地震で失われたシンボル「鳥居」 地元棟梁が再建、1000万自腹で丸太調達

大阪府四條畷市にある木又工務店の社長で棟梁の木又誠次さんは、地元のシンボルとして親しまれていた四條畷神社の鳥居の再建に向けて奔走している。鳥居は一昨年の大阪北部地震で一部が損壊し、その後、倒壊する危険性があるとして撤去された。「地元の人たちが寂しい思いをしているのを放っておけない」と木又さん。以前と同じ約7mの高さの鳥居を復活させようと、自社で銀行から借金し、800万円を投じて木材を調達した。今後は神社や地元の仲間と協力して寄付集めなども行いながら、9月の完成を目指す。

地震前、四條畷神社に向かう参道入り口にあった石造りの「一の鳥居」(写真=左、右は撤去後)。

約130年前に建てられ、長い歴史を刻む四條畷神社は、市民のよりどころとして親しまれている。その象徴とも言える、四條畷駅や駅前の商店街と神社を結ぶ参道の入り口にあった高さ約7mの石でつくられた「一の鳥居」が、2018年6月に発生した大阪北部地震で破損し、最終的には倒壊する恐れがあるとして取り壊された。

その後、地元のシンボルがないことを寂しがり、復活を求める声はあちこちからあがったものの、同神社は資金集めなどの母体となる「氏子組織」を持っておらず、なおかつ近年は参拝客の減少などにより、神社の収入源となる賽銭や祈願料、お守りなどの販売料も減少傾向で、財政の厳しさから鳥居の再建はあきらめざるを得ない状況だった。神社が鳥居再建のために捻出できるのは150万円が限界で、実際にかかる費用には遠く及ばないという。

それでも、なんとか再建したいと同神社では、四條畷市や大阪府など行政に対して支援や補助を訴えかけてみたものの、「政教分離」の観点から難しく、理解は得られなかった。神社庁も「国宝や重要文化財でない限り、特例で支援する仕組みはない」との見解を示す。

地元の人が困っていたら「一肌脱ぐ」のが棟梁

木又工務店社長で棟梁の木又誠次さん

四條畷市で生まれ育ち、いまもそこで棟梁として工務店を営む木又さんにとって、同神社も鳥居も大切なものだ。木又さんは「一の鳥居は四條畷のシンボルで、なくてはならないもの。時間が経過するとともに、再建への道筋が閉ざされてしまうことに焦りを感じた」とし、「昔から、地元の人が困っていたら『何とかしてやろう』と一肌脱ぐのが棟梁の役割。愛する地元のために、自分がやろうと決めた」と話す。

棟梁の木又さんは、自らの技術を生かせる木造で鳥居を再建することを決意。再建費用として銀行から1000万円を借りた。その後、鳥居をつくるための木材として、良材の産地として知られる奈良県吉野地域産の樹齢200年以上のヒノキの丸太5本を約800万円で購入。かつての石鳥居と同じ約7mの高さの木造の鳥居の設計と構造計算も済ませた。「木の鳥居は、石の鳥居よりもしなやかで強度があり、地震に強い」(木又さん)という。6月から本格的に墨付けや刻み加工などの作業を進めていく予定だ。

建築の準備と並行して進めなければならないこともある。寄付集めだ。木材の購入費や施工費などあわせて鳥居再建に計1000万円かかるだろうと見積もって、心意気と勢いで銀行から同額を借りて鳥居再建事業に踏み出したものの、「さすがに、丸ごと自社で寄付するほど、資金力も体力もある会社じゃない」と木又さん。 

今後は、毎年開かれる「畷祭」で、四條畷神社に神輿を奉納している地元の若者たちでつくる「四條畷青年団」の全面的なバックアップも受けながら、鳥居再建のための寄付集めを本格化させる。クラウドファンディングも活用する考えだ。とはいえ木又さんは「もちろん、一度やろうと決めたことだから、寄付が集まらなかったとしても自腹でやる」覚悟だ。

節目の年のシンボル復活
市民みんなで喜び合いたい

四條畷市は今年の7月1日に市制施行50周年を迎える。

「地元の節目の年に、地元の人たちの大切な宝を復活させる大仕事を手がけることに運命的なものを感じる。9月の畷祭でお披露目式を開いて、市民みんなで新しい形でよみがえったシンボルの完成を喜び合いたい。地震災害からの真の復興の証として、地元の仲間たちと神輿を担ぎながら、新しい鳥居の下を盛大にくぐり抜けたい」。

■四條畷神社社務所を窓口として「一の鳥居」再建事業の寄付金を募集中。詳細は同社務所TEL 072-876-0044まで

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