「助かる命なのに…」小児がんと闘う日本人医師、カンボジア行きを決意させた衝撃の現実

©株式会社沖縄タイムス社

カンボジアのジャパンハートこども医療センターで活動する那覇市出身の嘉数真理子さん(中央)=2019年1月(ジャパンハート提供)

 「助かる病気で亡くなる子を一人でも減らしたい」−。那覇市出身の嘉数真理子さん(41)は、医療環境の不十分なカンボジアで、特定非営利活動法人「ジャパンハート」のこども医療センターの小児科部長として2年以上活動している。嘉数さんは現地の医師育成を進めながら、センターにアジア地域で医療を受けられない子どもたちを集め、「十分な医療を受けられる拠点にしたい」と語る。(社会部・伊集竜太郎)

■ジャパンハートの活動

 嘉数さんは中学2年の時に父親を脳腫瘍で亡くし、「がんを治せる医師になろう」と志した。琉球大学医学部時代の病院実習で脳腫瘍のある5歳の男の子に出会った。1年後に亡くなったが、その子にできる手だてを尽くし、終末期も患者と家族に寄り添っていたのは小児科医だった。

 「こういう先生になりたい」と思い、その道を進んだ。県立中部病院で研修をしていた頃、先輩の医師が勤務しながらジャパンハートの活動に参加していたことで関心を持った。

 その後、日本では8割以上は治る小児がんが、途上国では2割も助からない現実を知り、衝撃を受けた。「自分のスキルでそういう子どもたちを助けたい。これをやらないと自分が死ぬときに後悔する」。一念発起して2017年9月、カンボジアに渡った。

■医師を育てる拠点に

 カンボジアでは小児がん患者数が年間600人と推測されるが、対応できる医療機関もセンターを含め国内5カ所しかないという。

 センターでは、年間約30〜40人の小児がん患者を無料で診察。嘉数さんはこれまで10人以上の子どもを見送ったが、痛みをできるだけ和らげるケアを心掛け、患者と家族に寄り添い、子どもが亡くなった後に家族から「ここで診てもらえて良かった」と感謝されたことが印象に残っている。

 センターには医療従事者が50人以上おり、カンボジア人はおよそ30人。日本人医師は5人で、カンボジア人医師6人を研修医として育成している。

 嘉数さんは、カンボジアがポル・ポト政権下の大虐殺後で医師が極端に不足したのと戦後沖縄の状況が似ていると感じる。全国でも進んでいる沖縄の臨床研修制度を参考に、「カンボジアでも指導医が教えたものを受け継ぐ研修制度を作りたい。将来はこのセンターをアジアの医療従事者の人材育成の拠点にもしたい」と、構想を描く。

カンボジアの医療の現状などについて語る嘉数真理子さん=那覇市・沖縄タイムス社