資産5.5億円専業投資家、成功をもたらした「デフレ銘柄」と今後の注目セクターは?

投資歴27年で5.5億円の資産を築き上げたwww9945さん。投資法は、優待・配当株によるインカムゲイン狙いと、成長株によるキャピタルゲイン狙いの二本立て。前回は投資手法についてお話を聞きました。今回は成長が見込めそうな銘柄の探し方と、今後の日本株で注目しているセクターについて聞きました。


売り遅れて年間収支がマイナスに

――www9945さんの過去のパフォーマンスを見ると、2018年は年単位でマイナスになった珍しい1年ですね。原因は何だったのですか。

当時、ポートフォリオの1位にしていたのがエリアリンク(8914)でした。最も多く持っている時で、信用口座を含めて1.5億円分ほどあり、これが下がったんです。

私の投資法は、上がっていく株をピラミッディングしながら増やし、利益を乗せていきます。エリアリンクも買い始めた当初は調子が良く、1,800円くらいから買い始めて、株価上昇に合わせて株数を増やしていました。

ところが、18年の5月にワラント付きの増資を発表します。経営が安定しない会社や赤字で危ない会社などが使うことが多いと言われている、MSワラントです。

それがきっかけで、ピーク時に4,000円まで上がった株価が半年ちょっとで4分の1まで下がります。1,800円で買い、4,000円で利益確定せず、買値のマイナス10%まで付き合ってしまったのが大きな痛手でした。今になってみれば、そこまで持ち続けたら負けるだろうと思うのですが(笑)。

――失敗の要因はどこにあったと考えていますか。

いくつかあります。まずはMSワラントに関する知識が不足していたことです。増資発表後は、月足チャートでローソク足が1年移動平均線を下抜けしたのを確認していたのですが、そこで売らなかったのも売り遅れた要因です。

また、株価が下がり出してからもツイッターではまだ人気がありました。株価が下がっていくほど「大丈夫」「戻るはず」といったツイートが増えていくわけです。その時点ですでに危ないのですが、警戒感を持たなかったことも売り遅れた要因の1つです。

――この失敗を経て、19年は再びプラスになっていくわけですね。

はい。エリアリンクを売却して戻ってきた現金と信用買付の余力を、エリアリンクの次に多く持っていた業務スーパーの神戸物産(3038)にまわしました。損切りして持ち替えたことで神戸物産がポートフォリオ1位になり、タピオカブームで翌年の夏まで上がったため、どうにか立て直しにつなげることができました。

エリアリンクは保有株数が多く、細かく売っていく必要があったため、売り捌くのに時間がかかりました。一度に売ると自分の売り注文で株価を下げてしまうことになるからです。その苦労も経験になっていて、いまはポートフォリオ上位にする銘柄は時価総額1,000億円以上の銘柄にしようと決めています。

狙い目は高齢者関連とデフレ関連

――ポートフォリオに入れる銘柄はどのようにスクリーニングしているのですか。

「株探」を使ってテーマで探すことが多いですね。例えば、高齢化社会、5G、配当利回りなどをキーワードにして探しています。会社四季報も良いのですが、最近、小さい文字が見づらくなってきたので(笑)。

――注目しているセクターを教えていただけますか。

私が良いと思っているのは高齢者関連とデフレ関連です。

私は外国株にも投資していて、ポートフォリオ全体では3割くらいが外国株です。また、最近はベトナム、タイ、インドネシアなど成長性がある国の株も増やしています。その観点からいうと、日本は成長性という点で見劣りしますので、何でもかんでも買えるわけではありません。

この2つのセクターは国内経済が発展していない状態でも上がっていく可能性がありますので、経済発展という意味では悲観的な選び方ですが、買っていかなければならないと思っています。

なかでも、東京や大阪の都市部の土地を持っている会社が良いですね。海外は都市部の土地がバブル化していて、香港の人たちは年収の20倍、30倍という価格のマンションを買っています。そういった現状と比べると日本の都市部の土地はまだ割安感があります。

――逆に買いたくない業種はありますか。

私は街歩きからヒントを得ることが多いので、その点からいうと、業績や事業内容などが一般人から見えづらい銘柄はあまり買いたくないですね。また、自動車や工作機械など、景気に左右される銘柄もなるべく避けたいと思っています。

――先ほど挙げていただいた注目セクターの中では具体的にどのような銘柄を買っているのでしょうか。

デフレ関連だと、前述した神戸物産(3038)がまさにそれに該当します。2019年からはスシローグローバルホールディングス(3563)も持っているので、回転寿司もデフレ関連といえますよね。スシローを買う前は高値抜け狙いでコムシスホールディングス(1721)を買っていたのですが、予想と違って全然動かないんです。信用込みで1.5億円分ほど持っていたので、その一部を売ってスシローに替えました。結局、コムシスが動かず、スシローが7,500円くらいから1万円近くまで上がりましたので、ポートフォリオ上ではスシローの方が上位になりました。

――回転寿司は大手5社がシェアの大半を占めている市場です。その中でスシローを選んだのはどうしてですか?

業績面ではスシローの売上が競合よりも伸びていたことが挙げられますが、もっと身近な理由として、私の父親がスシローにしか行かないと決めていたことが大きな理由でした。他の回転寿司店にも行くのですが、ここは安いけどおいしくないとか、あそこはタッチパネルの反応がイマイチとか、そういった目線で見た結果、スシローに通っているわけです。

飲食店などは消費者の評価が大事ですよね。投資家は株価の割安度や事業の成長性などを見ますが、そもそも消費者に選ばれなければ儲かりませんし株価も上がりません。投資家のフィルターは歪んでいることも多いと思うので、一般消費者の感覚を大事にしたいですし、父親の声はまさに消費者の声だと思ったのです。

――www9945さんは街歩きによる情報収集を大事にしています。それも消費者の評価を見るためなのですね。

はい。飲食店に限りませんが、街を歩いているといろんな変化に気づきます。流行っている店を見つけることもありますし、先月まで行列ができていた店が空いているといった変化に気づくこともあります。店舗数を増やしている店があれば、その店が上場していなかったとしても、その店で使っている設備などを扱う会社の株が狙えるかもしれません。そういう視点で街歩きしていると、投資先のネタなどを結構拾えるものなのです。

新高値更新の手前で買い増し

――高齢者関連ではどんな銘柄を買っているのですか。

日本ケアサプライ(2393)や日本エム・ディ・エム(7600)などです。日本ケアサプライは老人ホームやデイサービスなどに向けて福祉用具をレンタルしている会社で、営業利益率10%前半くらいで安定しています。介護や福祉のマーケットが伸びている中でじわじわと業績も上がっていますし、私が買った価格だと配当利回りが3.5%くらいあったことも買おうと思った理由でした。

日本エム・ディ・エムは人工関節の会社です。かつては海外製の人工関節などを売る商社的な事業だったのですが、今はアメリカに合弁会社を作って自社製造するようになり、自社製が売り上げの大半を占めるようになっています。

米国で人工関節を扱う会社と比べると日本エム・ディ・エムはPERが低く、その差を見て買えると思ったのです。

――良さそうだと思った銘柄はすぐに買うのですか。

はい。スピードが大事だと思っているので、買いたい銘柄は1、2日で買います。ただ、最終的にいくら買うかは決めていません。上がっていく株をピラミッディングで増やすので、PERが高くなりすぎない限りは買い増ししますし、コムシスの例からもわかる通り、上がると思った株が上がらないこともあるため、最初に予算を決めることはできないのです。

コムシスは良いと思ったんですけどね。気合と株価はなかなか連動してくれません(笑)。

――ピラミッディングのタイミングは決めているのですか。

銘柄にもよりますが、新高値を更新しそうな時にピラミッディングすることが多いですね。新高値投資法は有名ですが、私の場合は、上がっていく勢いや出来高を見ながら新高値の手前で買う「新高値抜けるかな投資法」です。大型株は高値付近で売りが出ますが、小型株はスルッと抜けることがあります。抜けられなかった時はダブルトップになって下落してしまうので最悪なのですが(笑)

※次回記事はwww9945さんの配当銘柄と外国株投資に迫ります。

本記事は取り上げた企業への投資を推奨するものではありません。投資に関する最終決定はご自身の判断でなさるようお願いいたします。

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