「お祭りみたい」2日間で4万人集めた鷹キャンプ 集客力の秘密と魅力

ソフトバンク・王貞治会長、城島健司会長付き特別アドバイザー、工藤監督(左から)【写真:福谷佑介】

ソフトバンクのキャンプは初日に2万人、2日目も1万9800人が集まる

 2月1日、プロ野球12球団が宮崎、沖縄で一斉にキャンプインした。待ちに待った球春到来。今年の春季キャンプは初日が土曜日、2日目が日曜日と週末に重なったため、各キャンプ地が多くのファンで賑わったようだ。

 その12球団のキャンプ地でも多くのファンが訪れるのが、巨人がキャンプを行う宮崎県総合運動公園と、そして、3年連続日本一のソフトバンクがキャンプを行う宮崎市の生目の杜運動公園である。ソフトバンクのキャンプは初日に2万人、2日目にも1万9800人が訪れ、2日間で約4万人が来場した。驚異的な集客力だ。

 この集客力には、もちろん3年連続日本一というチームの魅力と立地によるところが大きい。ただ、ファンを楽しませ、そして飽きさせないようにするキャンプ地の工夫も凝らされている。

 宮崎市の生目の杜運動公園。ここでソフトバンクは主力中心のA組、若手中心のB組と全選手が一堂に介してキャンプを行っている。まず、ここに足を運べば、全選手を見ることができるというのはファンにとって1つの魅力だ。

 さらには選手が施設間を移動する際には常にファンが見ることのできる導線を通って移動する。ファンが声をかけ、それに選手が応える。運が良ければ、サインを貰ったり、握手やハイタッチなど、選手と触れ合うことのできる可能性もある。

 そして、ファンの空腹を満たす飲食の出店は約30店舗にもなる。宮崎の名物である地鶏の炭火焼や宮崎牛、肉巻きおにぎり、うどんやラーメンなど、その種類は多岐にわたる。その光景は賑わう縁日のよう。ファンからも「お祭りみたい」との声が聞かれた。

2日間で約4万人が来場したソフトバンクの春季キャンプ地【写真:福谷佑介】

「毎年何か新しいものを取り入れ、少しでもお客様を惹きつけられるものを」

 イベント等を企画する営業戦略部エンターテインメント推進課の稲永大毅課長は、キャンプ地における球団としての取り組みについてこう語る。

「宮崎の人はもちろん、福岡のファン、さらには関東のファンなど、日本全国から広くキャンプに来ていただきたいと思っています。そのためにも毎年何か新しいものを取り入れ、少しでもお客様を惹きつけられるものを作れるように考えています。1人でも多くの人に来ていただこうと取り組んでいます」

 今年のキャンプではメイン球場前の広場に巨大なリフター車が、週末のみであるが、登場。高所からキャンプ地を一望できるようにした。昨季は話題だったVRの体験スペースを設置した。毎年毎年、ファンの心を惹きつけられるものを考えているという。

「飲食店は毎年、宮崎市さんが選考をされて、その選考に通った店舗さんが入られています。もっと公園を広く使っていただけるようにとレイアウトを変更してみたり、何年か前には店舗にミヤザキスギを使った装飾をしたり、と工夫しています」

 ファンを楽しませる飲食の出店にしても、ファンを楽しませるための工夫を凝らしている。また、ファンサービスの観点からも、キャンプ地にはアイデアが込められている。

 ソフトバンクのキャンプ地は選手の移動する姿を、ほぼファンは見ることができる。施設間を移動する際には、その導線沿いにはファンが集まり、選手に声援を送る。ただ選手用の通路は3メートル、4メートルは確保されており、ファンが選手に簡単に触れることはできない。去年から、その通路の幅をより一層広げたという。

選手たちの移動にも安全性の配慮だけでない工夫が施されている【写真:福谷佑介】

ファンが軽はずみに選手に触れられないように安全面にも配慮

 昨春のキャンプで中日の松坂大輔投手がファンとの接触で負傷したことがあったが、そういった危険性はソフトバンクのキャンプ地ではほぼ無い。かといって、ファンが楽しめないかと言えば、そうではない。

「去年から取り組んでいるのは、選手の導線をあえて広く取っているんです。そうすることで選手自らがファンの方に寄っていく形を作り出しています」 

 選手がもみくちゃになるような危険性はない。その上でファンサービスの際には、呼びかけに応えて選手の方から、ファンに近づいてきてくれる。無理矢理に触れ合うのではなく、選手から歩み寄って来てくれる。これはファンにとっても嬉しいことでは無いだろうか。

「選手への協力ももちろんお願いしています。練習に支障が出ない中で、できる限りファンサービスをしてくださいというお願いしています」。あくまでもキャンプはシーズンに向けて練習するために来ているもの。その大前提がある上で、選手に可能な限りファンサービスをするようにお願いしているという。

 週末には、練習前のスタンドへのサインボール投げ入れだったり、場外ステージではオフィシャルダンス&パフォーマンスチーム「ハニーズ」によるショーが行われていたり、とイベントも多数企画されている。こういったイベントも、その日の練習メニューの”メイン”どころと時間をずらしたり、と考えられているという。

 1日で2万人もの人が集まるソフトバンクのキャンプ。そこには、常勝軍団となった強いチームだけでなく、球団側の様々なアイデアや工夫も注ぎ込まれている。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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