荒木飛呂彦氏選 挿絵画家・椛島勝一の34点 長崎県美術館で作品展 「荒木飛呂彦原画展 JOJO 冒険の波紋」記念

「椛島勝一展」の作品を鑑賞する来場者=長崎市、県美術館

 長崎市出島町の長崎県美術館で開催中の「荒木飛呂彦原画展 JOJO 冒険の波紋」を記念し、大正から昭和中期にかけ少年誌などで活躍した諫早市出身の挿絵画家、椛島勝一(1888~1965年)の作品展が同館で開かれている。椛島の孫が漫画家、荒木飛呂彦氏の初代担当編集者だった縁があり、椛島を高く評価する荒木氏が展示作34点を選んだ。「JOJO」展を契機に、郷土が生んだ作家の画業が改めて注目される。無料、3月29日まで。
 椛島は、幕末の長崎・出島で祖父の弟が入手した米国の新聞の挿絵(ペン画)に感銘を受け、画家を志望。20代後半で挿絵画家となり、23(大正12)年から「日刊アサヒグラフ」などで連載された吹き出し四こま漫画の元祖「正チャンの冒険」の作画を担当した。その後、講談社の「少年倶楽部」などで活躍。写実的な軍艦や帆船の描写で「船の椛島」の異名を取った。
 展示作は「少年倶楽部」に30(昭和5)年から連載された「敵中横断三百里」の小説挿絵など。帆船や軍艦を描いた作品は、帆柱に張り巡らされたロープや波の陰影など、細部に至るリアルさが印象的。50(昭和25)年から刊行された単行本「絵ものがたり 正チャンのぼうけん」の原画なども。
 孫の良介氏が2012年度、勝一の作品や資料を同館に寄贈。同館は17年に回顧展を開いた。19年度には講談社が所蔵していた原画約660点を一括して同館に寄託。「JOJO」展は、良介氏が「週刊少年ジャンプ」(集英社)の編集者として荒木氏を担当していた縁から実現した。
 荒木氏は若い頃、椛島のペン画を作画の参考にしていたといい、同展に「特に好きなのは海と帆船が描かれている絵」などとしたメッセージを寄せている。
 同館の森園敦学芸員は、椛島勝一について「挿絵画家として名を成し、特にペン画は日本における先駆者といえる。徹底した研究で正確さを追求し『写真よりもリアル』といわれた作品を見てほしい」と話す。

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