『部活オフ』1ヵ月間、放課後の活動一切なし... 生徒からは「歓迎」と「戸惑い」 教師は負担軽減に 長野・飯田市教委が中学校で試行

 勝つことに過度にこだわる「ブラック部活」という言葉も生まれる中、長野県の飯田市教育委員会が新たな試みを始めました。1ヵ月間、放課後の部活を一切しない「オフ期間」の導入です。効果や影響を取材しました。

下校する中学生 (緑ヶ丘中学校 長野・飯田市)

「長時間の部活」は生徒、教師、保護者の負担に…

飯田市の緑ヶ丘中学校。

教師:

「早く帰れますので時間を有効に使ってください」

 ホームルームが終わると、全校生徒664人はすぐに下校。放課後のグラウンドには誰もいません。市教委が今月を「放課後部活動オフ期間」としたためです。「長時間の部活」は生徒、教師、保護者の負担になっていると指摘され、県教委は去年、平日は2時間程度、休日は3時間程度までという指針を作りました。

 飯田市教委の調べでは、中学の部活動は年間平均665時間、授業の850時間より多い1000時間を超えた部もありました。これを受け、市教委は9月には学校ごとの「完全下校時刻」に部活動を終えるよう徹底する方針です。日が短い冬は「部活無しで下校」となるため、影響や効果を探ろうと今月の「部活オフ」を試行しました。

(去年11月)飯田市教委・代田昭久教育長:

「子どもたちが自らの意志で主体的に取り組む時間や活動を増やしていきたい」

「部活オフ」期間に“スポーツスクール”を開催

「部活オフ」期間に飯田市教委が開く「全市型スポーツスクール」

 午後7時過ぎ、放課後、グラウンドでサッカーの練習が始まっていました。「部活オフ」の間、様々なスポーツに触れて欲しいと市教委が開く「スクール」で、どの学校からも参加出来ます。

松本山雅FCアカデミーコーチ:

「パスコースがあるなら、より次に行くところに近い方がいいよね。(ボールを)受ける位置も考えてみて」

 8つの競技があり、サッカーは松本山雅、バレーはVC長野トライデンツ、バスケットは信州ブレイブウォリアーズの関係者も指導します。

生徒:

「山雅のコーチも悪いところを教えてくれて課題が次に生かせてプラスになりました」

 こちらの生徒はサッカー部ですが、テニスのスクールにも参加しています。

サッカー部(1年):

「知らない人とサッカーできるのはすごく楽しい。(テニスも)プラスになるし体験したことがないからすごく楽しい」

■生徒からは賛否 「時間使える」「やり足りない」

 

緑ヶ丘中学校 (長野・飯田市)

 「オフ期間」は、きょう1月31日で終わりますが、生徒たちは急に増えた自由な時間に戸惑いもあるようです。

サッカー部(2年):

「やり足りないというか部活は。(Q.毎日ないのは)そこがつらいですね」

剣道部(2年):

「(自由時間が)短いと宿題やらなきゃと気合が入る。長いと怠けちゃう」

テニス部(2年):

「自分のやりたいことに時間が使えるのでいいなと思いました。体を休めたりとか本を読んだりしています」

 平日、出来ない分は土日のどちらかに活動するところも多いということです。

■「早く帰れる職員も…」教師の“負担軽減”につながる

下校する中学生 (緑ヶ丘中学校 長野・飯田市)

 一方、部活オフは教師の負担軽減につながっています。

緑ヶ丘中学校・徳武秀和教諭(2学年主任):

「早く帰れる職員も増えている。負担軽減という部分はある。教材研究とかいろいろな部分に上手な時間を使える」

 教師から見た生徒たちの様子は?

緑ヶ丘中学校・徳武秀和教諭(2学年主任):

「多少ゆとりある1月になったかな。(時間を)持て余してしまう子も中にはいるかも知れないが、多くの子どもたちは時間をうまく使えているんじゃないか」

 飯田市教委は来月、全生徒に行うアンケートを参考に、9月の「完全下校時刻」遵守の準備をしたいとしています。

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