。

 春の桜、秋の月、そして雪。雪月花(せつげっか)は日本美をたたえるわが国の風雅の根幹とされる。豪雪は困るが、少雪も困りものだ。ちょうどいいくらいの雪がそろそろ見たくなってきた。魅惑の雪華も。