将来は裁判所で働きたいという方もいることでしょう。裁判所において裁判をスムーズに進めるために働いているのが、裁判所事務官です。裁判所事務官とはどのような仕事で、年収や福利厚生など、労働条件はどうなっているのでしょうか。今回は裁判所事務官の年収などについて詳しく紹介します。
裁判所事務官の年収について
裁判所事務官になるためには、採用試験に合格する必要があります。裁判所事務官の採用事件は倍率が高い狭き門です。採用試験は総合職試験が一般職試験よりも難しく、専門知識も多く求められます。裁判所事務官は勤務地が全国にあるため、初任給などは勤務地によっても異なるといいます。ここでは、東京都内で勤務する場合の給与や年収について紹介しましょう。
初任給の目安と年収
裁判所事務官の給与は、国家公務員試験採用者と同等といわれています。2019年4月時点で、東京都で働くことを想定した初任給は以下の通りです。
〈初任給〉
総合職試験(院卒者区分) 253,800円(行政職俸給表(一)2級11号俸)
総合職試験(大卒程度区分) 222,240円(行政職俸給表(一)2級1号俸)
一般職試験(裁判所事務官,大卒程度区分) 216,840円(行政職俸給表(一)1級25号俸)
一般職試験(裁判所事務官,高卒者区分) 178,320円(行政職俸給表(一)1級5号俸)
※金額は,東京都特別区内に勤務する場合の例です。
(引用元:給与,休暇及び福利厚生について教えてください。|裁判所)
初年度の年収は区分によっても異なりますが、裁判所事務官は公務員ですから、年齢とともに年収は徐々に上がっていきます。年収に換算すると約300~400万円からスタートし、勤務年数などによって年収も上がっていくことになるでしょう。
ボーナスや手当について
裁判所事務官のボーナスや手当については、以下となります。
〈諸手当〉
期末・勤勉手当 1年間に俸給月額などの約4.45か月分
通勤手当 6か月定期券の価額等
(1か月あたり最高55,000円)
住居手当 月額最高27,000円
扶養手当 配偶者月額6,500円等
超過勤務手当等
(引用元:給与,休暇及び福利厚生について教えてください。|裁判所)
期末・勤勉手当が4.45ヶ月分など、手当は比較的良い条件であることが分かります。また、住居手当や通勤手当、さらに扶養手当などもついています。
裁判所事務官の福利厚生は?
福利厚生については、共済組合制度が設けられており、職員だけでなく家族の生活の安定と福祉の向上を目的に医療保険や年金制度が用意されています。また、裁判所共済組合や国家公務員共済組合連合会が運営する各種福祉事業を利用することが可能です。
裁判所事務官の仕事内容について
裁判所事務官の仕事は、全国各地にある裁判所や事務局において、裁判に関する事務作業を行うことです。裁判所では「裁判部門」か「司法行政部門」のどちらかに所属することとなり、裁判の手続きに深く関わる業務を担うことになります。
裁判部門では、裁判書記官の指示の下、裁判手続きが円滑に進むように裁判事務を行います。訴状などの書類の作成や送付、弁護士との打ち合わせなど、裁判を進める上で必要な業務を行います。また、それ以外の業務として法廷や和解室の準備、入廷前の事件番号の読み上げなど、裁判の進行や、マスコミ対応なども担当業務に含まれています。裁判員選任手続き、受付・説明会など、裁判員制度に関連する業務もあるため、一般の方と関わる機会もあります。
一方で、司法行政部門に所属する裁判所事務官は、裁判所で総務・人事・経理といった部門で勤務する人のサポート業務を行います。裁判所で勤務する人のための研修の企画なども、担当業務に含まれているといいます。
裁判所事務官の年収をアップさせる方法
裁判所事務官の年収は国家公務員試験採用者とほぼ同等と前述しましたが、キャリアアップの方法として、裁判所書記官を目指すという道があります。裁判所書記官は裁判所事務官の業務を監督・指揮する立場にあり、さらに高い専門知識が求められるため、年収も裁判所事務官よりも高い傾向があります。
キャリアアップできる「裁判所書記官」を目指す
裁判所書記官になるためには、裁判所事務官として一定期間の勤務経験を積む必要があります。そのため、実際には裁判所書記官として働くために裁判所事務官を目指す人も多いといいます。裁判所事務官として数年間の勤務経験を積んだ後、「裁判所職員総合研修所入所試験」に合格し、合格後1~2年間の研修を受けることで裁判所書記官になることができます。
裁判所事務官にとって、裁判所書記官になればキャリアアップしたといえるでしょう。それでは、裁判所書記官と裁判所事務官の違いや、裁判所書記官の年収の目安について紹介します。
裁判所書記官と裁判所事務官の違いについて
裁判所書記官は法律の専門家として法廷に立ち会い、調書を作成します。また、法令や判例を調査したり、訴訟費用の確定や支払督促など、裁判所事務官にはない権限が与えられています。裁判所書記官は裁判所事務官と比べると、より高度で専門的な仕事に携わる職業であり、それだけ責任も重大な仕事です。裁判所書記官は裁判所内の書記官室や法廷での仕事が中心となり、裁判官とともに裁判運営そのものに携わる場面も多いといいます。
裁判所事務官としてキャリアを積みながら裁判所書記官になるための勉強を進めれば、裁判所書記官への道につながります。
裁判所書記官の年収や待遇について
裁判所書記官は裁判所事務官からキャリアアップした職種で、両者を比較すると裁判所書記官の方が月給に調整額が加算され、高待遇となっています。勤務年数や勤務地によって年収額は異なるものの、裁判所事務官よりも待遇は良くなるため、年収アップが期待できるでしょう。
裁判所書記官になるためには、前述した通り裁判所事務官として一定期間勤務した後、裁判所職員総合研修所の入所試験を受けることが条件となり、合格後は裁判所職員総合研修所で約1~2年の研修を受け、書記官としての知識を修得してから裁判所書記官として任用されます。裁判所事務官の総合職試験で採用された場合は、採用初年度に限り入所試験の筆記試験が一部免除されるため、最終的に裁判所書記官になることを目的としている場合は、初年度の入所試験も検討してみましょう。
裁判所事務官として働く中で、裁判の中核部分に携わりたいと思う方や、もっと年収を上げて頑張りたいと考える場合は、裁判所書記官へのキャリアアップを目標にするといいでしょう。
裁判所事務官は裁判所に必要なやりがいのある仕事
裁判所事務官の年収は国家公務員試験採用者と同等で、福利厚生や待遇も比較的安定しています。裁判所での仕事はとてもやりがいのある仕事です。裁判所事務官として働きたい方は、今回の記事を参考に、まずは説明会などに参加してみてはいかがでしょうか。
参考
裁判所|給与,休暇及び福利厚生について教えてください。
「法治国家」を支える「裁判所」で働く「裁判所職員」の仕事内容 | 公務員総研
【裁判所事務官の年収とは?】年代別や学歴別など解説します | JobQ[ジョブキュー]
裁判所事務官と裁判所書記官の違い | 裁判所事務官の仕事・なり方・給料・資格を紹介 | Career Garden
裁判所事務官の給与・年収 | 裁判所事務官の仕事・なり方・給料・資格を紹介 | Career Garden