バサースト12時間:GT3初挑戦のスコット・ディクソン。「テストは雨で20周程度だが、夢の機会を楽しみたい」

 北米インディカーで5度のドライバーズチャンピオンに輝いているスコット・ディクソンは、名門チップ・ガナッシ・レーシングのエースとして活躍を続ける多忙なキャリアの合間を縫ってオーストラリアへ渡り、2月2日に決勝が行われるIGTCインターコンチネンタルGTチャレンジ第1戦バサースト12時間耐久レースに初挑戦する。

 ディクソンは、IMSAウェザーテック・スポーツカー・チャンピオンシップ開幕戦デイトナ24時間では、ウェイン・テイラー・レーシングのキャデラックDPi-V.R10号車をドライブし、小林可夢偉とともに自身通算4勝目を達成した。

 24時間レース終了から1週間後に決勝がスタートするバサースト12時間では、Rモータースポーツが投入する76号車アストンマーティン・ヴァンテージGT3で、地元のスタードライバーであるリック・ケリーと、ジェイク・デニスとシートをシェアする。ディクソンは隣国ニュージーランド出身ながらこれが初のマウントパノラマ挑戦だ。

 そんなディクソンも、39歳となるキャリア終盤まで「幼い頃からの夢だった」というバサースト参戦はなかなか実現する機会を得られず。この2020年に満を持しての挑戦となったが、来るべきインディカーのシーズンやデイトナ24時間への参戦、そして妻のエマとの間に誕生する第3子の出産など、多くのタスクを「上手く調整して」のオーストラリア入りとなった。

「今回、参戦機会の調整がなんとかうまくいって非常に満足している。このバサースト参戦実現に向けずっとトライを続けてきたが、ここ近年はメーカーの観点から見て本当に難しくなってきているね」とディクソン。

「今回はホンダとのレースにこだわらなかったことでうまくいったんだ。彼らは最終的にまったく異なる状況だったしね。それにガナッシとは『スポットでの参戦』という話もしていた。一番の焦点はインディカーのシーズンにあるんだからね」

カストロールと関係の深い、地元ケリー・レーシングで戦うリック・ケリーと、R-Motorsport契約のジェイク・デニスがチームメイトを務める
2020年のデイトナ24時間では、ウェイン・テイラー・レーシングのキャデラックDPi-V.R10号車をドライブし、小林可夢偉とともに自身通算4勝目を達成

「とにかく、今は本当にワクワクしているよ。13歳と17歳のときだったか、2回だけ観客としてマウントパノラマに来たことがある」

「僕たちはポルティマオで事前テストを行ったが、その時期はちょうど子どもの出産予定日と重なって、半日しか参加できなかったんだ。しかも雨が降っていて20周程度しか走れなかった。それでも短期間の経験から多くを学び、習得する必要があった」

 それでもディクソンは、あくまでキャリアのメインはインディカーにあり、デイトナやスポーツカーへの参戦、そこでの栄誉は「ボーナスのようなもの」と強調した。

「デイトナは本当に運がよかった。現実的に可能性のあるチームは限られていたしね。バサーストも(IGTC)シーズンの開幕戦だが、あくまでワンオフ(スポット参戦)でシリーズを考えることはないよ。1週間後にはCOTA(サーキット・オブ・ジ・アメリカズ)でインディカーのテストをしているはずだからね」

「おそらく、今回のバサーストも赤ん坊の誕生を考えれば最適のタイミングとは言えない。ここでテストしようとすれば、多くの時間を費やすことになるからね。でも妻は少なくとも、最低限必要なテストに僕を送り出してくれた」

「それにとても不思議なのは、僕はリック(・ケリー)と長い間、バサースト参戦に向け相談を続けていた間柄なんだ。僕は自分の契約が完了するまで、チームメイトがリックであることを知らなかったから、本当にクールだったよ。この絶好の機会を心から楽しみたいね」

インディ5冠、デイトナ24時間4勝のキャリアを持つスコット・ディクソンだが、バサーストはこれが初挑戦
「これ1回限りで、近い将来に再挑戦するかも不明だ。カレンダーも見ていないしね」と語ったディクソン

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