ホイットニー・ヒューストンの国歌斉唱、スーパーボウルに神が舞い降りた! 1991年 1月27日 第25回スーパーボウルが行われた日

スーパーボウルの国歌斉唱、シンガーの真の凄さに触れられる瞬間

さすがに半世紀以上も生きていると、数年・数十年に一度くらいは「まるで神が舞い降りて来たかのような」歴史的瞬間に遭遇するものだ。

エンターテインメントやスポーツの世界では、この手のことは大抵、公演や試合の生放送中に起きている。なぜなら、筋書きがないからだ。例えば、1998年のNBAファイナル第6戦でのマイケル・ジョーダンの伝説の「ラストショット」。あるいは、2005年のマスターズ最終日16番ホールのタイガー・ウッズの奇跡的なチップインバーディー。

このような、俗に言う「鳥肌が立つ」出来事の目撃者となったことは、誰でも二度や三度はあるだろう。このような観点も踏まえて、僕が皆さんにオススメしたいのが、スーパーボウルだ。

ご存知の通り、スーパーボウルとは NFL(米国のプロアメリカンフットボールリーグ)の優勝決定戦のことで、米国最大のスポーツイベントである。TV中継は長年にわたり全米で年間最高視聴率を記録しており、番組中に流されるCM枠の価格は世界で最も高価と言われている。だが、僕が注目しているのは、試合そのものではなく、かと言ってハーフタイムショーでもない。

では何かと言うと、国歌斉唱だ。と言うのも、国歌斉唱では、当然のことながら曲は決まっているし、演出にも限度がある。つまり、シンガーの素の実力が露呈してしまう。裏を返すと、シンガーの本当の凄さに触れられる可能性があるということだ。

1991年、神に選ばれたホイットニー・ヒューストンのパフォーマンス

もちろん、スーパーボウルで国歌斉唱の大役が与えられるのはビッグネームに限られるし、そもそも自信がなければオファーを受けたりしないだろう。そんないかにも凄そうなシンガー達の中にあって、特に「伝説の中の伝説」と言われているのが、91年のホイットニー・ヒューストンのパフォーマンスである。

これがどのくらい凄いかと言うと…

2017年のスーパーボウル直前に、CBSスポーツ、ビルボード、ローリングストーン、MSNといったメディアが、歴代の国歌斉唱パフォーマンスのランキングを発表したのだが、示し合わせたかのように、全社ともホイットニーを1位にしていた。USAトゥデイに至っては「ホイットニー以外のランキング」を発表していたほどであった。もちろん、彼女が圧倒的1位だという米国民のコンセンサスがあるという前提だろう。

過去の映像を振り返ると、2004年のビヨンセ、2009年のジェニファー・ハドソン、2016年のレディー・ガガも十分に凄いし感動的なのだが、やっぱりホイットニーのパフォーマンスは圧倒的だ。全盛期に出番が回って来たという「運」もあるかもしれない。それでも、もはや「鳥肌が立つ」のような表現が陳腐に感じてしまうほどだ。

要するに、ホイットニー・ヒューストンも、マイケル・ジョーダンやタイガー・ウッズと同じように、「神に選ばれた」のだ。

※2018年1月9日に掲載された記事をアップデート

カタリベ: 中川肇

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