昨今中学受験をする家庭が増えていますが、「受験貧乏」と言われるように、中学受験では教育費が高額になる傾向があります。そこで、当記事では子供の人数別に中学受験を目指すのに必要な世帯年収概算をご説明します。世帯年収が少ない場合は、学費支援制度を利用する手もありますので、ご参考になさってください。
幼稚園年少から私立高等学校卒業までにかかる学費
文部科学省が2016年に公表した学年別の学習費総額と幼稚園無償化や中学受験進学塾代概算をもとに、学年別にかかる学費概算(年額)を求めた表が下記になります。
【2016年学年別学費年額概算表】
学費内訳 学費概算(注4) 幼稚園年少(注1) 公立幼:0円
私立幼:171,375円
私立幼:17万円
私立幼:130,432円
私立幼:13万円
私立幼:218,378円
私立幼:22万円
私立小:1,842,650円
私立小:184万円
私立小:1,275,934円
私立小:128万円
私立小:1,365,914円
私立小:137万円
私立小:851,068円
+進学塾代(注3):約57万~89万円
私立小:142万~174万円
私立小:944,326円
+進学塾代(注3):約66万~98万円
私立小:160万~192万円
私立小:1,045,670円
+進学塾代(注3):約95万~134万
私立小:200万~239万円
(注1)幼稚園は2019年10月1日から月額上限25,700円まで無料になったため、年額308,400円を差し引いて計算しています。
(注2)小学4~6年生のみ習い事は進学塾のみと考え、学費から学校外活動費平均額(公立小学校217,826円、私立小学校613,022円)を差し引いて計算しています。
(注3)小学4年生で4科目受験を目標に集団進学塾に通うことを想定しています。
(注4)学費概算は千の位を四捨五入し、進学塾代は平均値の千の位を四捨五入し学費に加算しています。
参考
2 調査結果の概要 表2 学年(年齢)別の学習費総額|文部科学省、P5
幼児教育・保育の無償化概要はじまります。|内閣府
平成28年度子供の学習費調査の結果について(平成29年12月22日)|文部科学省、P2
夏期講習の料金はいくらかかる?学年別に相場をまとめました(2018.4.17)|塾シル!
春期講習の料金はどれくらいかかる?学年別の相場について(2019.1.7)|塾シル!
冬期講習の料金はどれくらい?学年別の相場を解説(2018.7.20)|塾シル!
(注2)についてはこちらの記事も参考にしています。
中学受験進学塾に通うためにいくら必要?大手塾4校の費用を比較
中学受験をする子供がいるファミリー層とは?
一般的に年収は年齢が上がるほど、上昇する傾向にあります。そのため、中学受験をするファミリー層の世帯年収を調べるためには、ご両親の世代を知る必要があります。そこで、中学受験をする子供を持つご両親の年齢と、平均世帯年収、世帯の消費支出比率を調べてみました。
親の平均年齢
内閣府が2016年に公表した母親の平均出産年齢から、受験生の母親の年齢を計算してみました。
【2016年出生順位別母の平均年齢】
誕生時(0歳) 小学6年生(12歳) 第1子 30.7歳 42.7歳 第2子 32.6歳 44.6歳 第3子 33.6歳 45.6歳
参考
第1-1-11図 平均初婚年齢と出生順位別母の平均年齢の年次推移|内閣府、P15
上記表より、中学受験をする小学6年生の子供を持つ親御さんは40代だと分かります。また、第2子との年齢差は2歳違いが平均的であることも分かりました。
平均世帯年収
厚生労働省が2016年に公表したファミリー層の平均世帯年収は7,398,000円です。
参考
Ⅱ 各種世帯の所得等の状況 |厚生労働省、P1
消費支出構成比率
総務省が公表した2017年の家計調査報告より、世帯主が40~49歳の2人以上の家庭の消費支出構成比率を一部引用抜粋した表が下記になります。
【消費支出の構成比】
消費項目 実質の消費構成比 食料 24.5% 住居 5.0% 光熱・水道 6.8% 家具・家事用品 3.2% 被服及び履物 4.7% 保健医療 3.2% 交通・通信 15.3% 教育 9.2% 教養娯楽 10.8% その他の消費支出 17.3%
(家計調査報告(家計収支編)平成29年(2017年) 表Ⅱ-1-1 世帯主の年齢階級別家計支出(二人以上の世帯)-2017年-|総務省統計局、P24から一部引用抜粋)
つまり、40代の両親を持つ世帯は、教育費に家計の9.2%分を支出するのが一般的だということが分かりました。教育費の内訳詳細は、下記参考の家計調査 収支項目分類一覧 (平成27年(2015年)1月改定)をご覧ください。
参考
家計調査 収支項目分類一覧 (平成27年(2015年)1月改定)|総務省統計局
第1子が中学受験をする場合はどのくらいの年収が必要?
では第1子が中学受験をする場合は、どのくらいの世帯年収が必要なのでしょうか。計算する上で、いくつか条件を絞ります。
【計算上の仮定条件】
公立小学校の4年生から中学受験進学塾に通う。習い事は進学塾のみ。兄弟姉妹の年齢差は2歳。第1子が通った幼稚園・小学校に第2~3子も通う。両親が40代の家庭における教育費の消費支出は9.2%。入学時に一時的に学費が上がることは計算の考慮に入れない。金額の単位は万円。
ただし、下記数値はあくまでも目安です。実際の家計負担状況は家庭ごとに異なることをご理解ください。
子供が1人の場合
40代の両親と子供1人の3人家族の場合を考えてみましょう。世帯年収概算は次のような計算式で求めます。
【子供が1人の場合の世帯年収概算の求め方】
世帯年収概算=学費概算÷9.2%
9.2%はあくまでも平均的消費支出割合なので、実際とは乖離があるでしょうが、概算値を求めるのには適しています。仮定条件と計算式をもとに、子供が1人の場合世帯年収概算をまとめたのが次の表になります。
【子供が1人の場合の学費概算と世帯年収概算】
第1子の学年 学費概算 世帯年収概算 小学4年生 66万~98万円 717万~1,065万円 小学5年生 79万~111万円 859万~1,207万円 小学6年生 111万~150万円 1,207万~1,630万円 私立中学1年生 157万円 1,707万円 私立中学2年生 116万円 1,261万円 私立中学3年生 125万円 1,359万円 私立高校1年生 128万円 1,391万円 私立高校2年生 98万円 1,065万円 私立高校3年生 86万円 935万円
子供1人を私立中高一貫校に通わせるために必要な世帯年収概算の最低値の平均は1,167万円です。
子供が2人の場合
40代の両親と子供2人の4人家族の場合を考えてみましょう。世帯年収概算は次のような計算式で求めます。
【子供が2人の場合の世帯年収概算の求め方】
(最低値)世帯年収概算=第1子学費概算÷9.2%+第2子学費概算
(最高値)世帯年収概算=(第1子学費概算+第2子学費概算)÷9.2%
子供が1人増えればそれだけ生活費の支出は増えます。そこで、子供1人のときと変わらない支出額を保つ努力をする場合の最低世帯年収概算と、余裕を持って生活を送れる最高世帯年収概算を求めます。
【子供が2人の場合の学費概算と世帯年収概算】
第1子の学年と学費概算 第2子の学年と学費概算 世帯年収概算 小学4年生
66万~98万円
27万円
79万~111万円
29万円
111万~150万円
66万~98万円
157万円
79万~111万円
116万円
111万~150万円
125万円
157万円
128万円
116万円
98万円
125万円
86万円
128万円
子供2人を私立中高一貫校に通わせるために必要な世帯年収概算の最低値の平均は1,260万円です。
子供が3人の場合
40代の両親と子供3人の5人家族の場合を考えてみましょう。世帯年収概算は次のような計算式で求めます。
【子供が3人の場合の世帯年収概算の求め方】
(最低値)世帯年収概算=第1子学費概算÷9.2%+第2子学費概算+第3子学費概算
(最高値)世帯年収概算=(第1子学費概算+第2子学費概算+第3子学費概算)÷9.2%
子供が2人の場合と同様に、世帯年収概算の最低値と最高値を求めてみましょう。
【子供が3人の場合の学費概算と世帯年収概算】
第1子の学年と学費概算 第2子の学年と学費概算 第3子の学年と学費概算 世帯年収概算 小学4年生
66万~98万円
27万円
0万~22万円
79万~111万円
29万円
34万円
111万~150万円
66万~98万円
27万円
157万円
79万~111万円
29万円
116万円
111万~150万円
66万~98万円
125万円
157万円
79万~111万円
128万円
116万円
111万~150万円
98万円
125万円
157万円
86万円
128万円
116万円
子供3人を私立中高一貫校に通わせるために必要な世帯年収概算の最低値の平均は1,329万円です。
世帯年収が少ない場合でも私立中高一貫校に通える支援制度
40代のファミリー層の平均年収が約740万円である中で、中学受験をする家庭は1,000万円を超える収入を得ている必要があることが分かりました。しかし、実際には1,000万円を超えていない家庭であっても私立中高一貫校に子供を通わせるご家庭もあります。
教育・中学受験情報を取り扱うエデュナビのアンケート調査の結果、中学受験を目指すご家庭のうち、世帯年収が1,000万円以下のご家庭は44.2%もいらっしゃることが分かりました。そのため、世帯年収が1,000万円ないと中学受験が無理というわけではないことが分かります。
世帯年収は少ないけれど、周囲の助けを借りずに子供を私立中高一貫校に通わせたい方のために、学費支援制度をご紹介しましょう。
参考
中学受験、世帯年収いくらで私立中高一貫校は可能なの?(2019.9.2)|エデュナビ
学校の特待生や奨学金制度
私立中学校にはそれぞれ特待生制度や奨学金制度が用意されています。支援を受けられる対象や支援額、支援条件、選抜方法は各学校により異なりますので、志望される学校情報をご確認ください。下記参考は、学費支援制度を行う学校の一部をご紹介しています。ご覧いただき志望校選びのご参考になさってください。
参考
学費を安く抑えられる特待生受け入れ校一覧|インターエデュ
中学校独自の奨学金情報【東京】2019年度入試用|パスナビ
私立高等学校の授業料実質無償化制度
国は、世帯年収約910万円未満の家庭の高等学校に通う子供を対象に、高等学校等就学支援金を支給しています。この場合、高等学校の運営が国公私であることは問われていません。
参考
高校生等への修学支援|文部科学省
しかし、国の支給額より学費が高い学校もありますので、それを補うために実施されるのが各自治体の私立高校授業料の実質無償化制度です。国とは異なり、自治体の財源によって助成額が異なりますので、お住まいの地域の自治体にお問い合わせの上ご確認されることをおすすめします。
下記参考では、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県で助成の内容を比較していますので、お住まいの方は参考にしてみてください。
参考
私立高校の授業料実質無償化で受験は変わる?【2019年度版】(2019.6.7)|エデュナビ
2020年4月からの「私立高等学校の授業料の実質無償化」リーフレット(令和元年5月)|文部科学省
まとめ
学費支援制度を使えば、私立中高一貫校に子供を通わせることはできますが「受験貧乏」に陥る可能性は高いのが現状です。学校に通うには学費以外の教育費や生活費、交通費がかかりますので、経済的負担は当記事でご紹介した以上にかかると考えてください。
私立中高一貫校は教育環境や学習カリキュラムがしっかり整っているため、子供を社会で活躍できる人材に育てるのに適していますが、家庭環境が貧困に陥ることは決して子供の幸せにはならないかもしれません。人生の選択を行う前に、しっかりとご家族で相談しましょう。
参考
中学受験にかかるお金はどのくらい?(2017.4.14)|エデュナビ
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どのくらい収入があったら、中学受験を考えられますか?(2019.1.27)|ウィメンズパーク
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子どもを中学受験させる家庭の世帯年収はどのくらい?(2018.4.6)|かしこい塾の使い方
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