熱涙! 欅坂46菅井友香 つかこうへい原作「飛龍伝」で魅せた新境地

新境地を魅せた菅井友香

検索では「菅井友香 キス」などと出てきますが、そういった「表層的」な見方は出来ません。

欅坂46キャプテン菅井友香がヒロインを務める演劇「飛龍伝」。「鎌田行進曲」などで知られる脚本家つかこうへい没後10年。改めて、つかこうへい作品を世に出そうという事です。舞台は1960年代安保闘争。ハッキリ言って、背を延ばして見なければならなかったです。

というのは、菅井友香演ずるヒロインの名前は神林美智子。どうしたって60年代安保闘争の象徴的な存在、国会に全学連が突入した際、警官隊と衝突して亡くなった樺美智子さんを想起させるからです。

もちろん、現代劇ですから、多少のユーモアを交えた脚本です。笑いが起こる場面もあります。が、実在した人の死を扱った演劇です。つかこうへいの樺美智子さんへの想いを感じると、真剣に見ざるを得ません。

「飛龍伝」は圧倒的なスピード感が特筆すべき。2時間があっという間でした。ノンスタイル石田明、味方良介が、フィクションではありますが、エリート大学生運動家vs学歴無き警察官という構図です。

そこに四国の資産家の娘である、東京大学に入学した菅井友香(神林美智子)が運動に巻き込まれていきます。その美貌とカリスマ性を見込まれ、学生運動家40万人のトップに押したてられた菅井友香。

学生運動を描く作品では「スパイ」が登場します(「マイ・バック・ページ」(川本三郎作)など)。そして菅井友香は、スパイを演じる事になります。学生運動家の恋人に命じられて。

潜入先の警察官・石田明との恋と、運動家としての義務を果たさなければなりません。その葛藤を時には涙を流しながら演じる菅井友香。新境地を魅せました。(文◎編集部 写真◎神ノ川智早)

© TABLO