『犬鳴村』 ホラーマスターの称号にふさわしい出来栄え

(C)2020 「犬鳴村」製作委員会

 福岡県の犬鳴峠にある旧犬鳴トンネル(犬鳴隧道)は、心霊スポットとして知られている。近くには「犬鳴村」という日本政府の統治が及ばない集落があって、立ち入った者は生きては戻れない…らしい。そんな都市伝説をモチーフに、『呪怨』シリーズのホラーマスター・清水崇が手掛けたホラー好き必見の作品だ。

 霊感の強い臨床心理士のヒロインが、周囲で変死事件が頻発するに及び、それまで避けていた自身の出自と向き合っていく…。ホラーは、映画と最も親和性の高いジャンルだ。恐怖は、言葉を介さずとも映像と音声だけでダイレクトに喚起できる感情だから。しかも本作の場合には、異界へと通じる境界線が“廃墟”と“トンネル”という二重に映画的なアイテム。これほどうってつけの映画の題材を放っておく手はないだろう。

 清水監督は、そこにさらに“血筋”と“因果応報”という最恐のエッセンスを注入した。逃げようがないものなのだから、まさに最恐である。彼には『輪廻』という因果応報を主題にした傑作が既にあるが、今回はそれを生まれ変わりではなく血筋=家族の物語として再構築している。恐らく右に出る者はいないであろう圧倒的なホラー描写の手際も含め、ホラーマスターの称号にふさわしい出来栄え。ぜひ「心霊スポット」シリーズとして監督自身の手でシリーズ化してほしい。★★★★★(外山真也)

監督:清水崇

出演:三吉彩花、坂東龍汰、高嶋政伸、高島礼子

2月7日(金)から全国公開

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