「共産党の市長はNO」で認知された京都市長選 それでも静けさの中で、終盤を迎え…

2月2日に投開票の「京都市長選挙」。門川大作氏(69)=公明、自民府連、立憲民主党府連、国民民主党府連、社民府連推薦=、村山祥栄氏(41)、福山和人氏(58)=共産、れいわ新選組推薦=、の無所属3候補の争いで終盤戦を迎えています。

各新聞社の前半戦を終えての情勢予想も出されていますが、私が今回、書かせていただくのは、静けさ、について、です。

19日の公示から一週間少しを経た26日の日曜日。大阪から阪急電車に乗った場合、京都に入るのはまず西京区になります。特急なら桂駅、普通なら洛西口駅です。大阪府高槻市の高槻市駅から阪急の特急に乗った私は、駅の売店で買った新聞を見て、仰天しました。そうくるか、と。

全面広告で『大切な京都に共産党の市長は『NO』』と大きな見出し。この「市民とともにある ONE TEAM 未来をつくる会」の広告はインパクト絶大で、やはり政令指定都市の市長選挙。現地での盛り上がりを期待させるに十分。そして日曜日の真昼間に、一日の乗降客が約5万人といわれる、桂駅で下車したのです。

 

西京区へ入ったのには理由があります。今回の選挙の争点に、西京区の交通システムの整備が浮上しています。地方議員の経験を持つ私は、議員当時、京都市交通局にこの焦点となっている交通網の話を聞くなど調査を行いました。

比較検討のため前後で、BRT(バス・ラピッド・トランジット)で有名な岐阜県岐阜市、LRT(ライトレールトランジット)で名前が知られている富山県富山市、モノレールの神奈川県鎌倉市などにもお邪魔しました。

1970年代から1980年代に開発されたニュータウン。特に、京都市が手掛ける初めてのニュータウンだった西京区の洛西ニュータウンは、「地下鉄を引き利便性を図る」という約束で開発され、移住がなされたにもかかわらず、地下鉄は引かれないまま50年近い月日が経過しています。

その際、京都市交通局にお聞きした「財政上のことを考えると、これから100年かかっても、地下鉄の延伸はない」という話がメモに残っています。いわば、行政側の部局責任者がさじを投げている、といってもよかった交通システムが、まさに亡霊が生き返るかのように今回、議論になっている、というのは無視できませんでした。

今回の3候補は、

門川氏が「地下鉄・東西線を延伸し、洛西ニュータウンはもちろん長岡京市まで結びたい」、

村山氏が「実現の現実味を考えるとBRT。一番、経済的で財政負担を掛けずに導入できる。交通システムも昔より格段進歩している」、

福山氏が「JR桂川駅から洛西ニュータウンへのLRTの導入を検討する」と見事に3氏分かれました。

そして、少子高齢化が進む洛西ニュータウンの方々にとって、今後の生活の生命線になる可能性のある課題。盛り上がっているだろう、と目論見をもって西京区で選挙を取材したのです。

しかし、この日、私が聞いた講演会は実質60人程度。私の横が空席だったように、満席とはいかず見事に肩透かし。

新交通システムの話があると分かっていての、この静けさが今回の選挙を物語っているような気がしました。午後3時過ぎに、桂駅の西口で、ひとりの候補が演説し、別の陣営はびらまきをおこなっていましたが、両陣営とも足を止める市民よりも関係者の方が多いかも、という状況でした。

共産党系候補対それ以外、の構図。京都の中では、知事選挙も含めほとんど首長選がこの構図になります。全国でも例がない共産党の確かな地盤があるのが京都府であり、京都市です。

 

今回は門川氏と村山氏も出馬していた2008年以来の3極対決。現職の門川氏陣営はその時に次点の共産党候補と「951票」差での薄氷を踏む勝利だったことで、情勢に関係なく危機感を募らせているのは事実です。その表れのひとつが、「共産党の市長は『NO』」の新聞広告だったのは間違いありません。

そして、確かに、この広告は良くも悪くも話題になっています。しかし、皮肉なことに、この広告が拡散されたツイッターで、一般の方がつぶやいていた「これで、京都で市長選挙が行われているのが世間に認知される」というコメントがいい得て妙と、私には思われました。

昨年の参議院選挙で話題となった「れいわ新選組」の山本太郎氏が街頭演説を行ったり、防衛大臣の河野太郎氏が来たり、と著名な弁士も応援のため京都を訪れていますが、その効果はどうだったのか。結果は2月2日に分かります。
(オフィス・シュンキ)

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