小木博明(おぎやはぎ)×上地雄輔 -「前田建設ファンタジー営業部」気持ちの熱とチームワークで出来た作品

俺にはまずできない

――ロボットではなく、あえて格納庫を積算するというこの作品。ファンタジー営業部は実在していましたが、ご存知でしたか。

小木:知らなかったです。

上地:僕もです。

――私もこの映画をきっかけに知りました。SNSが今ほど活発じゃない時期ですからね。

小木:そうなんですよね。

――これを見て、基地は意外と安くできるんだなと思いました。オリンピックもあって競技場の建設費をニュースで見ていたので、意外と現実的だなと感じました。

上地:確かにそうですね。

――このエッジの効いた作品の話が初めて来た際の最初の印象を伺えますか。

小木:最初の印象は、俺にはまずできないなと。

上地:(笑)。

――小木さんは会社員経験もあるので、その経験を活かせる役なのかなと思っていました。

小木:会社員経験はあるんですけど。マネージャーや事務所には、弁護士の仕事・建設業やドクターといった専門用語の専門職の仕事は無理だとNGを出しているんです。覚えられなくて、現場で迷惑かけてしまうから。

上地:潔いですね。

――確かに難しい用語多いですね。

小木:長台詞も多いでしょそういう役。

――そうですね。

小木:コントでも弁護士の反対尋問みたいなシチュエーションがあるんです。相手をまくしたてるような。全然言えなくて、ああいう時はすごく迷惑をかけてしまうんです。だから、「弁護士とか絶対無理よ」と言っているんです。検事も無理。

――作中、小木さんが演じるアサガワはみんなを引っ張っていく役じゃないですか。

小木:そうなんですけどね。

上地:むしろ、なんだったら出来るんですか。

小木:俺はしゃべらない役。無言で諭すような厳格なお父さんとか。

上地:楽したいだけじゃないですか。

小木:楽と言うんじゃないよ。目で訴えかけるような役だったらいいよと。でも、上から5番目くらいの位置が欲しい。

上地:難しいな。

小木:そういうのを事務所に言ったことがあるんですよ。そこにマネージャーから、「小木さん、来たよ。映画の話が」って。いいじゃん。やっと映画が来たかと話を聞いたら、建設会社だと。

上地:話が違うじゃないかと。

小木:建設会社のどの辺をやるの? と詳しく聞いたら中で事業を立ち上げる役。…ということは、いろんなことを説得しないといけないと。

――実際にそういう外堀を埋めて巻き込んでいく役でした。

小木:マネージャーが先に台本をチェックして、「小木さん無理そうですよ」となって。「1回断りましょう」と俺が台本を見る前に断ったんです。

上地:なるほど、マネージャーが小木さんのキャパがわかっているから(笑)。

――そんなことあります!?

小木:断ったんですけど、英(勉)監督は一緒に仕事をさせてもらったことがあって。監督から、「セリフを減らすからお願いできませんか」と書き直してもらった台本を読んだんですが、やっぱり無理だ。

上地:わざわざ台本まで書き直してもらって、どんなハリウッドスターですか。

小木:日頃、話さない言葉が、長台詞のうえにポンポン入っているんですよ。48年間に話したことない言葉が。これは無理だから減らしてくれたらなんとか行けますよ、という条件のもとで受けたんです。

上地:めちゃくちゃですよね。そこのしわ寄せが来たのが僕です。

――確かに。役柄も現場から異動してきた設定でしたから、作中でも専門用語を話していて。現場を鼓舞して引っ張っていました。

上地:最初に脚本を読んだ時と全然違っていて。「これ、なかったですよね」って。

小木:ベッショ、素晴らしかったです。これからも一緒にやっていきたいです。

上地:素晴らしいじゃないですよ。知らない言葉や数字がズラーっと並んでいて。こっちにしわ寄せが来るんだから。

小木:こういうコンビで会社とかもできたらいいよね。文句言わないで頑張ってくれるから。

上地:びっくりしましたよ。

本読みをした時からワクワクしていました

――まさに作中と同じ関係性だったんですね。

上地:そうですね。演じる前から同じ関係性になってしまいました。作中もアサガワがグルグルと、本当に雪だるまみたいに周りを巻き込んでいくことで大きくなって、前田建設工業が盛り上がったという実話ですからね。

――そうですね。

上地:その周りを動かせるちょっとした宇宙人的でカッ飛んでるのが、小木さんでないとできない役だと思うので。そこは本読みをした時からワクワクしていました。

小木:確かにね。本読みで、「これ俺だな」と思いましたよ。

上地:そこは謙遜するところじゃないんですか(笑)。

――脚本の上田(誠)さんは、ここまでテンションが高い作品のつもりでは書いていないとおっしゃられていました。

小木:そうだったんですね。

――現場を観覧した際にびっくりしたそうですね。それが完成した作品を見て、しっかりとハマっていて素晴らしかったとおっしゃられていました。

小木:名作はそういうもんなんです。

上地:やかましいわ(笑)。

――作られている皆さんの熱量が高いからだと思います。そこは画面からもにじみ出てくるものですから。

上地:ありがとうございます。作品としてもいろんな人が共感できますし、お子さんたちも見やすいと思います。

――そうですね。アニメ・漫画の中で出てくるものをリアルで作ったらどうなるのかは年齢に関わらずワクワクしますから。

小木:そうですね。大人になっても、トンネルの中とか見るのは楽しいですよね。

上地:この作品ではCGじゃなくて本当のところで撮りましたから。

――そこがすごいじゃないですか。

小木:ああいうのを見るとワクワクするんだよね。そういうのを見るとお子さんもこの作品に引き込まれていくんじゃないかなと思うんです。いい場所で撮影されているな、と羨ましいくらいで。

気持ち・熱を受けて答えるというのは忘れてはいけない

――実際の現場はどんな感じだったんですか。

小木:町田(啓太)君も共演して好きになっちゃいましたね。いい子でいい役者さんなんです。高杉(真宙)君も可愛いんですよ。こんな擦れていない役者さんは初めて会いました。

上地:チームワークも良くて、本当に現場に行くのも楽しみでした。みなさんそれぞれに個性もあって、このチームに参加できることが嬉しかったです。

――それだけ熱がこもって楽しんで作られた映画がいよいよ公開になりますね。

小木:そうなんですよ。実際に前田建設工業のみなさんの思いを受けて、スペシャリストたちが無償で助けてくれて出来上がったわけじゃないですか。そういう気持ち・熱を受けて答えるというのは忘れてはいけないと思います。

上地:大事ですね。

小木:町田君のヤマダや六角(精児)さんが演じたフワをはじめ、周りのみんなも仕事じゃないのにロマンにかけてくれたわけじゃないですか。その熱いお気持ちは観に来てくれた方に持ち帰って欲しいですね。そこがお子さんにも伝わって欲しい。何回も観返してほしいです。

上地:そうですね。何回でも楽しめる作品です。いくつになっても、見えないものと戦うことってあるじゃないですか。僕も小さいころマジンガーZやヒーローに憧れて、架空の敵と戦ったことがありました。大人になってからも、将来の不安とか見えないものと戦うことがあると思うんです。その中にいろんな夢やロマンが転がっていて、最初は意味がないと感じるかもしれないけど、後から必要だったとわかることもあって。この作品ではそこが描かれています。情熱を持ってやっていくと、いろんな人たちが集まって1つの形になるんだということを感じていただければ嬉しいです。

上田誠(ヨーロッパ企画)インタビューはこちら

(2/1 午前8時公開となります、それまでは表示がされません)

使命感の方が大きかった「前田建設ファンタジー営業部」

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