1年で50%上昇、日本の投資家は「ナスダック」にどう向き合うべきか

短期的な下落を伴いながら高値を更新し続けた、2019年の米国株式市場。2020年に入っても勢いは衰えず、NYダウ平均は3万ドル、ナスダック総合指数は1万ポイントをうかがう流れとなっています。

中でも、ハイテク銘柄で構成されるナスダック総合指数は、米国を代表する株価指数であるNYダウやS&P500と比べても強さが際立っており、2019年1月につけた直近安値に比べて約50%の上昇となっています。

停滞感の漂う日本株に比べて、米国株、特にナスダックはなぜここまで力強い値動きとなっているのでしょうか。日本の投資家が考えておくべき、ナスダックとの向き合い方を検討してみます。


なぜナスダックは好調なのか

とりわけナスダックが好調なパフォーマンスとなっている背景としては、ハイテク銘柄の力強さが挙げられます。

まず、歴史的な低金利の影響で、PER(株価収益率)が高く、指標面では割高とされる銘柄にも、積極的に資金が集まっています。また、マクロ要因としては、米中貿易戦争において中国のハイテク産業政策を敵視する米国は、ハイテク製品も関税の対象としていましたが、これに一定の合意が得られたことによる追い風も挙げられます。

中でも、5G(第5世代移動通信システム)などの最新技術による需要増の期待から、半導体関連の企業の株価で構成されるSOX指数(フィラデルフィア半導体株指数)は、この1年間で約60%の上昇をみせています。

結果、1月16日に、グーグルの親会社であるアルファベットが米国市場で4社目となる時価総額1兆ドル(約110兆円)に達したのをはじめ、ハイテク銘柄が米国市場の時価総額上位を席巻。時価総額トップ5銘柄の米国市場全体に占める割合は約14%に達しています。

マザーズとナスダックはどこが違う?

指数ごとに上昇率に差が出ている要因としては、指数の算出方法の違いが挙げられます。算出方法は、大きく分けて「株価平均型」と「時価総額加重型」が存在します。米国市場ではNYダウが株価平均型であるのに対し、ナスダックは時価総額加重型です。一例ではありますが、指数への影響度の高い銘柄の動きを見てみましょう。

株価平均型では株価の大きさによって影響度が大きくなるため、NYダウでは影響度上位3銘柄はボーイング、アップル、ユナイテッドヘルスです。ボーイングに関しては航空機の出荷停止などの影響で2019年から現在にかけて約30%の下落をするなど、足かせとなっています。

一方、時価総額加重平均の場合は、時価総額が大きい銘柄の影響度が大きくなります。そのため、ナスダックの場合はアップル、マイクロソフト、アルファベットの影響度が大きく、この1年間で3銘柄平均で50%以上の上昇をみせるなど、指数を牽引しています。

米国市場とは対照的に、日本市場は過去最高とはほど遠い位置で推移しています。日本の新興市場であるマザーズ指数も時価総額加重平均で算出されていますが、時価総額上位の代表格であったサンバイオ、MTGの株価が暴落するなど、指数の足を引っ張っています。

またアメリカ市場とは異なり、市場の立ち位置として、マザーズ市場が東証1部への上場のステップとして使われてしまっていることも、足かせになっていると考えられます。これらの影響もあり、足元ではITバブル時の高値の3分の1程度の水準にとどまっています。

<写真:ロイター/アフロ>

ドルコスト平均法の是非

日本株と比べて力強い印象の米国株市場ですが、投資対象としてはどのように向き合っていけば良いでしょうか。分散の観点からは、ポートフォリオの中に組み込む価値は十分にあると考えられます。

米国株投資の導入としては、ETF(上場投資信託)などの投資信託を積み立てるのが無難かと思います。一方で、純粋な毎月積み立て投資には落とし穴があるかもしれません。

積み立ての方法で一般的なものとして「ドルコスト平均法」があります。これは、毎月一定の金額を購入することで高い時は少なくしか買えないものの、安くなったらたくさん買えるという仕組みで、時間分散の効果も発揮できる手法です。

しかし、これらの弱点として、相場が上げ局面の場合は不利になってしまう点があります。米国株の場合、基本的に上昇トレンドを維持し続けているため、ドルコスト平均法を利用した場合、平均取得価格が上がり続けてしまい、メリットを享受しにくい展開も考えられます。

あくまで結果論でありますが、ボーナスでの積み立てを利用して、ある期間では多めに積み立てる、あるいは順張り時に効果を発揮する当口数投資を組み合わせるなどして、柔軟に積み立てることで、より効率的に資産を増やすことができるのではないでしょうか。

米国株の好調はどこまで続く?

過去最高の水準を保ち続ける米国株式市場は、今年も成長を続けるのでしょうか。足元のNYダウのPERは18倍である一方、2020年の1株当たり利益の成長率は5%ほどと見込まれているため、割高な状態を維持できるかが焦点になります。

有力企業に目を向けると、米国市場で最大の時価総額を誇るアップルの目標株価を現在よりも20%ほど高く設定するアナリストもいるなど、まだまだ成長期待は続きます。日本株でも、TDKや村田製作所といった「アップル関連」と呼ばれる関連企業が多数存在します。この1年間での株価も堅調なものが多く、引き続き期待が持てます。

一方で、競争が激化しているセクターも出てきています。クラウド市場では、約40%と圧倒的シェアを誇るAWSを展開するアマゾンに対し、追いかけるマイクロソフトが100億ドル規模のクラウドサービスの契約を米国防省と結ぶなど、対抗しています。

ほかにも、動画配信ではネットフリックスと動画配信を開始したディズニー、ECではアマゾンとウォルマートなど対立構造が明確になっており、シェアの取り合いにより業績が減速していく可能性があります。

世界的な金融緩和により世界経済の後退懸念に一定の落ち着きが見られたところで、中国の新型肺炎の流行と景気減速への火種がなおくすぶっているマーケット。過度な楽観視は禁物かもしれません。

<文:Finatextホールディングス アナリスト 菅原良介>

© 株式会社マネーフォワード