女子選手が今のチームに出会うまでに辿った道とは? 中学からのチームの選び方 準備編Vol.3

中学からのチームの選び方、Vol3では女子選手の進路選択に迫ります。

世界を相手になでしこジャパンが躍動する中、女子選手たちの技術力は年々向上していると言われ、全体的に底上げされた印象を受けます。競技人口も飛躍的に増え、世間的にも大分浸透してきたように感じる昨今、東京都では1部〜5部まである東京都女子サッカーリーグで55の女子チームが精力的に活動している例を見ても「女の子がサッカーなんて」と言われていた時代は今は昔と言えるかもしれません。

しかしその一方で他府県ではまだまだ少数派といえる地域もあり、女子選手の中学からの受け皿が充分選べるほど準備されていないという現実があります。今回は女子の競技人口が少ない地域を中心に先輩保護者にお話を伺いました。

「サッカーが楽しくて仕方ない」「まだまだ上手くなるために中学でもサッカーを続けたい」という女子選手たちが、自分に合った環境に辿り着くまでにいったい何があったのか。局地的な話のようですが、子どもを思う親心には共通するポイントがあります。チーム選択の参考にしていただけたらと思います。

CONTENTS
ポイント1. 中学からは女子チームに行こう!そう思ったきっかけは?
ポイント2. 範囲はどこまで?寮生活もあり?
ポイント3. 中学からはカテゴリーレス?先輩後輩の関係はどんな雰囲気?
ポイント4. 男子チームもあり?部活やクラブチームを選んだ女子選手

ポイント1. 中学からは女子チームに行こう!そう思ったきっかけは?

街クラブ お子さん高1
娘が初めて女子チームにお世話になったのは小6での引っ越しがきっかけでした。
それまでは男子のチームでプレーしていましたが転校を機に本人が「もうサッカーはいいや」と言い出して。「サッカーを嫌いになった?」と聞くと「そうではない。」と。男子との実力の差を感じて自信をなくしていたようでした。

サッカーが好きなら続けさせてあげたいと思い、引っ越し先では女子チームを探してみることにしました。女子チームでも、できあがった関係に入って行けるのか?という心配はもちろんありました。でも、体験に行ったチームの同学年の選手が細やかに気遣ってくれて。おかげですぐに馴染むことができました。
その場で入団を決め、中学でも同じクラブに進みました。

街クラブ お子さん中1
小学生のころ、娘は男子のチームでお世話になっていました。男子たちはみんな娘を仲間と認めてくれて、娘も彼らとするサッカーを楽しんでいました。
そんな娘も成長期を迎え、男同士のノリについていけないと感じるようになり・・・自分一人、笑いのツボが違うと感じることも出てきたようでした。

ちょうどその頃から女子トレセンや地域の大会に女子の合同チームで参加するなど、女子チームでの活動の機会を頂くようになりました。
先輩後輩も含め沢山の女子選手と知り合い、女子同士の気楽さや一体感がとても心地よかったのでしょう。自然と中学からは女子チームに行きたいと考えるようになったようです。

街クラブ お子さん中1
小学生のころに在籍していた男子チームの試合では、娘の出場機会はあまり多くありませんでした。
自信をなくしかけていたところ、女子チームの大会に助っ人として呼んで頂きました。沢山試合に出して頂き、ゴールも決められてとても楽しかったようです。
その時に仲良くなった女子選手達との交流はその後も続きました。その流れがあり、中学からは女子チームでの活動を希望したのだと思います。

4種サッカーから女子サッカーへ

小学生チームで男子に混ざって存在感を発揮していた女子選手達。
4年生の終わり頃からフィジカルの強さや走力において男子との差を感じ始める選手も少なくないでしょう。練習試合には出られても、公式戦の大事な局面ではベンチになってしまう・・・そんなことが続くとサッカーが楽しくなくなってしまうかもしれません。

プレーだけでなく、ピッチの外でも男子同士ならではの「ノリ」についていけなくなるということも起きてきます。一般的に男子に比べ女子の方が精神年齢が高いと言われていることからも、成長過程では避けて通れない変化なのかもしれません。

サッカーをやめてしまう前にガールズサッカーフェスティバルなどのイベントや、サッカースクールの女子クラスなどへの参加をしてみるのもひとつの方法だと思います。前述の先輩保護者のお話にもあるように、助っ人として女子チームの試合に参加する機会があるなら積極的に参加してみてはいかがでしょう。同じ女子同士、気心の知れた安心感や楽しさがチームワークとなることを知った選手たちには、また新たな「女子サッカー」としてのサッカー観が広がるのではないかと思います。

ポイント2. 範囲はどこまで?寮生活もあり?

街クラブ お子さん中1
娘の学年は居住区にサッカーをしている女子が少なく、近所のクラブには同期で入団する子がほとんどいませんでした。なるべく多い人数の同学年の女子と関わってほしいと思ったので県内の他地区にも体験に行きました。
部員が多く指導方法の良さが魅力ではありましたが、交通の便が悪く、どうしても帰宅時間が遅くなってしまいます。電車一本で行ける所にしぼって、隣接する県のチームにまで広げて探すことにしました。

街クラブ お子さん中学生
選択肢のひとつとして強豪と言われるサッカー部がある私立高校の附属中学のサッカー部を見に行きました。
授業後に校庭でも練習できるし、学校所有のグランドに学校所有のバスで移動できるので時間的効率がとても良く、魅力を感じました。学校から一旦帰宅してからクラブチームへ出かけて行き、夜遅く帰ってくることを思えば、学校生活の一環として部活でサッカー出来る方が本人も楽なのではないかと思いました。

我が家は結局、娘が地元の友達と同じ中学に行くことを望んだのでクラブチームを選択しましたが、本人が入学を希望していれば受験させていたと思います。
ご家庭の考えで通学圏内と判断した場合や、寮があるなどの条件を満たしていれば強豪校の附属中学の部活に進むための準備をするのも良いと思います。

街クラブ お子さん中1
サッカーの指導方を気に入り、ここに通いたいというクラブが見つかりました。
ひとつ困ったことは最寄り駅からグランドまでの距離。徒歩で20分くらいでしょうか。帰り道が特に心配でした。
最終決定する前に、何人くらい新加入者がいるか、一緒に通える子がいるかどうかをチェックしました。

「近い」と「通いたい」、優先順位の整理と安全面への配慮を

居住する地域にクラブ数が少ない場合、可能な限りで居住区外地域のチームも選択肢のひとつに数える選手もいるようです。
それ以外にも自己のレベルアップの為に隣接する地域の強豪チームに挑戦する選手や、反対に出場機会を求めてチームを探す選手もいるでしょう。

様々なケースを参考に
・お子さんが自分で通うことが出来るという点を優先するのか?
・お子さんが魅かれるサッカースタイルやレベルを優先するのか?
優先順位をよくよく親子で話し合う方が良いでしょう。

その上で自宅から遠いチームを選択した場合は、一緒に通える選手がいるのか、最寄駅までの道の様子(人通りが少なくないか、不審者情報などはないか)を確認しておくと良いでしょう。
全てとはいきませんが、女子選手の安全面に配慮しているクラブもあります。最寄り駅から送迎バスを運行しているところや、駅から近いグランドを練習場所にしているところもあるようです。合わせて確認しておくと良いでしょう。

附属中学、寮生活という選択肢も お子さんの意思を確認して熟考を

クラブチームで3年間を過ごし、高校年代で高体連での活動を目指す選手がいる一方で、附属の中学を受験して中学サッカー部から高等部での活躍を目指す選手もいます。
家から通える距離ではない場合は寮生活を送ることを選択する選手も。受験の他にサッカー部のセレクションがある学校もあるので希望者全員が入れるのかどうかは学校によって違うと思いますが、部活は学校生活の一貫として活動できるので時間的効率が良いという点はメリットと言えるでしょう。寮がある学校も含めれば選択肢も広がります。

しかし、高校まで含めれば6年間通うことになります。通学時間はどこまでが許容範囲か、怪我や人間関係における事態など6年間で起こりうるあらゆることを想定して考える必要があるでしょう。
親元を離れ、寮生活を送るとなると更に熟考を重ねることになると思います。
どんな道を選ぶにしても一番大切なのはお子さんの意思。あくまで保護者はサポートとという姿勢で話し合うことをお勧めします。

ポイント3. 中学からはカテゴリーレス?先輩後輩の関係はどんな雰囲気?

街クラブ お子さん高1
娘が中学時代にお世話になったのは、トップチームがエリアの2部リーグに所属している街クラブでした。
人数が少ないので上は社会人、下は中1からリーグ戦に出ていました。
しかし、中1がいきなり大人と同じチームで試合するとなると、怪我の心配があります。なのでリーグ開幕当初は5分程度の出場でしたね。本人の頑張りで日を追うごとに出場機会は多くなりました。

街クラブ お子さん中学生
娘のクラブのU-15カテゴリーは学年毎の人数が揃わないので3学年合同での活動でした。
上手い子は中1からレギュラーで中2、中3でもベンチになってしまう選手もいました。エリアの殆どが同じ状況だと思います。

街クラブ お子さん高校生
ホーム会場ではコート作りから、試合後は相手チーム会場であってもゴール移動、グランド整備などの後片付けは必ず手伝います。先輩部員が持ち場を決めて全員で動くようにしているようですが、中1が率先して動くように指導されているようです。
また、社会に出てからのことも考えて先輩に対しても敬語を使うように指導されていました。
最初は何をしてよいか分からずにいた中1も、どんどんしっかりしてきて言葉遣いも丁寧に。成長を感じましたね。

部員数が少なければ活動は全学年合同 中1からトップチーム帯同も

女子チームの場合、競技人口が少ない地域では学年ごとの人数が充分に揃わないこともあります。それゆえ、U-15として3学年合同で活動する地域も少なくないようです。
実力重視のクラブでは中学1年生が先輩からレギュラーを奪うということも起きてきます。U-15カテゴリーに留まらず、中1からトップチームに帯同するということもあり得ます。

一方、練習や試合の準備、後片付けなどピッチの外での活動には、試合とは別の先輩と後輩の関係が表れます。
合同での活動は人間関係を学ぶチャンスではありますが、最初から上手くいくことばかりではないかもしれません。中学1年生が後片付けなどを率先して行うように指導する中学2年生は「先輩1年生」であり、中学3年生も「先輩2年生」に過ぎません。
しっかりしているように見えても、まだまだ中学生なのです。

そんな彼女たちが活動を共にするうちに、コミュニケーションの取り方を覚え、問題も自分たちで解決できるようになり、かけがえのない「仲間」になっていく過程にはやはり大人たちの見守りが不可欠といえるでしょう。
もし、選手たちの関係にトラブルがあった時、指導者にどこまで相談して良いか判断もしにくいかもしれません。入団前に指導者の方々と話す機会があれば不安に思うことを質問してみることをお勧めします。

ポイント4.男子チームもあり?部活やクラブチームを選んだ女子選手

街クラブ お子さん高校生
息子が在籍するクラブのジュニアユースでは女子選手も受け入れています。
毎年2~3人女子選手の入団があり、練習も男子と合同です。家から近くて通いやすいのもあると思いますが、お兄さんが入っていて指導が良いので妹さんもお世話になるということも多いみたいですね。
試合にもフル出場とまではいきませんが、出ていますよ。
うちのクラブに限らず、1人でも女子選手がいるクラブにはその後も定期的に女子選手が入って来られているようです。保護者の方も女子を受け入れたことがあるチームの方が安心なのだと思いますね。

街クラブ お子さん中校生
娘の学年にも、先輩達にも、男子チームや中学の男子サッカー部に登録する選手は毎年1人〜2人はいます。
Bチームですが部活では主力として活躍する女子選手もいました。
フィジカルを強くしたいとか、走力やテクニックを付けたいという理由もあると思いますが、自宅から通える女子チームが無いというも理由の一つだったようです。

きっかけは兄や先輩女子 継続は本人の努力

中学からもまだまだ男子の中でサッカーする女子選手もいます。中でもよく耳にするのはお兄さんがいるケース。保護者もお兄さんが通っているクラブであればコーチの人柄や指導方もよく分かっているので安心出来るというのも納得です。
また、女子の先輩が在籍しているというのも大きな要因になると思います。今までに女子部員を受け入れたことがあり、コンスタントに数名の女子が入団しているクラブであれば入りやすいと感じると思います。

とはいえ、全てのケースにおいて「兄がいるから」「女子がいるから」ということで単純に安心ということではないと思います。男子の中で頑張っていくことを決断した女子選手には一人ひとりの覚悟があったと思います。入団後、活動を継続していけるかどうかは本人の強い意志と努力、家族のサポートにかかっていると言えそうです。

女子選手が男子チームに行く良さとは

体力、走力など、男子との差は出てくるものの、女子が男子チームでプレーすることはいくつかのメリットもあります。トレーニング次第で以下のことが期待できるでしょう。

・コンタクトプレーでの手の使い方が上手くなる
・周りをよく見て素早くパスを出すなどの判断力が向上する
・次の動きを予測して一歩早く動けるようになるため、ポジショニングが良くなる
・女子チームで試合に臨んだ時にスピード面でアドバンテージになる

しかし、やはり心配なことも出てくると思います。
女子より速いスピードについていくので身体に負荷がかかり過ぎてしまったり、激しい接触で怪我をしてしまったり。合宿や遠征時のことなども保護者としては気がかりなことだと思います。
入団前に気になることを先輩女子選手の保護者や指導者に質問できるように準備しておきましょう。

女子選手は部活と女子チームの2重登録が可能

中学の部活は女子でも登録することが可能で試合にも出られます。しかも女子選手は女子チームと部活の2重登録が認められているので、女子チームでは女子の試合への出場が、部活では男子の試合への出場が可能です。

ただし、これはあくまで「規約的には大丈夫」ということであり、実際のところは学校や顧問の考え方、女子チームの理解も必要になってくると思います。女子チームの公式戦前の練習と中体連の活動が重なったり、両チームの合宿の日程が重なってしまったらどちらを優先すれば良いのかなど、判断を求められる場面も出てくるでしょう。
男子チーム、女子チームそれぞれに女子選手にとってのメリットがあるので、予定の調整と活動量の多さからくるオーバートレーニングに注意すれば両立も決して不可能ではないと思います。

参照サイト:JFA 女子サッカーあれこれ

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最後に

女子がサッカーをする動機は、今や様々なかたちがあります。
「なでしこジャパンになりたい」という強い意志で日本リーグ(なでしこリーグ1部、2部、チャレンジリーグ)所属の強豪チームのアカデミーのセレクションに勝ち抜き、しのぎを削って頑張っている選手もいれば、今より上手くなるために街のクラブチームや男子チームで懸命に努力する選手もいます。
仲間と大好きなサッカーを笑顔で楽しんでいる女子選手たちも沢山います。
目標は違っても、みんなそれぞれサッカーを愛し、サッカーを楽しんでいます。
女子選手一人ひとりが自分のサッカーを大事にそれぞれの道を行けるよう、自分に合ったサッカーチームに出会えることをお祈りしています。

先輩保護者に聞くクラブチームの選び方 次回、Vol4は準備編の総仕上げとして「クラブチームを選ぶ前に親子で確認すること、約束すること」をお届けします。お楽しみに。

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