森川葵さんが明かす、女優としての変化、デビューからの10年、多彩な趣味/映画『嘘八百 京町ロワイヤル』インタビュー

「ずっと自信がなくて『自分なんて』と思っていたときに、ある方から『葵ちゃんのことを良いと思ってくれている人に対して、本人が“自分なんて”って言うのは、失礼だよ』って言われたことがあったんです。その言葉がすごく胸に刺さって、そこからは『自分なんて』って思うよりも、もう少しだけ自分に自分で期待しながら、前向きにやってみようと思い始めました」。

そう明かすのは、女優の森川葵さん。目利き古美術商と腕利き陶芸家のコンビの活躍を描いた映画『嘘八百』の続編『嘘八百 京町ロワイヤル』(1月31日に公開)では、主人公の一人である小池則夫(中井貴一さん)の娘・大原いまりを演じている森川さんに、前作から本作に至るまでの日々で実感した女優としての成長や、デビュー10周年を迎えること、そしてフィルムカメラ収集などの多彩な趣味について、お話を聞くことができました。

「貴一さんが作ってくださる空気のおかげ」

――よろしくお願いします。お正月映画として帰ってきた『嘘八百』ですが、前回いまりを演じてから本作で再び演じるまで、どれくらいの月日が経っていたのでしょう?

森川さん:1年くらいは空いていたと思います。1年って、短いような気もしますけど、意外と長いんですよね。撮影のときは「久々に『嘘八百』やるなあ」って感じがしました(笑)。

――再び演じるにあたって、以前と同じテンションですんなり役に取り組めましたか?

森川さん:現場で貴一さんにお会いした時に、貴一さんがいまりのお父さん・則夫のテンションになってらっしゃったので「あ~!この感じ」って思い出しましたね。

――改めて親子役での共演となりましたが、中井貴一さんとのお芝居はいかがでした?

森川さん:前回もそうだったんですけど、今回も親子っていう距離感・空気というものを、貴一さんが「どんどん来い」みたいな感じで、作ってくださるんです。すぐに前にやっていた時のような親子の感覚みたいなものを取り戻すことができました。やっぱり大先輩なので、一度共演させていただていても、恐縮してしまうんですけど(笑)、貴一さんが作ってくださる空気のおかげで、またこの親子の関係性に戻ってきたなあって感じがします。

――物語のもう一つの主役とも言える、京都という街に感じる魅力はなんでしょう?

森川さん:美味しいお店が多い(笑)。食べ物が美味しいし、日本の和の文化っていうものを、街のいたるところに残していますよね。やっぱり、街ってどんどん新しくなっていってしまうものですよね。でも、ずっと日本の古き良きところを残しながら、どんどん新しくなっていっている。京都にしか出せない味というものがあるなあって、すごく思います。

デビュー当時のPVを見て実感「ちゃんと 成長してる」

――前作では、なかなかオーディションで役を勝ち取れずに悩んでいたときに、中井さんから励まされたんですよね?今回は何かお話しできましたか?

森川さん:今回は、撮影期間がさらに短くて、私も前回の方が一緒に撮影できる時間が多かったんです。でも、お昼ごはんに、毎回近くの中華屋さんにみんなを連れて行ってくださって。そこでご飯を御馳走してくださいました。

――前作の撮影時と比較して、女優としてどんな成長を実感していますか?

森川さん:以前はとにかく「自分がやれることをどんどんやっていく」っていう気持ちだったんですけど、今はそれよりも、一個一個、その作品を経験するごとに、1ランクずつ上がっていけるような…自分の中で「質」をもっと大事にしていこうと、気持ちが変わりました。

――そういった意識を持ちながら現場に立つことで、ポジティブな変化が生まれていますか?

森川さん:けっこう人と喋るようになったかもしれないですね。以前はコミュニケーションの取り方が、いまいちよくわからなくて。現場にインして、割とすぐに「さようなら」となってしまうので。でも最近はそうじゃなくて「せっかく出会えた人たちなんだから、ちょっとでも喋れる機会があったら、どんどん喋っていこう」と。もともとはお喋りなんですけど(笑)、すぐに「さようなら」となると、寂しくなっちゃうというのもあって、なるべく近寄らないようにしていたのを、もともとのお喋りっていうのを解放して、最近はすごくコミュニケーションを取るようになりました。

――今年の8月で、デビュー10年目を迎えますね。ファッション誌「Seventeen」のモデルとしてデビューして、やがて女優の道へ進まれました。これまでのキャリアを振り返ると、どんな思いがありますか?

森川さん:昨日、デビューしてすぐの、まだ多分ドラマとかも何もやっていない時に撮ったPVをたまたま見たんです。今とは顔つきも全然違うし、映り方みたいなものも違うんですよね。「あ、私けっこう成長したんだなあ」って思いました(笑)。

見てみると、その頃の良さみたいなものもあったんですけど、たぶんまだ「Seventeen」のモデルとして出ていた頃のものなんですよね。今はどちらかと言うと、女優っていう肩書で色々なことをさせていただくことが多いので「あ、変わったな」って(笑)。自分で言うのもあれなんですけど(笑)。 でも、そのPVを見て「ああ…なんか、ちゃんと成長してる」って感じました。

趣味が多彩で職人気質「細かい作業が好き」

――以前、編み物がお好きだというお話を伺ったのですが、森川さんが最近始めた趣味や、ハマっていることはありますか?

森川さん:編み物はずっと大好きで、ずっとやっています。あとはそれこそ、この作品をきっかけに陶芸を始めました。劇中に登場する「古田織部の茶器」などを作ってくださっている、檀上尚亮先生に教わりに行きました。次はガラス細工で、花瓶とか作りたいなって思っています。制作することがすごく好きなんです。最近は、ビーズを使ってピアスを作ってみたり。細かい作業が好きだっていうことに、最近気づいたんです。なので、次は体験で言うと、ガラス系かなと思っています。

――陶芸もビーズも「無心になって」作るものなのかなと思います。そういった感覚が心地よいんでしょうか?

森川さん:気持ちいいですね。集中していると、昼の13時頃に始めて、気づいたら19時になっているとか。「あ、夜ご飯食べなきゃ!」みたいな時間になっているんです。その「あれ?時間が飛んでる」っていう感覚が、すごく好きなんです。撮影現場でも、感じることがあるんですけど、そういう感覚を覚えたいっていう感じですね。

――では、物語にちなんだ質問を。森川さんが収集しているものはありますか?

森川さん:ずーっと集めているのは、フィルムカメラです。最近も、新しく買っちゃって…「そんなに要らないでしょ?」って、よく言われるんですけど(笑)。どちらかと言うと、機械フェチみたいな部分で、フィルムカメラが好きなんです。

――フィルムですか、渋いですね。実際に撮られたりしますか?

森川さん:撮ります。多分、不器用なもの・綺麗過ぎないものの方が、好きなんですよ。フィルムって、すごく手間がかかるじゃないですか。手間がかかるっていうことが、すごく好きで。もちろん、デジタルもデジタルで、すごくいいと思うし、私もInstagramとかを更新するときは、すぐにアップできるように、iPhoneのカメラで撮ったりもしますけど、自分の趣味として挙げるときには、手間がかかるものが好きなんです。

フィルムは、撮り終わったら、フィルムを抜いて、入れ替えしなきゃいけないとか、現像もありますよね。現像は、流石にまだ手を出していないですけど(笑)、いずれはやりたいと思っているんです。1枚の写真を見るまでに手間がかかるっていうのが好きで、集めちゃいますね。

――手間をかけて何かを作ることが、森川さんにはとっても大事なんですね。最後にお聞きします。さきほど「変わった」と実感したというお話がありましたが、これからは女優としてどう歩んでいきたいですか?

森川さん:もっと人に知ってもらって、自分のお芝居を見た方の感情が沸きあがるような、そんな芝居のできるような女優になりたいなと、最近すごく思います。

――きっとなれると思います!

森川さん:精進します(笑)。

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