これだけ知っていれば、もう戸惑うことなし/F1基礎用語辞典(3)

 F速やF1中継でよく目に&耳にする用語を総括。『あいうえお』順の辞典形式でまとめてみた。

・ダウンフォース
車両を地面に押さえつける力のこと。空気の圧力差を利用して発生させる。F1マシンは前後ウイングとフロアで主にダウンフォースを発生。ウイングは飛行機の翼を裏返したような形状で、ウイングの上側よりも下側の空気の流れを速くすることでダウンフォース(負圧)を発生させる。フロアの場合は、フロアと路面に挟まれた空間の流速を高めることで発生させる仕組み。F1のコーナーでの速さを生み出す決定的な要素。

・ダーティーエア
直訳すれば、汚れた空気。クリーンエアの対義語で、空気の流れが乱れていることを表す。前を走る車両が乱した空気の中を走るので、本来のダウンフォースを発生させることができず、アンダーステアが顔を出すなど挙動が乱れがちになる。

・タービュランス
乱気流。ダーティーエアと同種の表現で、車両の通過によって乱れた空気の流れを指す。この中を走ると空力バランスが崩れるので、ハンドリングに悪影響が出る。

・ターボラグ
ターボチャージャーの応答遅れのこと。ターボはその機構上、ドライバーがアクセルペダルを踏み込んでからドライバーが要求するトルクを発生させるのに一定の時間を要する。アクセルペダルを踏み込んでから、ドライバーがトルクを体感する『間』がターボラグ。F1では MGU-HやMGU-Kを利用してラグの解消に取り組んでいる。

・ダンプ(路面)
湿った路面コンディションのこと。いわゆる『ちょい濡れ』状態。

・チームオーダー
チームがドライバーに与える命令のこと。ドライバーの実力勝負ではなく、チームの意向でドライバーの順位を入れ替えたりする。たとえば、チームメイト同士でポジション争いをしており、選手権ランキング上位のドライバーが後方を走っている際、前を走っているドライバーに対し「ポジションを譲れ」と命令を出すなど。かつては禁止されていたが、2011年から合法になった。

・ティフォシ
フェラーリの熱狂的なファンのこと。『チフス感染者』が語源で、広く伝染し、熱にうなされる様子からの転意。

・テール・トゥ・ノーズ
前を走る車両の後端(テール)に、後ろを走る車両の前端(ノーズ)が接触しそうになるほど接近して走っている状態。

・デリゲート
委員あるいは担当に類する意味で、FIAテクニカルデリゲート(技術担当)やFIAメディカルデリゲート(医療担当)のように使う。

・テレメトリー
エンジン回転数や車輪速、冷却水温や油温など、時々刻々と計測される車両データを無線通信を用いてピットに送信するシステムのこと。

・ドライバビリティ
『運転のしやすさ』のことで、主にパワートレーンの特性について表す。ドライバーが要求したタイミングでトルク感(力)を発生することが重要。ドライバビリティを重視した方が速さに結びつく場合が多く、ピーク性能と同様に重要視されている。日本では『ドラビリ』と略して言ったりする。

・トラクション
駆動力のこと。パワーユニットが発生する力を効率良く路面に伝えることが重要。それがうまくいっている様子を『トラクションがいい』、良くないと『トラクションが悪い』などと表現する。

・ドラッグ
空気抵抗のこと。原語はdrag。ちなみに薬物を表すドラッグはdrug。

・トラフィック
コース上の渋滞のこと。予選アタックを行う際に遅いクルマに邪魔されたり、レースで周回遅れに引っかかったりした際に「トラフィックに引っかかった」などと表現する。

・トワイライトレース
夕方にスタート時刻が設定されたレース。レース開始直後は自然光のもとで行われるが、途中で日没を迎え、以後は人工照明のもとで行われる。アブダビGPが典型例で、日没前に決勝レーススタートとなり、その後ナイトレースへと変わっていく。

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