山田裕貴「自分は自分だって言い聞かせて」 劣等感を抱きながらも、コツコツと前に進み続ける強さ「ホームルーム」インタビュー【後編】

山田裕貴「自分は自分だって言い聞かせて」 劣等感を抱きながらも、コツコツと前に進み続ける強さ「ホームルーム」インタビュー【後編】

放送中のドラマ「ホームルーム」(MBSほか)で主演を務める山田裕貴さん。インタビュー後編では、小林勇貴監督とのエピソードや、最近「心が動いたこと」について話を聞いた。(【前編】はこちら)

■養成所時代に言われた、ずっと心に残っている言葉

不良、暴力、宗教、窃盗…といった題材を扱い、バイオレンスな表現を作風とするイメージが先行する中で、現代を象徴する社会問題や人間模様など、社会が映し出す事実をリアルに描く、小林勇貴監督。2014年から自主制作映画を撮り始め、17年には主演に間宮祥太朗さんを迎え「全員死刑」で商業デビューした山田さんと同い年の映画監督が、本作でメガホンを取った。

「すごく自分と似ている方で、やりやすかったです。例えば『ここ、正座して…』って監督の声に、『僕も正座だって思ってました!』って僕の声が重なって、監督が『OK!』みたいな。『ここ、叫んで…』『叫ぼうと思ってました!』みたいな、シンクロすることが多かったです。言わなくても何かが生まれてました。もちろんセリフは決まってますけど、思ったら言えばいいやって思っちゃうんです。セリフになくても。それこそ心が動いたから言う、っていう感じ。本能のままにというか(笑)」。

俳優という仕事を「僕にとっては、自分の人生より心が動いてるんです」「だから僕、この仕事好きなんだなって」と捉える山田さんは、こう続ける。「うそをつきたくないんですよ。お芝居って、“お芝居”だから。うそじゃないですか。だからこそ、本物から出る言葉でしゃべりたい。言葉が出てきちゃったら言っちゃうし、体が動いちゃったら動いちゃう。“役に入ってる”って、こういう感じのことを言うのかな…って。不思議な感覚でした。撮影期間は、心の浮き沈みがいっぱいありました」。

阿吽(あうん)の呼吸で撮影を積み重ねた山田さんと小林監督。2人の間には、さらにこんなやりとりがあったと言う。

「僕が養成所時代――10年前にお芝居の学校に通っていたんですけど、その頃に言われた『てめえの魂が動かねえで人の魂が動かせるか』っていう言葉が一番心に残っていて。そしたら監督が『お芝居は魂の躍動だから』って言っていたんですよ。それから、飲みながら『こうやってセリフを言おうとか、あーしよう、こうしようって考えなくていいよね』ってしゃべって、全く同じ考えを持っている方だなって思って。それがすごくよかったなって思うんです」。

また、こんなエピソードも。「同い年なんですけど、監督は僕と仲良くしないようにしてたみたいで(笑)。ラブリンと自分が似すぎてて近づいちゃうのが怖いから、仲良くならないようにしてたみたいです。『ラブリンは孤独な人だから、一人で頑張ってほしかった』って最後に言われました。作品愛というところに対しては、気合の人でもあり、愛の深い人だと思います。熱さってなんか、メラメラ燃えてるイメージがありますけど、実際はあったかいものに包まれているというか。監督も、みんなも、穏やかに熱くやってました」。

■「自分は自分だって言い聞かせて」

俳優という仕事に心を動かされ、役として生きる人生と自分の人生を比べて「自分の人生、つまんな」と思ったと語ってくれた山田さんに、あえて「お芝居以外で、最近心が動いたことはありますか?」と尋ねたところ、真っすぐでリアルな思いを言葉にして返してくれた。

「先日、福士蒼汰くんと有村架純ちゃんと3人で集まったんです。映画『ストロボエッジ』で共演した3人で、蒼汰は8年前から知ってて、3作くらい一緒にやってるのかな? 架純ちゃんは6年前とかからで。いろんなことを話して、2人の葛藤とかも聞いて。僕は2人とは違って、売れに売れたわけでもなく、スター街道を進んできたわけでもないから、いっつも『いいなー、いいなー』ってうらやみながら2人を見てたというか。自分は自分だって言い聞かせて。物事には順番があるし、きっと出番があるって期待して、いつかいつかと思ってやってきたけど、それでも劣等感は抱いていたんですよね。2人と比べて、僕はずっと爆発力に悩んで、苦しみながらも、最近やっと目を向けてもらえるような進み方ができてるのかなって思えるようになって」。

福士さん、有村さんとの関係は「特別な関係性」だという。「『ストロボエッジ』という作品が、3人にとってすごく大きな存在になっていると思います。廣木隆一監督というすてきな監督に出会って、そこで考え方が変わって。『懐かしいね』って言いながら、いろんな話をしました。結果、『楽しんで作品を作らなきゃね』っていうところに落ち着いて。あと、もうちょっと頑張れば、今のこの日本のエンタメ業界を盛り上げられるんじゃないかなとか。もちろん2人は既に盛り上げられる存在だけど、僕もそこにしっかり仲間入りできるように頑張んないとな、とか。5年、10年後には、僕らの世代の人たちがすてきな作品を生んでいかないといけないわけだから。そんな6年前、8年前には考えられなかったような話を、『大人になったんだね』なんて言いながらしゃべってたんですよ。それがすごく染みたなー…」。

思わず話に聞き入ってしまっていると、「長くなっちゃった。すみません(笑)」と笑いながら、場の空気を和らげる。タイトな取材時間の中でついさまざまな質問を投げ掛けたいと思ってしまうが、山田さんの熱量と引き出しの多さ、一つ一つの言葉に宿る説得力を前にすると、一つのエピソードをもっと深く聞きたいと思わされる。時間を惜しみながら、最後に今後の展望について伺った。

「怪人百面相になりたいんですよ。どんな役をやっても、その人にしか見えないようになりたいです。“山田裕貴は消えている”って思われるくらい、雰囲気を変えられる人になれたらいいな。そのためには、一つ一つの現場でコツコツと、役に入り込んでいくしかないんだろうなと思います」。

【プロフィール】


山田裕貴(やまだ ゆうき)
1990年9月18日生まれ。愛知県出身。おとめ座。11年、「海賊戦隊ゴーカイジャー」(テレビ朝日系)でデビュー。近年の主な出演作は、映画「あゝ、荒野」「万引き家族」「あの頃、君を追いかけた」「HiGH&LOW」シリーズ、ドラマ「ホリデイラブ」「特捜9」シリーズ(ともにテレビ朝日系)、「健康で文化的な最低限の生活」(フジテレビ系)、連続テレビ小説「なつぞら」(NHK)、舞台「終わりのない」など。映画「嘘八百 京町ロワイヤル」が公開中。さらに映画「燃えよ剣」「ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~」が公開予定。4月24日公開の映画「クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者」ではアニメ作品の声優に初挑戦する。

【番組情報】


ドラマ特区「ホームルーム」
MBS 木曜 深夜0:59~1:29
tvk 木曜 午後11:00~11:30
チバテレ 金曜 深夜0:00~0:30
テレ玉 水曜 深夜0:00~0:30

取材・文/宮下毬菜(TBS・MBS担当)
撮影/尾崎篤志

<参考文献>山田裕貴オフィシャルブログ「Trust yourself.」<https://ameblo.jp/yuki-yamada-we/entry-12012317306.html>(2020年1月29日閲覧)

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