【MLB】アストロズがサイン盗みで「どんな恩恵を得たのか」 米メディアが徹底検証

サイン盗み問題に揺れるアストロズ【写真:Getty Images】

「ジ・アスレチック」が2016年と17年のアストロズの三振数、三振率などを検証

 米球界を大きく揺るがせているアストロズのサイン盗み問題。米スポーツメディア「ジ・アスレチック」はサイン盗みを行った2017年シーズンの打撃を徹底検証し、前年の16年と比較して三振数が前例にないほど減ったこと、逆に強打率が向上したことを伝えている。

 同メディアは「サイン盗みが与えた影響は? アストロズのデータに驚愕した」とのタイトルで詳報。「三振率が過去100年間に前例のないレベルで減った。ホームでの三振率はさらに劇的だった。過去100年では決してみられなかった」と伝えた。記事ではアストロズの打者は低めに外れる変化球を見送る技術を身につけ、ゾーンに入ってくるボールはどんな球種でも強打したと説明。「我々はあの時(17年)を振り返ってみる。彼らがあんなに強かったのは本物なのか? 彼らはどの程度、サインを盗むこととゴミ箱音によって恩恵を受けていたのか?」とし、徹底的にデータを調べあげている。

 アストロズの打者は16年にチーム1452三振。両リーグで4番目に多く、MLB史上8番目に多い数字だった。ところが、17年は一気に365も減らして計1087三振。両リーグを通じて最少だった。記事は「2016年は野球の歴史上、最も三振の多いチームの中の1つだったが、2017年には最も三振が少ないチームに突如、変わった。2017年シーズン、他の29チーム合計で前年より1500近く三振が増えた。にも関わらずアストロズの三振数は異常に減った。歴代でも類を見ないといっていい」と指摘した。

ボール球の見逃し率、ストライクの強打率も向上した

 さらに、データ分析会社「STATS Perform」に分析を依頼。ライブボール時代(1920年~41年のボールがよく飛んだ時代から現在)でも1年間に365も三振を減らしたチームはなかったという。当時は162試合制ではなかったため、試合平均の三振数を算出。アストロズは16年の1試合平均の三振数が8.96から17年には6.71に減少した。1試合当たりの減少数は2.25。16年から17年のアストロズが過去100シーズンで、1年で1試合平均2個以上三振が減った唯一のチームだという。本拠地と敵地での違いを検証され、合計365三振を減らした17年は本拠地で242減、敵地で123減。データだけでは結論付けできないが、敵地でもライブビデオは見られるし、他の伝達方法もあるとしている。

 また、ボール球の見逃し率、ストライクの強打率も調べあげた。データ測定システム「スタットキャスト」で、16年のアストロズは本拠地でストライクゾーンを外れて低めに投げられた変化球の36%をスイング。しかし、17年は27%に減り、敵地でも16年の27%から17年には25%に減ったという。さらに、本拠地でストライクゾーンの変化球を強打した割合は16年が.438だったが、17年には.508に上昇。速球に対しても同様で、16年はストライクの速球を強打した割合が.503、17年は.577だった。「他球団でこんなに向上したチームはない」と指摘した。

 過去に例を見ないほど激減した三振率、一方で一気に向上した強打率。16年とサイン盗みで“クロ”と認定された17年ではアストロズの打撃に大きな違いがあったことが改めて浮き彫りになった。(Full-Count編集部)

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