見えない敵

 目に映らないというよりも「えたいが知れず、こちらを脅かす相手」という意味で使われることが多い。「見えない敵」とは、よく感染症の類いに用いられる▲例えば13年前の今時分、宮崎県で猛威を振るった鳥インフルエンザがそう呼ばれ、10年前には口蹄疫(こうていえき)ウイルスが「見えない敵」と恐れられた。いま広がっている「新型」も同じだろう▲中国で新型コロナウイルスによる肺炎が確認されたのは今年に入ってからで、患者数は40人ほどだった。今は中国本土での感染者は4千人台になり、亡くなった人も100人を超えた。日本国内でも感染者が確認されている▲初めは感染力は強くないといわれたが、症状が出なかったり、軽かったりして感染が見逃されていた人も多いらしい。威力の程がよく分からない、感染の実態がつかみづらい、と「見えない」ことがさまざまある▲中国で海外への団体旅行が停止され、日本へのツアーの予約キャンセルが相次いでいる。長崎港をはじめ中国からクルーズ船が数多く入る本県でも案じる声が上がっている▲感染拡大は防げるか、観光地への打撃はどうか、と「新型」は世をざわつかせる一方で、訪日客でにぎわうはずの所をしんとさせるような“脅威”も与える。影響はいつまで続くのか。見えない敵は先も読ませない。(徹)

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