知っておきたいF1専門用語:マシン各部名称編(2)

 F1関連の様々な用語を解説する新コーナー。オフシーズンの間にマシンメカニズム、エンジン、サーキットなどなど様々な項目を解説していきます。

・アッパーアーム
F1マシンのサスペンションはΛ形をしたアームを上下に2本配したダブルウィッシュボーン式を採用する。その上側のアームがアッパーアーム。ウィッシュボーンは鳥のwishbone(叉骨)に形が似ていることからの命名。アッパーウィッシュボーンとも呼ぶ。

・ロワアーム
上下に2本配されたサスペンションアームの下側のアーム。

・オンボードカメラ
車両に搭載されたテレビ放映用のカメラ。ノーズ脇やインダクションポッド(ヘルメットの後方上部にある、エンジン吸気などを取り込む開口部)の脇に、カメラを搭載するハウジングを設置することが義務づけられている。空力的に利用できないように規定されているが、それでもなんとか空力的に利用しようとするのがF1チームというものだ。

・ターニングベイン
直訳すれば、曲がった羽根。バージボードを指して使う場合もあるし、ノーズから吊り下がったアイテムを指す場合もある。どちらも、空気の流れを制御し、ダウンフォース発生に結びつけるのが目的。

2019年メルセデスW10

・バージボード
形状が同名の建築装飾に似ていることからの命名で、フロントタイヤとサイドポンツーンの間に設置。ディフレクターやターニングベインとも呼ばれる。フロントセクションで制御した空気の流れを受け、さらにバージボードで流れを制御、あるいは強化し、ダウンフォース発生に結びつける。

・ポッドウイング
サイドポンツーンの脇に設置された空力デバイス。フロントタイヤで発生した乱れた空気がリヤに向かわないようにすると同時に、サイドポンツーン側面に沿ってクリーンな空気が流れるようにする役割を担う。

・カーナンバー
2013年までは前年のドライバーズチャンピオンがカーナンバー「1」を付け、チームメイトが「2」を付ける決まりだった。それ以外のチームは、前年のコンストラクターズチャンピオンシップの順位に従って、上位から若い番号が振り分けられた。14年に固定カーナンバー制度が導入され、ドライバーが任意に好みの数字を選択できるようになった。カーナンバーはドライバー固有のものとなり、チームを移籍しても変わらない。希望ナンバーが重複した場合は、ランキング上位のドライバーを優先。前年度チャンピオンにはカーナンバー1を付ける権利が与えられるが、固定ナンバーを選択してもよく、14年から5度のチャンピオンを獲得しているルイス・ハミルトンは「44」を選択している。

・ノーズコーン
車両の「鼻」にあたる部分。フロントウイングの荷重を受け止めると同時に、クラッシャブルストラクチャー(衝撃吸収構造)を兼ねている。

・翼端板
英語をそのまま読んでエンドプレートとも言う。ウイングの両端に取り付けられた板。圧力の高いウイング上側の空気が、圧力の低いウイング下側に流れ込まな座いようにするのが講狙い(流れ込むと効率が落ちる)。

・サバイバルセル(モノコック)
ドライバーの生存空間であり、車体構造物の核でもある。安全性確保に必要な強度や走行性能を担保するのに必要な剛性を確保するのに、縦横の金属フレームにパネルを貼り合わせた構造ではなく、外皮全体で応力を受け止めるモノコック構造を採用していることから、モノコックとも呼ばれる。カーボン繊維強化プラスチック(CFRP)でアルミハニカムを挟み込んだ構造で、軽くて強いのが特徴。

2019年トロロッソSTR14

・サイドポンツーン
車両の両サイドにあって、フロントタイヤとリヤタイヤの間に位置する部分。ラジエターやインタークーラーなどの熱交換器や電子部品が収まっている。

・ロールフープ
ロールオーバー(転倒)時にドライバーの頭部を保護するための部位。インダクションポッド(ヘルメットの後方上部にある、エンジン吸気などを取り込む開口部)と一体化している。

・フロア
文字どおり、車両の床のこと。アンダーパネルとも呼ばれる。

・DRS
『Drag Reduction System』の略で、ドラッグ削減システムのこと。2011年に導入されたシステムで、ドライバーの操作により、リヤウイングのフラップを開くことが可能。この結果、ドラッグ(空気抵抗)が減って最高速が伸びる。サーキットごとにDRSゾーンが定められており、レースでは3周目以降、計測地点で前を走るドライバーとの差が1秒以内になった際に使用することが可能。また、悪天候の場合やDRSゾーンでイエローフラッグが振られている場合はDRSを使用できない。フリープラクティス/予選時はDRSゾーンで自由に作動させることができる。

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