ツシマヤマネコの絶滅を防ぐ 野生復帰の研究本格化 動物園生まれが自然界学習

 ツシマヤマネコの絶滅を防ごうと、環境省は動物園などで繁殖させた個体を自然に戻す「野生復帰」の研究を本格化させている。対馬市内にある同省の施設「野生順化ステーション」では昨年10月、福岡市動物園生まれのツシマヤマネコ「もみじ」(雌、12歳)が仲間入り。野生生活で必要な餌の捕り方などを学ぶ。
 同施設は、2014年度に対馬市厳原町の鮎戻し自然公園に完成。6カ所の巨大ケージ(計約2.6ヘクタール)内に対馬の環境を模した川や池、山道などを設けている。人間との距離を保つため施設は非公開。イエネコや野生下で保護したツシマヤマネコでテストしてきた。
 野生のツシマヤマネコは、カエル、ネズミなどのほか、ヘビや鳥類も食べる。動物園生まれのもみじは、野生に近い環境で過ごすのは初めて。もみじは、ツシマアカネズミで狩りに慣れさせた後、1月3日にアオダイショウを餌として入れた。ネズミは10分ほどで追いつめたが、初めて見るヘビにはてこずり、前脚でたたくなど約30分の格闘の末に仕留めた。
 環境省対馬自然保護官事務所厳原事務室は、もみじについては、野生復帰に向けた訓練に対する研究を積み重ねるためのテストケースとして、野生復帰させる予定はないとしている。
 今後、野生のツシマヤマネコが激減した場合について、永野雄大・自然保護官は「研究成果を基に、別の個体で野生復帰を検討することはありうる」と説明。「生息環境が悪ければ、野生復帰させたとしても増加は難しい。地域住民の理解を得て、交通事故や野犬などの脅威がない環境を整えていくことが大事だ」としている。

© 株式会社長崎新聞社