直木賞受賞 川越宗一氏 梅屋庄吉の小説執筆で長崎に

「長崎近代交流史と孫文・梅屋庄吉ミュージアム」を見学する川越氏=長崎市松が枝町

 第162回直木賞に決まった作家の川越宗一氏が25日から3日間、長崎市と壱岐市を訪問。中国・辛亥革命の指導者孫文を支援した長崎市出身の実業家、梅屋庄吉(1868~1934年)を題材にした小説執筆のため、ゆかりの地などを訪れ取材活動を行った。
 小説家や漫画家を取材旅行に招く県の事業「描いてみんね!長崎」の一環。川越氏が同事業で本県を取材するのは2度目。前回は2018年9月に来県し、平戸で生まれた明(中国)の英雄、鄭成功(ていせいこう)の母を主人公とした「海神の子」を執筆している。県によると今回の作品は、梅屋の人生を独自の視点から描く長編書き下ろし小説になるという。
 25日は、旧香港上海銀行長崎支店記念館内(長崎市松が枝町)の「長崎近代交流史と孫文・梅屋庄吉ミュージアム」を訪れ、梅屋の少年時代の写真や自筆の書、孫文が「賢母」と揮毫(きごう)した梅屋の羽織などを興味深げに見学。説明役の県立長崎図書館郷土課職員、山口保彦さん(60)に、当時の自由民権運動などについて尋ね、熱心にメモを取っていた。
 記者会見で川越氏は梅屋をテーマにした理由を「鄭成功の取材で来崎した際に梅屋の存在を知り、壮大な人生に心を打たれた」と説明。取材旅行を通じ、「梅屋が育った場所の空気感や風景など土地の感覚を知ることで、個性や人格について想像を膨らませたい」と述べ、「長崎は外国のいろんな文化が共存していて、知れば知るほど面白く興味深い町」と話した。
 26日は遊覧船から長崎港を視察したほか、長崎ランタンフェスティバルの媽祖(まそ)行列を見学。27日は壱岐市で梅屋の妻トクの実家跡などを訪ねた。

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