自宅・保険を使った熟年・老後資金の調達法。住み替え、リースバック、リバースモーゲージなどについて解説

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熟年・老年と老後資金

一般に65歳以降は高齢者といわれますが、60~80歳は熟年、80歳以降を老年と使い分けることもあります。80歳以降の生活資金を「老後資金」と呼ぶと、年金の給付や資金の取り崩しの実情にも合いそうです。

公的年金は全て終身となっていますが、多くの会社の企業年金(DB・DC)は80歳までの定期年金になっています。DB・DCの給付がなくなった後の期間が、10年~15年続くのは当たり前の時代になり、手元資金の不足が予測される場合は、自宅や保険の活用も一つの方法ではないでしょうか。
※DB=確定給付年金、DC=確定拠出年金

自宅活用の老後資金

90歳~95歳まで取り崩せる金融資産を持つことは、理想です。あるいは熟年の70歳代の支出をセーブするのも一つの選択として考えられます。ここでは、80歳代で老後資金が少し不安になる場合を想定して、対応策を考えてみましょう。前提は、子どもたちとの同居は想定しない、夫婦2人または単身世帯です。

老後資金対策の一つとして、保有する自宅を活用する方法があり、それには3つの選択肢があります。「住み替え」「リースバック」「リバースモーゲージ」です。

・住み替え

住み替えは、今住んでいる自宅(戸建て・マンション)が、子どもたちの独立後、2人で住むには広すぎるので、小ぶりの住まい(マンションなど)に移るため、売却するケースが考えらます。

目的は、自宅の売却額から新規購入額を差し引きして得た資金で、何年分かの生活資金を確保することや、生活コストを下げることです。住み替え先は、代わりの自己名義居宅(マンション等)取得のほかに、賃貸住宅や高齢者住宅という選択もあります。

ただ、資金を残せる住み替えは結構課題も多いので、70歳代から2~3年間をかけて取り組むことが必要でしょう。その際の、売却と生活コストを減らして確保する資金の目安は、個人の状況によりますが、5~10年分が確保できればよいのではないでしょうか。

・リースバック

自宅のリースバックとは、自己所有の土地建物(マンション)を売却して、引き続きその居宅に住むケースです。売却するので、一括して売却資金を入手することができます。そして、引き続きその家に住むわけですから、日常生活はそのままです。便利な選択ではありますが、毎月家賃を支払う必要があります。

メリットは、今までの家に住みながら、一括売却資金を入手できることです。また、所有している場合は負担する、固定資産税や、マンションでは必要な管理費・修繕積立金などが不要になり、支出管理はシンプルになります。

一方、デメリットは、売却価格が通常の売却価格と比べて安くなるケースが多くなることと、家賃の支払いです。また、賃貸借期間が限定される定時賃借契約が多いので、どの程度の借用期間なのか考えておく必要があります。

・リバースモーゲージ

リバースモーゲージは、老後資金の確保の方法としてよく挙げられますが、実際の運用上の課題もあり、全国的には利用に格差があります。リバースモーゲージの最大の特徴は、自宅を所有しながら、生活資金などの融資を受け、死後に自宅を売却して借りた資金を返済するというものです。

ただ、法定相続人の承認が必要なこと、戸建て中心であること、東京以外では扱う金融機関が限定されるなどの点で、徐々に伸びていますが、広く利用されるには至っていません。

終身保険という選択

生命保険の最近の傾向は、保険料が少なく補償額が大きい定期保険を選択する人が多くなっているようですが、一方で終身保険の人気は根強く、民間保険の直近の契約者の約35%(※)が終身保険を選択しています。

終身保険の最大のメリットは、終身死亡時保証が継続することですが、解約返戻金の「契約者貸付制度」を使用することで、老後資金を生み出すことができます。この制度は、加入者は解約返戻金の範囲で何度でも利用でき、返済は死亡時保険金との相殺が可能です。また利率は通常の融資に比べて割安となっています。

保険料が高くなるので、熟年になっての加入は考えられませんが、すでに終身保険に加入していた場合は、高齢時になっても価値のある保険といえますので、「契約者貸付制度」を利用することは、自宅活用と共に老後資金の捻出策といえるでしょう。

まとめ

自宅や生命保険を子どもたちに託すのも選択ですが、夫婦や個人が自分たちで作ってきた資産を有効活用して人生を全うするという考えもあります。高齢者の自宅の処分・住み替えと、終身保険の利用も、そんな考えに合致するかもしれません。

一方で、空き家や老朽化マンションの問題もあり、住まいが世代を超えて上手に循環するしくみが求められているようです。そのような住まいの循環のサイクルの中に、高齢者の住み替えもあってよいのではないでしょうか。

出典 (※)平成27年度 生命保険に関する全国実態調査 生命保険文化センター 50P 直近加入契約(民保)の保険種類

執筆者:植田英三郎
ファイナンシャルプランナー CFP

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